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魔女ベロニカの無能な召し使い  作者: にやな
イサギと初めまして異世界
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ゼルさんがお供になりました。

そして、ベロニカさんの赤いレンガの家に着いた。


「貴方が自らここに来るなんて初めてのことじゃないかしら?ゼルディオーネ」


ベロニカさんは家から出てきていて、空から降りてくる俺とドラゴンさんを見上げていた。ん?これはドラゴンさんと顔見知り?もしかして、ベロニカさんの使い魔だった?

ゼルディオーネっていうのはドラゴンさんの名前だろうか?名前もかっこいいなー。


着地の衝撃もなく、傷を労るようにゆっくりと地面におろしてくれたドラゴンさんこと、ゼルディオーネさん。立つのは辛いけど、血はもうそんなに出ていない。


「あらイサギ、怪我しちゃったの?ちょっと見せなさい」


ベロニカさんが屈んで破れたズボンの上から怪我を見る。こうしてベロニカさんを見下ろすのは初めてのことだ。

傷を見てさっと触診をすると、ベロニカさんは溜め息を吐いた。


「傷は深くないから、薬をつけて寝れば明日には治るでしょう。それより、まさかイサギが連れてきたのが彼だなんてね、正直吃驚しちゃったわ」


「怪我してくるのは想定内だったけど」とも言われ、危ないことさせられてたんだなーと他人事のように思う。

……て、これじゃあ明日からのお料理教室のお供がゼルディオーネさんってことにならないか?それはいただけないぞ。


「ちょっと待ってベロニカさん。ゼルディオーネさんは俺が狼に襲われてたの助けてくれただけだから。んで足噛まれて動けなかったから連れ帰ってきてくれただけだから」


「それ自体が異常よ。ゼルディオーネは自分から誰かに関わっていくような性格はしてないもの。いくらイサギが鈍臭くて見ていられなかったにしても、それをスルーしちゃうくらいの冷たいのよ?」


さらっと酷いこと言われた気がするけど、今は聞かなかったことにしよう。でも、ゼルディオーネさんが冷たいだって?いやいやそんな。確かにクールな人ってのは冷たい印象になりがちだけど、ゼルディオーネさんに至っては優しくてクールなイケメンです。


「確かに彼はドラゴンにしては大人しい部類かもしれないけど、本来は凶暴で怒らせると手をつけられない種族よ」


「いやいやいや怒らせると手をつけられないのはベロニカさんも同じひっ!!」


急にブーツが小さく縮んで足を締め付けてきた。結構痛いし地味に凄い魔法だ。


更に足を痛め付けられて地面を転がっていると、ゼルディオーネさんとベロニカさんが何やら話始めた。何を話しているかは分からない。いや、ベロニカさんが話してるのは分かるんだけど、如何せんゼルディオーネさんの方は「グルルルル」と唸っているようにしか聞こえないのだ。


「じゃあ明日から頼んだわよ。……良かったわねイサギ。彼、貴方の街通いを手伝ってくれるみたいよ」


「えっ!?」


そんな申し訳ない。だってなんか、俺ばっかり狡いじゃん。愚痴聞いてもらって、助けてもらって、家まで送ってもらって。しかも明日からの教室通いも一緒に行ってくれるとか。俺ばっかりしてもらって狡いじゃん。


俺もなんか、ゼルディオーネさんにしたいんだけど。


「んんんーーーじゃあ!料理上手くなったら、ゼルさんにもご馳走するから!!」


よし、これでいい。取り敢えずは。今の俺に出来ることなんて何もないし、これから料理習うんだったらゼルさんにもご馳走すればいいんだ。ほんとはもっと何かしたいけど、それだけじゃ釣り合ってないけど、だんだんに恩を返していけるように頑張ろう。


ゼルさんは俺の自己満足な提案に「グルル」と唸った。相変わらずなんて言ってるのかは分かんないけど、まぁ期待しないでおく、みたいな感じだと思う。このツンデレさんめ。


そしてゼルさんはまた森へと帰っていった。夕日に照らされて光る鱗が凄く綺麗だった。ゼルさんを見てしまうと、ドラゴンって生物の中で一番綺麗なんじゃないかと思う。




家に入るとまず噛まれた太股に薬を塗るためにズボンを剥ぎ取られた。パンツ丸出しである。チェリーな俺は全力で恥ずかしがったし焦ったが、ベロニカさんはそんな俺を見て楽しむように魔法を使いながら俺を追い詰めていった。


「ななななんでそんなにいきいきしてるんですか!?薬くらい自分で塗れますって!大丈夫ですって!!」


「だーってこれ、魔女の薬よ?量とか間違えたら大変でしょう?」


足をやられて動きの鈍い俺はあっさり捕まった。光の縄のようなものが足から体に絡み付き、そのまま椅子に拘束される。緑色をした軟膏の入った瓶を片手に近づいてくるベロニカさん、ボス並みの威圧感。……を感じているのは俺だけだろう。端から見たら美女がエロい感じで近づいてくるようにしか見えないだろう。


だがしかし、俺にはそうは見えない。なんたって俺はチェリーくんだ。友達同士での下ネタでさえ耳を塞いじゃう超恥ずかしがりやさんだ。普段の言動こそDKらしい馬鹿らしさがあるかもしれないが、でもそういう方面はとんと苦手なのである。


多分、今の俺の顔は真っ赤だろう。美女を目の前にパンツな俺。しかも怪我の手当てで場所が太股。……ダメだ、俺には刺激が強すぎるっ!


「あーあ。そんなに暴れるから傷口が開いちゃったじゃない。ほらもう力抜いて、大人しくしなさいな」


「わっ、ちょっ、と待って」


ちょっとちょっと!太股に薬塗るだけなのに、そんなに足触る必要ある!?うわぁ、焦る俺の顔見て楽しんじゃってるよ。ドSだよ。


そのあとは割りとスムーズに治療が行われ、包帯を巻かれると、破れたズボンを魔法で直してくれた。


さっきの嫌がらせを警戒してベロニカさんから距離をとっていると「ご飯はいらないのかしら?」と言われ、渋々席についた。

その日の夕食はベロニカさんが作ってくれた何かの肉のステーキとパン。ベロニカさんはワインを飲んでいたけれど、俺は酒は飲めないのでジュースを貰った。


食器を洗ってお風呂にお湯を張ると、あとはベロニカさんのお風呂が終わったあとに自分も入るだけで、特にすることもない。

いずれ読み書きが必要になると思ってベロニカさんから簡単な本を借りてみたものの、全くもって分からない。いくつか借りたなかで分かるのは、植物の図鑑。お風呂から戻ってきたベロニカさんに植物の名前を教えてもらいながら、許可をもらってふりがなをふった。紙とペンももらって、これからは夜に読み書きの勉強をしていこうと思う。



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