皆で作戦会議……がしたいです。
お次はファーニルと二者面談。
フィリンちゃんにお願いしてファーニルを部屋に呼んでもらうと、それはまぁ、不機嫌な顔でやってきました。
「フィリンに何を吹き込んだ?」
「まぁ、人聞きの悪いこと。」
俺はただ、自分の理想を話しつつフィリンちゃんの意思を確認しただけですよっと。
ファーニルにも先程と同じように向かいのソファーに掛けてもらい、面談を開始する。
「ファーニルはさ、フィリンちゃんがここに残るって言い出したらどうする?」
「お前、やっぱり何か吹き込んだんじゃないか!」
「いやいやいや!そうかもしれないけど、今はそれ置いといて会話しようよ!お話が進みません」
ファーニルに再三突っ込まれながらもフィリンちゃんとした話を教えた。口を挟んでくるものの、否定的な言葉は出てこないところを見ると、妹の身を心配しているだけのようだ。
「でさ、この話を進めるとしたらファーニルにはここにいてもらった方がフィリンちゃんは安心するみたいだけど、ここで暮らせそう?」
「……僕には難しいだろうな。フィリンと違って明確な後ろ楯があるわけでもないし、ここで世話になるなんて以っての外だ。となると自活だが、人間と偽って生活するのも限界がある。いずれはバレることを考えると、ここで暮らせば捕まる未来しか見えない」
でも、フィリンちゃんが心配で彼女の望みでもある、と。顔を青くして考え込むファーニルを前に、俺も考えていたことを話す。
後ろ楯。それがファーニルにはないし、フィリンちゃんにはディックさんがいるけど、俺はそれだけでも不安だと思っていた。
二人がエルフだとバレてもこの街で安全に暮らしていく方法、あるにはあるさ。
「ベロニカさんをフル活用出来れば後ろ楯、問題解決出来ると思うんだよねー。うん、よし。面談これにて終了!二人の意思も確認出来たし、部屋戻って作戦会議しよう」
「何を考えているんだ?……任せて大丈夫なんだろうか……」
「信用ないなぁ。ここは取り敢えず愛と平和とハッピーエンドを推奨するこの潔くんに任せなさい!」
「いや、信用がない訳じゃなくて期待がないんだ」
「ちょっとファーちゃん期待もしとこ……はっ!危ない危ない。ファーちゃんの貴重なデレを流してしまうところだった。何だかんだ言っても信用はしてくれてるのね!このツンデレヘタレさんめ!上手くいったら俺のこと『潔くん』って呼んでくれるよね?」
「お前相手だと軽率にフォローも出来ないな。忘れないでおこう」
「……フォローはしてくれると嬉しいな……」
軽口を叩きながら皆のいる部屋に戻ると、なんだか妙な雰囲気になっている。フィリンちゃんはそわそわしてるし、ディックさんは茫然としてるし、ベロニカさんは何故かニヤニヤしている。
……俺がいない間にどんな面白いことがあったんだ!
ファーニルはすかさずフィリンちゃんのもとに駆け寄った。
「どうしたんだ?」
「に、兄さん。その……」
「突然『私を伴侶にしていただけませんか?』って言ったのよ。マクライエン卿に」
くすくすと楽しそうに笑うベロニカさんが教えてくれると、フィリンちゃんが顔を真っ赤にし、ファーニルがなんとも複雑な顔をした。
「それからハッとしたように彼女がどれだけマクライエン卿のことが好きなのか、どれだけ感謝しているのか熱心に語ってくれたわ。お陰で私は完全にお邪魔虫になっちゃったけど」
「ベロニカさん、邪魔者って自覚があったんならなんで部屋を出なかったんですか」
「だって他人の告白なんて楽しいイベント、そうは見られないでしょ?」
「なんでその楽しいイベントが発生してるのに俺を呼んでくれなかったんですか!?」
「『二者面談はするんで立ち入り禁止ですからね!』って言ったのはイサギの方よ」
「ぐぬぬぬぬっ!」
まぁいいさ。悔しいけど過ぎたことは仕方ない。……ん?
「それで、ディックさんのお返事は?」
「これからよ」
「うっしゃセーフ!それじゃあディックさん、どうぞ!」
どうやらまだ間に合うらしい。
未だ立ち尽くしているディックさんに話を振ると、はっとして我に返ったようだ。それから真剣な眼差しで赤面したままのフィリンちゃんを見た。
「君はおとなしい印象だったから、まさかそんな熱い告白をされるなんてね。驚いてしまったよ。……私は人間だ。種族の違いもあるが、何より君を置いて先立つことになる。それでもいいのかい?」
ああ、ディックさんが気にしていたのはこれか。エルフは人間よりも寿命が長い。ファーニルの見た目で既に45歳だ。人間の数倍はあると考えていいだろう。
「構いません」
「本当に?自分で言うのもあれだが、私のことを想っているならその後が辛いだろう」
その言葉にフィリンちゃんは目を伏せ、口許に笑みを浮かべた。
「愛する人の最後を看取ることが出来る、愛する人を想いながら余生を過ごせる。こんなにも贅沢で幸せな悲しみが、他にありますでしょうか」
フィリンちゃんはふわりと綺麗な笑みを浮かべ、両手を自分の胸へ寄せた。その仕草がまるで祈っているようで、つい見とれてしまう。
「……参ったな。そんなつもりじゃなかったのに」
「……やはり私では、不足でしょうか?」
ディックさんは困ったように頭を掻き、フィリンちゃんに近寄ってその片手を取った。
「これじゃあまるで、最初から下心あって君を助けたように思われてしまうだろう?そんなつもりじゃなかった」
苦笑いを浮かべたディックさんは、徐にフィリンちゃんの手に顔を寄せ、軽く口付けた。そして、微笑みながら言う。
「でも、先に落ちたのは私だと思うんだ。だから私に言わせて欲しい。……私と結婚してくれますか?」
「……っ!……はいっ」
う。
うわあああああ!
ディックさんがイケメン過ぎて辛いよ!そしてフィリンちゃんが可愛い。
やってるのが美男美女だから映画のワンシーンを見てるみたいだった。おおお、これ見れて良かった!
フィリンちゃんの涙目を見たら俺まで泣きたくなってきちゃったよ。たぶん、俺の目は今、うるうるしているだろう。
さて、感動のシーンが終わったとこで。
……作戦会議したいんだけど、これ言ったらKYかな?




