表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコは異世界で闊歩する。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/133

第94話 キッカに説明である!

「え?闇ギルド?マジなのそれ?」

「マジもマジ、大マジであるが?」


 そこからの行動は非常に速かったし我輩も抵抗できなかった。 

 我輩の一言を聞いたギルド長キッカに我輩とくたばっていたロッテをむんずと掴み上げると即座にギルド長の部屋へと連行された。

 流石に医務室で寝ているコーリィとリンピオは連れ出すことが無くてよかったが……揺らされたロッテは最早グロッキー状態で、気絶寸前である。

 悪いことをしたと感じたのか、キッカはロッテをソファへ寝かしつかせると、真面目な顔で我輩に視線を移した


「で?聞かせてもらおうじゃない。闇ギルドが現れたって?そいつらは?」

「殺しておいた。襲われたし生かして出すメリットがなかったであるからな。」

「ギルド側としては情報聞き出したいから連れて帰って欲しかったんだけど……?」


 そんなこと言われても後の祭りである。あの時は殺しでもしなければ気が済まなかったであるからな。

 さて、我輩はダンジョンで起こった出来事……我輩たち以外に踏破者がいないことから構造や魔物のことも含め事細かにキッカに説明した。

 無論、我輩が3人を喰らったことは話していない。話せば喰ったのが闇ギルドの物だとしても途端に我輩は警戒されるかはたまた討伐対象とされるやもしれぬからな。


 すべてを聞き終えたキッカは大きなため息とともに机へと突っ伏した。

 まぁ明らかな面倒ことであるからな。一応は同情はするである。


「あなたもしかしてトラブルを呼び寄せる体質なのかしら?姉さんを通して城での出来事も聞いたけど……」

「失敬な。どちらかというと我輩は不幸を招く存在であるぞ。」


 黒猫的な意味で。勿論この世界に我輩以外の猫がいないからそのような俗説は広まってはおらぬがな。

 というか、トラブルを呼び寄せる体質なのは、我輩というより、コーリィがそれに近いと思うのであるが?


「あーもー……これは私一人の手には負えないわね……王様に話しとおしておかなきゃ……」

「む?ライアット王にも話すのであるか?」

「元々はダンジョン踏破ってことだけは報告するつもりなんだけどね。国にもかかわることだし……そこで闇ギルドが現れたってのも重大なことなのよ。報告しとかなきゃ。」


 キッカが大きくため息をつくと、それに呼応するかのように部屋に備え付けられてあったクローゼットが突如ガタガタと揺れ始めた。

 あまりの珍事にギョッとした我輩とキッカは揺れだしたクローゼットに視線を向ける。

 反応から察するにキッカも何が起こっているかわからない様子。しかし、その手にはいつの間にか細身の剣が握られていた。

 ……ん?ポチが全然慌ててない?むしろ尻尾を振ってクローゼットを見つめている?

 そんなポチの反応をキッカは見ることなく足音を立てず静かに歩み寄りクローゼットの取っ手に手をかけ――一気に開いた!!


「ぶべええええええええええええええええええ!!!苦しかったあああああああん!!」

「きゃああああああああああああ!!!」

「ワフン。」

「はぁ?」


 クローゼットから飛び出したそれはキッカに向かって倒れこみ、キッカはそれに反応できずそのまま受け止めることとなり、その勢いのまま床に倒れこんだ。

 ……我輩の見間違いでは無ければ今飛び出してきたのは……


「いや、何やってるであるか?ニーフィ。」

「あっ、ネコくーん久しぶりーん。」


 そう、騎士団屈指の実力者にしてギルド長キッカの姉を務める、奇想天外珍妙奇天烈という言葉が似合う、我輩がこの異世界で一番強烈に感じたニーフィである。

 その彼女は我輩に手を振りながらも押し倒したキッカに頬ずりをしている。

 ポチが過剰に反応しなかったのは、匂いでニーフィがいることが分かっていたからなのであろう。


「ちょっ……離れっ!姉さん!離れて!」

「えー?いいじゃないのーさ!折角の姉妹の再会なんだから!」

「朝来たでしょ朝!!!!」


 マジかこいつ。


 ニーフィ曰く、朝キッカに会って少し話をした後、一旦外に出た振りをして驚かせてやろうと、キッカが部屋から出た後忍び込んだらしい。

 しかし、我輩たちが来て真面目な話をし始めたため出るに出られない状況になってしまった上、クローゼット内の空気も薄れてきて……暴れてたらしい。いきなり動き出したのはそれか。


「本当姉さんは……でも丁度良かったわ。」


 ガシッと力強い音を立て、キッカはニーフィの両肩を掴む。

 その顔に浮かぶ笑みはどこか恐ろしさを感じさせる。


「んぇ?」

「王様に報告。お願いできるかしら?私処理しなきゃいけない業務があるのよ。姉さんならすぐ王様にも話しとおせるでしょ?」

「え゛やだめんどくさい。」

「サボってたことチクるわよ?」

「チィッ!!」


 逃れられぬと判断したのか、ニーフィは大きく舌打ちすると、気だるげに立ち上がり、トボトボと外へと向かった。

 出る際に「また会おうねー」といつもと変わらぬ笑顔を浮かべて手を振っていたのでそこまで落ち込んではなさそうであるな。


「さてと、姉さんの登場には驚いたけど、とりあえず話はこれくらいかしら。コーリィさんもリンピオさんもまだ目が覚めるまで時間がかかるとの報告もあるけど……どうする?」

「無論、一緒にいる。」


 キッカは姉に似た笑顔を浮かべ、「そ」とだけ返した。

 我輩はポチと共にギルド長の部屋から退室した。……もちろんロッテも忘れずに。

 目が覚めるまで時間がかかる。キッカはそう言っていたが――


 コーリィ達の目が覚めるまで、1週間もかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ