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ネコは異世界で闊歩する。  作者:


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第91話 バーサクであるか!?

 シローを降し、急ぎコーリィ達のもとに向かった我輩が目にしたものは――リンピオの剣でフォルの剣を受け止めたコーリィの姿であった。

 正直目を疑ったであるぞ。コーリィの力はそうでもないと思っていたのだが……んん!?コーリィの髪が燃え盛る炎のように蠢いておらぬか?これは、そう。コーリィと最初に出会った時と同じ。


 むっ、何事か呟いたコーリィがフォルの剣を押し返し突き飛ばした。

 いや、一般的女子――ロッテよりかは力はあると思っていたであるが、剣士職の者を突き飛ばすほどの力はないはずであるが。

 ……ん?あの蹲っているのは、リンピオ!?近くに落ちてるのは腕であるかあれ!


 我輩は全力で駆け出し2本の尻尾でリンピオ、ロッテとポチを回収し一旦後ろへと引き下がる。何故かは分からぬが……いや心当たりはあるが、今コーリィは十分に戦えているようである。

 闇ギルド2人はコーリィに任せて我輩はリンピオに対応しよう。


「ネコ!あんた大丈夫なの!?っそれよりもリンピオが!」

「分かっているである!」


 脂汗を掻き腕を失った肩を抑えるリンピオに我輩は即座に癒しの肉球を使用する。

 癒しの肉球の効果が効いたのか苦痛に歪んでいたリンピオの顔が和らいだようで……次第にリンピオは眠るように気絶した。

 さて、リンピオの腕であるが、残念ながら癒しの肉球を以てしてもリンピオの腕を引っ付ける、または新たに腕を生やすことは叶わなかった。精々傷を塞ぎ止血することができたぐらいで、リンピオの腕の断面は新たな皮に覆われた。

 期待していたが、癒しの肉球は元々精神状態異常を治療するためのスキルで傷を回復するのはただの副次効果でしかない。


 ともあれ、リンピオはこれで一旦大丈夫。ロッテは後衛だったためか、傷はないのでポチを治療すし――気になっていたこの状況についてロッテに聞いた。



「なるほど、また難儀なことになったであるな。」

「ね、ねぇネコ。コーリィ大丈夫なの?明らかにいつもと違うのだけど?」


 心配そうにコーリィに目を移すロッテ。

 件のコーリィは2人相手に斬りつけては避け、魔法を撃たれれば最低限の動きで躱しライザに近づきカウンター張りに斬りかかる。

 魔法主体のはずのコーリィが思いっきり近距離戦闘を行っている。しかも手練れであるはずのフォルとライザにも全く引けを取らない。それどころか2人の対応がどんどん遅くなって……いや、コーリィが早くなっているのか。


 そしてもう一つ異常なことがある。

 我輩とコーリィを繋いでいるはずの奴隷テレパシーに反応が全くない。

 声を届けることはできるのであるが、コーリィ側からの声が一切届いてない。代わりにノイズが聞こえるのである。


 これはあれだ。コーリィめ、方法は知らぬであるがバーサクに入りおったな?

 しかしコーリィは我輩たちを襲うことなくフォルとライザを敵と見なしているようであるな。


「ちぃ!ライザ、さっさと当てろよ!」

「出来ればとっくにやってる!くそっ、やり辛い!」

「コロスキル闇ギルドコロス。」


 ……なんかあのバーサクコーリィ、最初の時の獣っぽさが無くどちらかというと狂人的な気がするのであるが?

 あの時は獣の如き鳴き声しか発していなかったはずであるし……おっと、何時までも観戦している場合でもないか。ポチの治療はとっくに終わった。であればやることは一つである。


 我輩はフォルへと瞬時に接近し奴が反応しきる前に尻尾でリンピオの意趣返しにと右腕を斬り飛ばしてやった。

 ……よし、コーリィは我輩を見ても襲っては来ぬようであるな。こっちをチラッと見たかと思うとライザに向かって走り出した。

 

「ぐあっ!?ネ、ネコだぁっ!?てめぇシローはどうしやがった!」

「奴ならもう戦えぬであるぞ。ま、生きてはいるであるがな。」


 今頃痺れびれになっているであろう。いい気味である。


「さて、我輩としては?さっさと終わらせたいのであるからして乱入させてもらったであるぞ。元々2対1なのであるから文句もあるまい。」

「くそがっ、しくじったか!」

「そうであるな。我輩がいなければ本当に成功していたかもしれぬであるなーんじゃ死ぬである。」


 我輩は一切の躊躇なく、フォルの首を跳ね飛ばした。

 跳ね飛ばしてから思ったのだが、こやつさっき首飛ばしても生き返ったであるよな?いやぁまさか二度目なんてことは……なかった。良かった。

 ではコーリィはと……


「ぐ、ぎああああああああああああああああああ!!!」

「あふ、フヒハ、アハハハ!シンデシマエ!」


 燃やしていた。うむ、それ以外に形容できない状況である。

 ライザの腹部に剣を突き立て、そこから炎を流し込んでいるようであるが……えっぐ。我輩のようにすぐに命を絶たせるのではなく、じっくりと痛みを与えながら殺しているようだ。

 いつものコーリィからしたら考えられないえげつないやり方である。

 ……このまま断末魔を流すのは安静に寝ているリンピオに悪いであるな。

 我輩はフォル同様にライザの首も斬り落とした。


「アハハ、ハ?アレ?……」


 ライザの叫び声が聞こえなくなったことに首を傾げたコーリィは我輩を一瞥すると先程までの残虐行為が嘘と思えるほどいつものコーリィの顔でふんわりと微笑み――気絶した。


「コーリィ!?」

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