少女の_____が動き出す。
最初は、とても困惑して 怖くて怖くて仕方がなかったけれど 人間というのは慣れてしまえば それなりに平気になる。
そうして、いつの間にか溶けてなくなったように世界の住人を演じる道化となった。
「辰巳、そういえば もうそろそろ大会だろ?」
「あぁ、今回はエースに選ばれたからな! 優勝狙ってやる」
「しょうがないから、応援しに行ってあげるよ」
けれど 世界は、私を部外者とみなして様々な課題を与える。
例えば、今の会話だ。昨日はこんな話は無かった。
日によって変わることもあるし、変わらないこともある。明日は来ていないけれど、確かに違う今日は 違う朝日を見ているのだ。
日にちも、人々も、天気も、何一つとして変わらない世界で、世界は僕に罪を与える。
それは、私にとっても都合が良いから。罪を受け入れるしか道がないのだ。
「ん?蓮。 ロッカーから何か落ちたぞ」
いつの間にか着いていた学校のロッカー から、ひらりと一枚。何かが落ちた。
「……手紙?」
「おぉっ! とうとうお前にもラブレターが来たか!」
「黙れ その口 縫い合わすよ」
差出人の名前もない、炭みたいに真っ黒な便箋。触ると和紙の上品なざらざらした感触がして、
「なんだ? 焼けた匂いがする……」
苦いような 乾いたような 焦げたような?なんとも言い表すことの出来ない難しい匂い、そんな匂いがした。
そして、 それには…。
見なかったフリは もうやめようか。
ただ一言 そう、書いてあった。