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第131話 あ奴と面会である

「という訳で、出来るだけ早くお越しください」

「分かりました。準備が整い次第向かいます」


 操られたであろう魔物たちの襲撃の翌日、我輩たち一行は冒険者ギルドに呼び出された。なんでも昨夜の一件の話をしたいのだとか。


「あんだけ働いて朝すぐに呼び出しってもうちょっと労わって欲しいわね……」

「同意であるが、断りにくい要件であるからなぁ」


 我輩とコーリィはバステトの副作用で激しめの行動は出来そうにないし、ティナも狂躁状態から解除されてなお眠り続けているから元々今日は休みにするつもりであった。

 とは言え、ティナ1人にしておくのも宜しくないということなのでロッテとポチにティナの看病を任せて我輩とコーリィで出向くこととなった。



「うわっ、暑苦しいであるなぁ」

「ネコ様、私の頭上へ避難してください。足下は危ないです」


 襲撃から一夜たっても冒険者ギルドはそれはもう大混雑していた。冒険者たちは列をなし、職員たちは皆一様に小走り以上のスピードで移動している。普段もそれなりに騒がしいところだが、今日はそれ以上であるなぁ。

 ただ、これだけ混雑していると我輩たちどこに行けばいいのか分からんであるな。なんて思ったところでギルド長のキッカが人ごみを掻き分けてこちらにやって来た。


「ようやく来てくれたわね。まずは場所を変えましょう、こっちへ」


 挨拶もほどほどにキッカはコーリィの手を引きギルドの奥へと連れ込む。少し歩いたところで、二人のギルド職員が見張りのように立ち並ぶ扉の前に辿り着いた。

 我輩たちと言うより、キッカに気付いた2人は深々と頭を下げる。


「ギルド長!お疲れ様です」

「お疲れ。対象は大人しくしている?」

「えぇ。凄く大人しくて話に聞いていた魔物とは思えないんですけど……」

「それでも警戒は必要よ。それじゃあ入るから」

「ハッ!お気をつけて!」


 以上が、キッカと門番ギルド職員の会話なのであるが、何となくこの扉の先にいる存在が分かった気がするのである。コーリィもその可能性に至ったのか、ほんの少しだけだが声を漏らした。

 キッカはそれに気づいたのかは分からぬが扉を開けその中へと入り、我輩たちもそれに続いた。そこで目に飛び込んだものにまず驚いた。石で作られた下に続く階段である。


「地下なんてあったのであるか」

「違反した馬鹿どもを騎士に引き渡すために一旦収容するためにね。ここ最近は使ってなかったんだけどド級のが現れたからね」

「九尾がこの先にいるんですか?」

「そうよ。と言っても大人しいものよ。操っていた奴の情報を正確に話してくれるし」


 話をしながら階段を下りていると、小さな灯りと椅子に座ったギルド職員。そして堅牢な檻が見えた。あの檻の中に……おぉ、白いふさふさとした毛皮が見える。間違いなく九尾であるな。

 我輩たちに気付き、キッカに対してギルド職員が頭を下げる。それに「お疲れ様」という言葉で返すキッカに続いて我輩たちは檻の前に立ち中にいる者を確認する。


『あぁ、来てくださったのですね』


 檻の中から聞こえる女性的な声。そこにいたのは見間違えようがない、昨夜交戦した九尾そのものであった。だが、昨日とは明らかに違う点がある。まずは四肢に取り付けられ地面に固定された拘束具。美しいとも言える白い毛皮に刻まれた赤い紋様。そして何より――九尾のその眼が操られていた時とは異なり理性的な光を宿していたのである。


「お前は、九尾の狐……でいいのであるな?」

『はい、本来の我が主より頂いた名をフォルコと申します。私の中で蠢いていたあの下種野郎の意識は残っておりません』


 フォルコと名乗った九尾の狐はひれ伏すように頭を下げる。そう言えば一目で我輩たちを指名したこともそうだが、もしやフォルコは狂躁状態の時の記憶があったのであるか?

 そのことを聞いてみると、答えは肯定する物であった。それは……辛かったであろうな。


「それで?我輩達に何用であるか?」

『はい。私は奴の……タナカタロウに関する私の持てる全ての情報をすべて語り終わりました』


 タナカタロウ?何その偽名感満載な名前。フォルコの口で散々喋っていたあの糞野郎のことであるか。


『これで私のすべきことは終わりました。なので――あなたに私の魔核を取り込んで欲しいのです。』

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