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ネコは異世界で闊歩する。  作者:


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第33話 依頼達成と巨漢である?

「ネコさん、流石に狩りすぎじゃないですか?スライム討伐の依頼って確か5体でしたよね?」

「であるな。」


 吾輩たちは早速狩ったスライムをタオラの所に持って行き、解体師達に解体をしてもらっている。時間は全くかからないとのことなので解体所で待たせてもらっている。


「まぁ初心者が気合入れ過ぎて依頼の数より狩って来るのは、よくある話ですがそれでも狩りすぎですよ。変ににらまれちゃいますよ?」

「ハッ!ンなもんとっくに睨まれているである。」

「でしょうね。」


 やれやれと頭を振るタオラを尻目に吾輩は解体師から運ばれてきたスライムの魔核をポリポリとスナック感覚で食べている。

 うむ、やはり不味い。が、止められない味である。

 同時に頭の中の声も響き渡るが、段々慣れてきた。一つ食べるごとにアナウンスが響くのは鬱陶しいが諦めるである。


「とにかく。スライムゼリー5つ渡しておきますので、依頼はそれで達成してくださいね。残りはうちで買い取らせてもらいます。依頼に提出したものも不必要でしたら是非当店に」

「分かったである。おーい、コーリィ!そろそろ行くであるぞ!」

「はい、ネコ様!それでは親方さんありがとうございました。」

「おう、聞きたかったらまた来な。」


 コーリィは解体師達の親方からスライムの解体方法を勉強していたようだ。

 大型の魔物は無理でも小さな魔物であれば、現地で解体し、新鮮な魔核を吾輩に提供できるからと教えを乞うたのである。

 他の解体師にも教えることがあるためか苦ではないらしく、親方は快く受けてくれた。

 吾輩の代わりにコーリィがスライムゼリーと依頼分以外のゼリーの買い取り価格――から返済に少々引かれたものを受け取り、達成のため冒険者ギルドに戻った。






「はい、コーリィ様ですね。依頼は、スライム討伐……はい。5つのスライムゼリーを確認しました。依頼は達成ですね。それでは報酬です。」


 依頼達成受付の職員から報酬を受け取り、次の依頼――ではなく、昼食を取ることにした。

 どうにも魔核は腹に溜まる物ではなく、15個の魔核を食べたはずなのに吾輩の腹はキューッと鳴いてしまったのだ。コーリィも腹が減っているらしいし、この冒険者ギルドには酒場兼用のための食事をするスペースもあるから丁度いい。


(しかし、この世界にカレーライスがあるとはなぁ……)

(ネコ様、この食べ物のこと知ってらしたんですか?)

(あーまぁ、うむ。)

(流石はネコ様!博識なんですね!)


 昔、カレーのある世界から召喚された人間が食べたくて試行錯誤してカレーを開発したのであろうなぁ……

 ちょくちょく見たことのある料理メニューが目に入ったから異世界人はこの世界に大きな爪跡を残しているのであるな。


 さて、吾輩とコーリィの分のカレーライスを受け取ったならば、今度は席の確保であるな。しかし、他の冒険者も昼食の時間なのか辺りを見渡しても都合よく空いている席がない。


(ネコ様、どうしましょうか……?)

(うぅむ、こうなったら空くのを待つしかないであるな。)


 そんな感じで途方に暮れていると


「そこのお前……じゃなかった。君。」


 背後から男の声が聞こえた。どうにも吾輩……というより、コーリィに話しかけているみたいであるな。

 その方向に向き替えると、大柄で仏頂面をした男が、大盛りの定食が載せられたトレイを持っていた。


「っ!?……何でしょうか?」


 巨漢に圧倒され、無意識のうちか、コーリィは一歩後ずさり、腰を落とす。吾輩も男を観察し、警戒しておくである。どうにもこいつ、外見と相まってか相当強そうである。


「あ、いや、すまない。威圧するつもりはなかったんだ。俺はこのギルドのマスター、バジットだ。君は今日冒険者になったコーリィ君だろう?」

「ギルドマスター、ですか……?」


 吾輩の代わりに応対するコーリィは、警戒を緩めない。寧ろ、強めた。まぁギルドマスターとはいえ、こんな強面に見下ろされながら話しかけられたらそりゃ警戒するであるな。

 だが、吾輩から見たこのバジットはそこまで警戒するほどでもないと思うので落ち着かせるであるか。


(コーリィ、警戒を解くである。)

(し、しかしネコ様!)

(大丈夫である。気をしっかりもて。)


 吾輩の言葉で、ようやく警戒を解いたコーリィ。とりあえず、謝らせておこう。


「無礼な態度を取ってしまい、申し訳ございません、ギルドマスター。」

「む、あ、いや、気にするな。自分でいうのも何だが、俺を見たんだ。怯まない方が珍しいんだ。寧ろよく即座に構えれたな。」


 その見た目ならなぁ……どこかで見たことあるような面構えだと思ったら、こいつ金剛力士像みたいな強面で、赤ん坊が見たら大喚きしそうである。

 しかしコイツ、何の用でコーリィに声をかけたのだ?


「えっと……ギルド長、私に何か御用ですか?」

「いや、その、何だ。飯食うところがないんだろう?どうだ、職員スペースに来るといい。私が案内しよう。」


 ……はい?

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