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ネコは異世界で闊歩する。  作者:


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第20話 吾輩はこれからどうするである?

「これから……であるか?」

「そうです。具体的には解体を終えた後、その資金で貴方は何をするおつもりなのかと聞いておこうかと。」


 ふむ、世界を楽しみたいだのなんだの思ってはいたが、具体的にと言われると……全く決めていないであるな。吾輩、無計画だったである。


「決めてないである!」

「えぇーネコくん……あんなにティナちゃんに引きとめられながら集落を出て来たのに……?」


 悪かったであるな。あの時はただただ異世界を楽しんでみたい気持ちでいっぱいだったのだ。

 前世と違って魔物を屠るだけの力を手に入れたのだからそれを生かして何かをしてみたいという短絡的な考えはあったかもしれんであるなぁ……

 そんな吾輩を見かねてか、苦笑いを浮かべながらタオラが語り掛けて来た。


「では僭越ながら私がいくつか提案させていただきましょうか?」

「……頼むである。」


 ここで意地を張っても仕方はない。だから差し伸べられた手は甘んじて掴ませてもらう。正直、吾輩自分なら何が出来るのか未だ把握できていないのである。


「まず1つ。魔物らしく野生に生きることですかね。」

「論外である。」

「でしょうね。」


 せっかく人と話せるようになって転生までしたのに野生に生きるとか考えたくないである。それに転生前まで食べられなかったイーターと言う口まである。だと言うのに肉しか食べるものがなさそうな野生に吾輩は価値は見いだせないである。

 そこはタオラも察していたらしいであるな。


「では次……私達と働くというのは?」

「おぉ、それはいいんじゃないかなネコくん?」


 いいやいや、ニアよ。何をそんな嬉しそうな声を上げているであるか。


「却下。どうせ吾輩のマジックボックスが狙いであろう?荷物持ちしかしない生活は嫌である。」

「マジックボックス狙いなんてそんな……確かに凄く欲しい。欲しいですよ?それはもうネコさんが本当にただの魔物だったら殺してでも欲しいくらいには欲しいですよ?」

「正直であるなぁ……」


 商人は時に正直でなければ通じない時もあるのですよとタオラは不敵な笑みを浮かべる。もはや吾輩にはタオラは初対面の時の丁寧な御仁という印象はないである。

 こいつ商人である。いや、商人なのは間違いないのであるが、根っからの……であるな。


「うーん、安定した生活が出来ると思うのですがねぇ……」

「安定した生活は既に済ませているである。吾輩はスリリングな事をしたいである。」


 安定した生活というのは前世の事である。本当にあの時は長閑に暮らしていたであるからな……


「スリリング、ですか。ともすれば冒険者ですが……うぅむ。」


 冒険者!前世ではよく異世界物の小説を読み込んだであるが、やはり憧れはあるであるな。というか、ピッタリである。吾輩冒険者になりたいであるぞ。

 ――とは言っても問題が無い訳がないであるな。


「それが吾輩的には一番であるが、やはり魔物が冒険者になるのは無理であるか?」

「一般的には無理です。そりゃあそうでしょう、魔物が冒険者となって人助け?信じる人なんていませんよ。魔物使いにテイムされていない魔物なんていつ襲ってくるか分からないんですからね。」


 ですよねー。鎖の付いていない猛獣は恐ろしい。いつ襲ってくるかわからない恐怖感で人間はビクビクするものである。

 吾輩は生前、自分の生命を脅かすような存在と相対すなんて体験をしたことは無いから何とも言えないであるが……


「ネコさん、ちなみに誰かにテイムされる気は?」

「ん?吾輩をテイム?……出来ないであるぞ?」

「出来ない、とは?」

「そのままの意味である。詳しくは言わぬが、吾輩をテイムなど出来ないのである。」


 吾輩の持つユニークスキルのうちの1つ。"吾輩は猫である"だ。転生する前、クシャルダは

『スキル、吾輩は猫であるとは!精神的状態異常をすべて無効化し!何者にも服従されず!物理的にも精神的にも縛られない!ネコくんという存在を保つためのスキルだ!』

 と説明をした。この言葉通りであれば、吾輩は洗脳されたりなど、魔物使いとやらにテイムされたりなどされないはずだ。ただのスキルならいざ知らず、クシャルダが吾輩のために神様権限とやらで作り出した唯一無二のユニークスキルである。

 奴も肉球で心が揺らいだりしていたが一応は神だ。ポンコツでなければこのスキルの効果は絶対のはずである。

 

 タオラは特に追求せず、「そうですか。」と一言だけ返した。


 しかしさっきのタオラの言い方。引っ掛かるものがあるである。


「タオラ、お前言ったであるな?一般的には、であるか?」

「えぇ、そうです。ネコさんが冒険者になれる方法あります。――まぁ厳密には違いますが、なれると言っても過言ではありません。」

「どうすればなれるのであるか?」


 冒険者になれるというのであれば、聞かないわけにはいかない。

 そんな裏技めいた方法があるのであれば、吾輩は喜んで飛びつくであるぞ。


「それはですね。人間を従えて、その人に魔物使いとしてギルドに登録させればいいんですよ。ネコさんはその人にテイムされた魔物だと振る舞えばいいんです。ネコさんが言語を把握できるのであれば、依頼を自分で選び、人間に依頼を受けさせて、ネコさんが達成すればいいんですよ。言うなれば代行者を作ればいいんですよ」


 ほー、なるほど。確かにそれだと冒険者になれるようなものであるが……


「だが、そう上手く吾輩に従う人間がいるのであるか?」


 問題はそこなのだ。魔物に良いように扱われるなんていい気持ちはしないだろう。仮に引き受けてくれる者がいたとしても、魔物だからといずれ裏切られる可能性もある。

 

「安心してください、ネコさん。当てはあります。」

「当てであるか?」

「えぇ、普通の人で従ってくれる人間がいないのであれば、従う人間を買えばいいんですよ。」


 ……ん?それってもしかして


「奴隷……であるか?」

「御明察。」


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