フィリンちゃんと面談します。
と、言うわけで。取り敢えずフィリンちゃんだけを連れて別室に来た。俺たちは向き合ってソファーに腰かけた。
これはそう、二者面談!
学校でよくあるやつだけど、これを嫌う人も多いらしい。俺は好きなんだけど。だって、考えてもみて欲しい。普段俺の話を無視するか流すか遮るしかしない先生が、その時間はずっと俺とまともなお喋りしてくれるんだからね!話す内容は学校生活やら成績やら進路のことだけど、それでも話してくれるから俺としては楽しい時間なのだ。
でも、俺は知っている。俺だけ面談時間が短いのは「稲波と話すと疲れる」というのが理由だってことを。
懐かしい回想はここまでにして、目の前で不安そうな顔をしたままのフィリンちゃんに目を向ける。
さて、本題だ。
「フィリンちゃんはさ、なんで村に帰りたいの?」
「え、それは、私の生まれ故郷ですし、兄さんもいます」
「まぁそうだよね、月並みな回答だけど。じゃあさ例えばなんだけど、ファーニルがここで暮らすって言い出したら、フィリンちゃんはどうする?」
そんなこと急に言い出したら俺も吃驚だけどね。どこに頭打ってきたの!?って頭さわさわしちゃうかもしれない。そのあと殴られるかもしれない。
「兄さんが?」
「例えばの話だから。で、どうする?」
「……兄さんと一緒にいたいです。でも、村には婚約者がいますし、帰らなければ」
「あー。そいやそんなこと聞いたかも。でもフィリンちゃん、その人のこと好き?」
「……」
「だよね。そうだと思ったよ」
フィリンちゃんはディックさんのことが好きなんだと思う。だってディックさん、ナイスイケメンだしね。それに絶望的状況から初対面でしかも見返りも求めず助けてくれて、それからここまで面倒をみてもらってる。俺が女の子だったら落ちるわ。一瞬でディック様、イケメン好きっ!ってなるわ。
まだ会って2日目だけど、ちょいちょいそう思わせる場面はあった。ディックさんに手渡されたハンカチをぎゅっとしてみたり、不自然ではない程度にディックさんを目で追ってみたり。お兄ちゃんは騙せても、俺は騙せない。こう見えて案外こういうことに鋭かったりするのだ。
だから、俺からの提案はこれ。
「ディックさんのこと好きなら、その人じゃなくディックさんと結婚しちゃえばいいんでない?」
俺の言葉にフィリンちゃんが目をぱちくりした。
いきなりこんな話をされたら無理もないか。さっきあんなにシリアスムードだったのに、いきなり「好きなんでしょ、結婚すれば?」みたいなこと言われてるんだし。
1拍遅れて顔を赤くしたフィリンちゃんに、やっぱりなーと思う。
「気づいていらっしゃったんですか」
「イサギくん実は恋する乙女には鋭いからね」
ちょっと引くくらいに自慢気な態度をとってみたのに、フィリンちゃんは構う余裕がない様子。ボケ損。
「でも、人間の殿方となんて。一族が許しません」
「えー、大丈夫じゃない?だってほら、最高の口実があるじゃん」
俺が自分の首を指差すと、フィリンちゃんは自分の首にある首輪に触れて首を傾げた。
「とったら寝込み確定の爆弾だけど、そのままにするんなら問題ないし、何よりもここにいられる十分な言い訳になるでしょ?」
フィリンちゃんがハッとした顔をした。気づかなかったんだなー。
でもすぐに暗い顔に戻る。
「でも、……ディック様が認めてくださらなければ、元も子もありません」
「それは大丈夫だと思うな。ベロニカさんにこれの解決お願いしたらとんでもない条件出てきそうだけど、その首輪は違う形に変えてもらおうよ。そうすれば結婚した後でも堂々と街を歩いたり出来るようになるだろうし」
「あのっ!結婚することを前提にお話を進めないでください!」
おお、美人さんのお顔が真っ赤だ。可愛い可愛い。
「まぁまぁそう言わずに。取り敢えずちょっと俺に任せてよ。これが上手くいけば好きな人とずっと一緒にいられる上にお兄ちゃんもこっちで暮らせるけど、エルフ一族には害がない理想的なハッピーエンド迎えられるかもしれないしさ。上手くいけばの話だけど」
取り敢えずは、と俺に任せることを許してもらい、一人目の面談を終了。
さて、お次はお兄ちゃんですぞ。




