相談しました。
「と、言うわけでして。ヤミ金よろしくベロニカさんに無茶振りされちゃあ堪らないので、相談という形を取らせて頂きましたとさ」
「なに相談持ち掛けてる側が完結させてるのよ。聞く気ないの?」
「すんませんした。聞きますとも」
夕飯の仕度をしながら一連の経緯を説明し、ベロニカさんに呆れられた。ベロニカさんはいつも通り、テーブルで薬を作っている。
開けた窓に金色の嘴の使い魔がとまり、その窓の外には珍しくその鷲の成鳥が来ており、何かの肉をつついていた。
「関わるなと言ったのに、そこまで顔を突っ込んだわけね。予想はしていたけれど。まぁ、ここまで私に頼らずに出来たことは誉めてあげるわ」
行動力をちょっとだけ誉められた。あんまり誉められたりしないからむずむずする。
「そうねぇ。私の介入なく首輪を外すんなら、首輪に込められた魔力を逆探知して術者を探し出すしかないわね」
「逆探知って魔法使える人なら誰でも出来るんですか?」
「誰でもじゃないわ。私ほどとは言わなくても、魔女か魔法使いと呼ばれるレベルは最低でも必要」
魔法を使える男性の最高峰の呼び名が魔法使い。魔女と同じような感じだ。この世界に魔法使いと呼ばれる者は少なく、魔女と同じく三大魔法使いがいるらしい。
って、そのレベルが必要とか。どこにいるかも分からない数少ない魔法使いや魔女を探すより、目の前の魔女様に頼った方が凄く楽な気がするのは俺だけですか?
「ちなみに、他の魔女や魔法使いって何処にいるんですか?」
「ここから徒歩なら二月の場所が、私が知る一番近所ね」
「それは近所とは言わない」
「ガルラに乗れば3日で着くわよ」
「え?ガルラって?」
ベロニカさんが窓を指差した。あの鷲、ガルラって言うのか。知らなかった。
「行くって言うなら貸してあげてもいいけど、あいつを家から出すのは至難の技よ。興味のあること以外では頑なに動こうとしないから」
「3日かけて行って空振りの可能性は?」
「95%ってとこかしら」
「5%のために3日はちょっと……」
出来るだけ早く解決したい問題なのだ。あまり日数をかけてられない。……やっぱりベロニカさんに頼んだ方が早く解決するんじゃない?
「言っておくけど、この件は貴方から解決の依頼をされたところで私は受ける気は更々ないわよ」
ベロニカさんからの一言にそりゃもう吃驚。釘を刺されてしまった。呆れられただけかと思ってたけど、忠告無視したのちょっと怒ってるのかな。
「怒ってないわ。でもこれは貴方がそこまでする必要はないことでしょう。自分から関わっていったとは言え、貴方は第三者。モヤモヤがどうこうじゃない。貴方が解決を依頼するのは筋違いなの。分かる?」
それは俺にも分かります。そもそも俺ごときが解決しようってのが間違いなんだ。俺だけではそんな大それたことは出来ないし、ベロニカさんを頼って『誓約』してもらうってのも何か違う。
だってこれは、フィリンちゃんが抱える問題であり、俺に直接的な問題はない。ただ、俺が見て見ぬふりが出来ない愚直な人間だつてだけなんだ。
そんな、なんの力もない俺が解決しようとするのは、傲慢、とでも言えばいいんだろうか。そんな風に思ってしまう。
「魔法の才もない、剣も振れない。かといって頭がキレる訳でも他に突出した才能があるわけでもない貴方が行動したところで、劇的な変化は生まれない。けれど、貴方はそれを私に話した。相談という形で。私はその選択を誉めてあげるわよ、イサギ。貴方は私との繋がりを上手く利用しようとしてるわ」
利用……しようとしてるんだろうか、俺は。俺が、あのベロニカさんを。言い方によってはそうかもしれないけど。
「ちょっと語弊があるので訂正お願いします。俺はベロニカさんを利用しようって気はないです。あわよくば助けてくれないかなー、くらいの下心で『お願い』してるんです」
「『お願い』ねぇ」
ベロニカさんはくつくつと笑って薬を小瓶に詰めていく。
「そうねぇ。召し使いがモヤモヤしっぱなしで使えなくなるのはいただけないし、少しでしゃばろうかしら」
「おおおマジですか!」
「明日、私もマクライエン邸へ行くわ。うちの召し使いが私の名前使って屋敷に上がり込んだことも謝らなければいけないしね」
「その件は本当に申し訳ないです」
そうだった。利用してんじゃん、ベロニカさんの名前。利用しちゃったよ。
「ちょうどいいから、私の『誓約』を見せてあげる」
明日はベロニカさんとディックさん宅にお邪魔します。
……波乱の予感?




