表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/133

第9話 ワイバーンが現れたのである。

 ワイバーン……ゲームでは幾度となく見たことあるが、やはりリアルで見るとスゴイであるな。こう、迫力があるというか――

 ンなこと言っている場合じゃないであるな!彼奴め真っ直ぐこちらに向かっているである。む?こいつ、少しフラフラ飛んでいるであるが、疲労している……?


 だが、だからと言ってワイバーンが脅威であることは変わりないである。ティナは先ほどまでの笑顔は消え失せ、緊張した面持ちだ。よく見るとティナの尻尾が股の間に垂れているし頭の狼耳もペタンと倒れている。これは犬が怯えている時にする行動だってはずである。いや、無理もないであるか。ティナはまだ10歳。森の魔物よりも明らかな格上なワイバーンを見て怯えない訳ないである。


 仕方ないである。


「ティナ、お前は村に戻るである。」

「え?ネ、ネコは?」

「奴を食い止めるである。」


 見るからに奴は弱っているが、それでも亜竜とも呼ばれる存在。一筋縄ではいかない筈である。そんな奴と闘うのに怯えているティナがいても最高の動きが出来るわけないため、足手まといになってしまう。それこそ吾輩もティナもただでは済まない可能性だってある。


「やだよ!ネコを置いて私だけ逃げるなんていやだよ!」


 言うと思ったである。良い子なのはいいことであるが、今そんな優しさはいらんである。ここはガツンと言っておくべきであるな。


「いいから逃げろ!吾輩からしたら怯えているお前がいるだけで邪魔である!!吾輩の力になりたいというなら集落に戻ってギィガを呼んでくるである!」

「っ!……ごめんネコ!ごめん!!」


 ティナは目に涙をため、森の中へ引き返す。

 彼女の中にも色々葛藤はあったはずであるが、これはもう本当に申し訳ないとしか言えないである。こりゃ生きて帰らなきゃいけないであるな。

 っておい待てワイバーン、貴様何吾輩を無視してティナを追いかけようとしている


「"グラビティ"」


 もちろん練習の時、ティナに向けたものとは違い、全力で発動したグラビティは空飛ぶワイバーンを強力な重力で地面にたたき落とした。ふん、いい気味であるぞ。

 グラビティを発動し続けてもいいであるが、それだけだとこいつを倒すまでは至らないだろう。

 仕方なく解除すると重力におされ、平伏していたワイバーンはゆっくりと起き上がり吾輩を睨み大きく吠えた。

 フン、ようやく吾輩を認識したであるか。

 異世界初の戦闘……それがワイバーンてどういうことであるか。普通スライムとかゴブリンが定石ではないか?弱っているとはいえコイツ始めて戦う相手ではないのは間違いないであるな。

 しかしまぁ、ティナにこいつは吾輩は食い止めると言ってしまったが……まぁ別に倒さないとは言っていないである。

 

 見合う吾輩とワイバーン。先に動いたのは奴だ。

 一口で吾輩を喰らおうと口を広げ、襲い掛かって来た。

 迫力はある。だがまぁ――


「つまらん、それだけであるか。"フロート"」


 吾輩は浮上し、奴の喰らいつきを難なく回避する。単純に遅い。遅すぎるである。

 だからこそ、こうも簡単に跳ぶだけで避けることが出来たである。

 んでもって吾輩の肉の代わりと言っちゃあなんだが食らうである。

 

 "猫パンチ"


 躊躇なく繰り出した猫パンチはワイバーンの頭部をグラビティの時以上に地面に強く打ち込まれた。というか減り込んでいるであるな。

 だがそれも束の間、奴は勢いよく頭を振り上げ再び噛みついてくる。

 流石に竜だけあってタフであるな。

 ひとまずフロートでもう一度浮いて回避しようとしたが奴は翼を大きく動かしフロートの上昇速度より速く飛んできた。

 吾輩とワイバーンの目が合う。その瞬間、ワイバーンの目が語ったような気がした。

 ――とった!!――と


 いやいや、何を言っているであるか。

 

「とったのは吾輩であるぞ。」


 奴の口が届く寸前に吾輩は奴の鼻っ柱に二股の尻尾を叩きつけた。

 猫パンチとまではいかなくても吾輩の尻尾の力は奴には十分だったようで再び地に着き低く唸り声を上げて悶絶する。

 吾輩、これを好機と見た。

 落下しながら吾輩は、体の中の魔力を込める――感覚はよく分からないのでとりあえず力を、奴を打ち倒さんと意志を籠めて――奴の首目掛け唱えた。


「"ウィンドカッター"!!」


 声とともに現れた魔法陣。そこから現れたのは一陣の風刃……が、ちいさっ!

 うそん、最初撃ったウィンドカッターよりも小さいであるぞ!?弾かれそうであるな……

 と思っていたが、ウィンドカッターのもたらした結果は吾輩の予想を大きく上回ることとなった。


 頼りないと思っていた小さな風の刃が、ワイバーンの首をあたかもバナナを斬るかのようにスムーズに斬りおとした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ