いざ、夢の国へ!
よろしくお願い致します。
ガバガバのお話になっておりますが、何とぞご容赦を。
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「はぁ、やっぱりこの世界は素晴らしいな… 何をやっても怒られないし、面倒な人間関係も存在しない。次元の壁を超えてこの世界で自由気侭な無双生活をしたいなー」
そう呟き俺は自分で作ったギルドの本部である城の玉座の間を見渡す。といってもパソコンの画面に映っている城だが。俺は今コンピューターMMORPGゲーム『The quest for truth(真理の探求)』をプレイ中である。
そこには多くのNPCが指定された動きをしている。なんか強そうな人やモンスターが玉座に座る自分のキャラクター「ゼロ」のそばに立っていたり、たくさんのメイドさんが壁際に立っている。
そして、俺の側には自分以外のプレイヤーはいない。というより自分以外でこのギルドに所属しているのはNPCだけである。
元々は仲間がいたが仲違いでいなくなってしまったのではなく俺がギルドを作ってから3年経った現在までプレイヤーをギルドメンバーにした事は無い。
そう、俺はゲームを始めてから基本的にボッチを貫いており、むしろ他のプレイヤーは同じゲームをプレイする仲間などではなく、自分の知らない、持っていないスキルと装備を持つ倒して奪うべき敵なのであった。
「俺」こと碓氷境彌は現実世界では政治家を父にもついわゆる金持ちの家の一人っ子だ。ゲームの中ですら友達ができない真性のボッチと思っている奴もいるだろうが、全くの逆である。
普段の生活では頭脳明晰、コミュ力抜群、運動は人並み、という感じの中々に高スペックな人間なのだ。父は俺を政治家にするべく幼い頃から濁った目をしたおっさん達が集う会に参加させ、汚い人間関係の英才教育をさせていた。
高校2年になった今ではすっかり人間不信。
心情を表に出さない顔芸と相手を信頼させる話術を極め、女の子から人気もあるし男達からの信頼も厚い。
しかし、あいつらが俺を見る目があのおっさん達に似た物を感じてからはこの世界に絶望と苛立ちを感じて生きていた。そんな生活で溜まったストレスを発散させたくて俺は「これ」に手を出した。
このゲーム『The quest for truth(真理の探求)』はゲームショウでの発売発表時から大きな話題を呼び、世界中で500万本以上売れた超人気ゲームである。通称「QT」。「キューティー」などとも呼ばれているが、このゲームにかわいらしさを求めてプレイしている人はほとんどいない。
このゲームの売りは「異常なまでのやり込み要素」と「信頼できる仲間を見つけよう!」である。
このゲームは自分の行動や倒した敵、倒し方によって様々な「称号」を得る事ができ、称号が良くも悪くもプレイヤーのステータスに強い影響が出るという特徴がある。
プレイヤーのピンチを救えば[通りすがりの救世主]、レベルが大きく離れた弱いモンスターを一度に大量に倒せば[虐殺者]など。中には自分の技に勝手に名前を付けると[厨二病患者]なんて不名誉な称号を貰ったりしてしまう。
自分の何気ない行動が称号の獲得につながってしまうためプレイヤーの多様性の一番の要因が称号にあるといっても過言ではない。
俺はこのゲームにハマりにハマり、学校で完璧人間を演じるというクソゲーをプレイし帰宅すると自室に引きこもりパソコンの電源を点け俺の住むべき世界へと戻る、という世間的に新しい引きこもり生活を送っていた。
俺のこのゲームでの名前は「ゼロ」。
自分の周りの人間関係や、他の人間が自分ではなく自分の親が持つ金や権力などを目当てに近寄ってくる事など、自分自身は空っぽな人間なのだなという自虐を混めてこの名前にした。
このゲームでの俺の振る舞いは典型的DQNである。
このゲームでは素行不良プレイヤーに対するアカウント停止などのゲームのプレイを禁止するような制裁は無く、逆にPvPを煽り立てるような要素さえ時折垣間見える。そんな他プレイヤーを簡単に信用で来ないゲームだからこそキャッチコピーである信じられる仲間というものを作る事ができるのだろうと思う。
しかし俺は素行不良プレイヤーに対する制裁が無いという部分に惹かれ徹底的な悪の道を突き進んだ。
俺が伸ばしたスキルは他者のスキルや装備を奪うというものだ。遭遇したプレイヤーを倒しまくりそこで奪ったスキルや武器を持って単身でダンジョンを攻略、自分の能力の進化などを行い続けた。
スキル<強奪>によってこのゲームをプレイしてから3年半程で俺はほぼ最強と言っても良い位のスキル、装備を手に入れた。
それらの行いにより俺の称号は魔王もドン引きするようなモノが多く並んでいる。
とあるスキルを得てからはギルド作成に力を入れていて、ついこの前納得のいく城と設置NPCを作り上げたのだ。
深夜2時を過ぎた頃QTをログアウトし、明日は土曜日で学校も休みだし明日も遊ぶぞー、そろそろ寝ようかなー、という所で一通のメールが届いた。
それはQTの制作会社から送られてきたものであり、こう記されていた。
『おめでとうございます!厳正なる抽選の結果、貴方はThe quest for truth VRMMOのテストプレイヤーに選ばれました!
このたびThe quest for truthは大規模多人数同時参加型オンラインRPG(通称MMORPG)のVR化の作成に着手し、あらかたの完成を見ました。
そこで、テストプレイとして約3ヶ月の間500名のお客様に体験版としてゲームをプレイして頂き感想、改善点などをお客様の目線から、ゲームシステム向上の為ご指摘頂きたいと思っております。
お客様の今あるデータをそのままインストールしプレイする事が可能です!
大切に育て上げたもう一人自分でQTの世界で冒険してみませんか?
もし、テストプレイに参加して頂けるのであれば下記に添付してあります参加承諾書の必要事項を記入してご返信いただきますようお願い申し上げます。
なお、参加の意思が無い場合は返信などは不要です。
良い返事が頂ける事をスタッフ一同心よりお待ちしております。
The quest for truth VRMMO Project
』
俺は一切の動きを止め、メールを何度も読み返した。頭の中は真っ白で眠気なんてモノは吹き飛んでいる。
え?あのQTをVR化して、なおかついち早くプレイできる?
なんて事だ。小学校4年生の頃からこの世界には希望もなにもあったもんじゃないと思って生きてきたが、俺に奇跡が舞い降りた。
これは今まで汚い世界に浸らされ続けた可哀想な俺に対して神様がくれたご褒美だ。
遊ばないなんて言う選択肢はない。むしろ住むよね。国建ててみようかな。いっそ世界を滅ぼしてみても…
俺は色々想像しながら参加同意書に必要事項を記入し送信した。
次の日の朝、参加承諾に関する感謝のメールが送られてきた。
遊ぶ為のブツは3日後に郵送されるらしい。
俺は学校から帰ってから改めて自分が回った世界を歩きなおした。
どこに行こうかという計画と、この場所を実際に見たらどのように見えるのだろうかと期待を膨らませながら。
メールをもらって5日後、とうとう届きました。夢の世界へのチケットが。
学校は無断で休んだ。外面完璧な俺にとっては初めての行動だ。しかし、親や教師、友人に対する言い訳はもう考えてある。いや、そんな下らない事を考えいる場合ではない。
今直ぐ俺のいるべき世界に行かなければ。
段ボールを空けると説明書とヘルメットのような物が入っていた。
説明書を見ながらデータのインストールと機械の接続をし、ベッドに寝てヘルメットをかぶり俺はスイッチを入れた。
不安は無いと言えば嘘になるがそれよりも楽しみが大きすぎて不安を感じていなかった。
意識が沈むような感覚を受けて視界が黒く染まり、すぐに優しい光の白い世界に俺は立っていた。
ここはどこだろう、ギルドの城に送られるんじゃないのか?と思ったとき頭の中で声と文字が同時に現れた。
『ただいまから貴方の善行と悪行、称号の清算を行います』
このゲームは元からMMOで変わったのはVRになった事だ、というご指摘を受けましたので変更いたしました!
これに気付かないなんて本当に僕はタコですね!