少女は_____を知らなかった。
まずは何からしようか、と言ってもすぐに行動を起こせるほど 器用な人間では無いから 私はいつも通り教室に向かう。
そしていつも通りの授業を受けて、昨日と同じ 卵焼きと温野菜と唐揚げと白米が入った弁当を食べて。
部活で忙しい辰巳に飴ちゃん一個の差し入れをして 一人で家に帰る。
そうして帰った私は 玄関の鍵を閉めた瞬間、鞄を廊下に放り上げてこう叫ぶ。
「私は! 何をやっているんだ!!」
そうだ、私は何をしている。これじゃあ何も変わらないじゃないか。
心の中でも叫びながら 家に響き渡る声の叫びも同じように聞いて、ゼェゼェと荒くなった呼吸を整える。
今日も歩くスピード 話の速さ 0.1秒も間違わないし、行動もあまり変えなかった。
会話にも変化は無いし、特別な人に会った訳でも無い。
そうだ、こんなので変わる筈がない。
これでは明日なんて 来れる訳もない。
体に染み付いた癖や反復行動がなかなか治らないみたいに
私は どんな時にいつも同じように過ごせるかを知っているから。無意識のうちにそれを繰り返しているのだ。
「……っはぁ」
ある程度 落ち着いたから廊下の鞄を拾い上げてリビングに向かう。
マグカップ一杯にカモミールのハーブティーを淹れて ソファに寝転がる。
真っ白な天井だけを見つめて 朦朧と思考を巡らせる。
たった一定の1日を過ごしただけで こんなに疲れたっけ?
元々 体力もなかったし、小さい頃は体が弱かったから運動もしなかったし貧弱な体ではあるけど……。
それにしては異様な疲労感だなぁ
そう単純な思考の中で、私は 力が抜けた人形のように意識が朧げになっていく。
あぁ とても眠い。
そして、その人間的に本能に叶わず 私の意識は闇へと落ちていった。