第42話 こいつを入れるであるか？
「恩返しがしたいんだ。オークから俺を助けてくれた礼をね。」
「いりませんからお引き取りを。」
きっぱりと刀で斬るが如くリンピオを追い返そうとするコーリィ。
出会いがあれじゃあ、コーリィはコイツを許しはしないであろうな。吾輩を囮にしようなどという輩であるからな。
だが、そんな事情を微塵も知らないロッテは、リンピオの発した言葉の方に反応し――
「ちょっとコーリィ！オークを狩った冒険者ってあなただったの！？てっきり上級ランクかと思ってたのに……すごいのね。」
「確かに私だけど……厳密には違うわ。倒したのはこの子よ。」
そう、何を隠そう吾輩であるぞ。まぁそこまで強くなかったから拍子抜けはしたであるが、あの程度なら今回はいくらか稼ぐことが出来そうであるよな、オークって。
「へぇ……あなた本当に強かったのね。」
「にゃ。」
肯定の意を込めて短く鳴く。これでロッテの吾輩を見る目も少しは変わるであろう。吾輩、多分お前のポチより強いんであるぞー
さて、リンピオは思いっきりコーリィに拒否られたがどうするのであるかな？
「確かに君が俺を嫌うのは分かる。だが、俺は君たちのパーティに入るにはうってつけじゃないか？」
「はぁ？」
「見たところ2人は、魔法を主にしているだろ？俺は剣で前衛を張れるし、従魔2匹いても、オークの耐久に押し切られるかもしれない。ならもう１人くらい前衛がいた方がいいだろ？」
オークの耐久……？そんなものあったであるか？確かに皮膚はゴブリン等に比べるとそりゃ堅かったであるが言うほどでもないと思うである。あ、低ランクからしたらであるかな？
まぁそれがコイツの言う通りだとして……吾輩がオークをギリギリ倒せるだけの魔物であったのであれば、吾輩とポチだけではオークの物量に押し切られる可能性も無きにしも非ずである。
「ネコがオークにやられるとでも？」
「悪いが、俺は君のその従魔が倒した現場を見たわけじゃないからね。いつの間にか気絶していたわけだし……」
「……それは災難でしたね。」
犯人は目の前にいるのだが、言わぬが花。知らぬが仏であるな。
「別にあなたにネコの強さを知ってもらわずとも結構です。あなたの言う通り、前衛が必要ならば、他の人と組めばいい話ですからね。」
「それもそうよね。確かに私はバッファだから基本的にはポチが闘うことになるけど……」
え？ロッテはバッファ……バフ効果を付与するタイプの魔術師だったのであるか？……似合わないであるなぁ。てっきり、コーリィに負けず劣らずの攻撃タイプの魔術師だと思ったのであるが。
「もちろん、パーティに加わるのが恩返しとは思っていない。俺の分け前の報酬を君に全部譲ると約束しよう。」
ほう？それは、聞き捨てならないであるな。3人で分ける報酬の3分の2が吾輩たちの手元に来るわけであるか。しかもそれはオークが増えていくたびにどんどん取り分も増えてくる……となると借金も返せるであるか！？
他のパーティならいざ知らず、吾輩たちが組んだのであれば、リンピオが弱くて使い物にならなくても結構な数が狩れるであろう。
（ネコ様……）
コーリィもそれに気づいているようだが、テレパシーを通じて聞こえる声は少し嫌そうであるな。
だとしても、吾輩は少しでも早く借金を返済したいのである。これは願ってもいないチャンス。コーリィには悪いであるが、リンピオをパーティに迎え入れようではないか。
（コーリィ。奴と組むのはこれっきりである。すまないであるが、我慢してほしいである。）
（いいえ、ネコ様。私の個人的な好き嫌いのせいでネコ様が謝る必要はございません。私を気遣っていただき、ありがとうございます。）
と言っても、吾輩たちの一存だけで奴の参入を認めるわけにもいかないので、ロッテの確認を取らなければ。
もし、彼女が嫌というのであれば、それはもうしょうがない。リンピオには別のところで頑張ってもらうである。
「――という訳なんだけど……ロッテいいかしら？」
「私的には、あと一人で依頼を受けれるのだから、構わないわよ。」
「……ありがとう。」
コーリィは、小さく礼を言い入れてもらえるかどうかと緊張して待っているリンピオをキッと睨み――
「分かりました。その条件であなたをパーティに迎え入れます。……ですが、私は貴方を許す気はありませんので。」
「あぁ、それで構わない。」
こうして吾輩たちは3人目のパーティメンバー、リンピオが加入することでオーク討伐の依頼を受ける条件を達した。
その後、どうしてリンピオを頑なに嫌っているのか気になったロッテがコーリィ本人に直接聞いたところ……リンピオに強烈な飛び蹴りを喰らわせたのは言うまでもない。
