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魔女ベロニカの無能な召し使い  作者: にやな
イサギとエルフの事情
18/27

姉弟ではなく本当に兄妹でした。

(おーいファーちゃん聞こえてる?)


(……)


(ファーちゃん?)


(……)


(ファーくんごめんね、そんなに傷付いてたなんて俺、思わなくて)


(違うっ!無視してただけだ!)


女の子扱いが気に食わないのかと思ったが、まさにそうだった。でも最後まで無視できないあたり、まだまだ甘いな。

念話でファーニルに状況を報告し、こちらに来て貰うことにした。


「ディックさん、ファーニルをフィリンちゃんに会わせてやってくれませんか。ヘタレな兄貴ながら、頑張ってここまで探しに来た奴なんで」


「それは是非とも。フィリンも随分気落ちしていたから、寧ろこちらからお願いしたい」


二人で席を立ち玄関前で待っているファーニルを迎えに行く。少し緊張した面持ちで俺たちの前に立ったファーニルは、ディックさんの顔をじっと見つめた。


「君が、フィリンのお兄さんだね」


「……ファーニルだ。妹は?」


「上にいる、案内しよう。それと、この屋敷の者は私が信用した者しかいない、フードをとっても大丈夫だよ」


そう言われてファーニルはフードをとった。フードをとったファーニルの顔を見るのは、初めて会った時以来だ。素直に従ったということは、ファーニルなりにディックさんの言葉を信用するということなのだろう。


階段を上がり、2階の奥の部屋。その扉を開けると、俺のモヤモヤの原因になった緑色のドレスを纏った綺麗なエルフの女性がいた。


「兄さん……?」


「フィリン!」


「兄さんっ!」


駆け出したファーニルがフィリンを抱き締めた。身長がフィリンの方が高いのが気になってしまい、どう見ても弟にしか見えない。しかも、ファーニルの方から走ってったもんね。


てか、


「うわぁ、本当にお兄ちゃんだったかぁ」


フィリンが兄さんと呼ぶまでイマイチ信じられなかった。信じたとしても物凄い違和感しか残らないけど。


俺の声を聞いたファーニルが振り返り、今にも泣きそうな顔で睨んできた。


「そんな顔で睨まれたって迫力ないんだからねファーちゃん。文句があるなら口で言おうかファーちゃん」


「張り倒すぞ!?」


「はいはい。ほら二人は感動の再会してて。その間に俺はディックさんから話聞いちゃうから」


フィリンちゃんがタイミングよく遅れて泣き出してくれたため、ファーニルの意識はフィリンちゃんに戻った。それを少しホッとしたように見るディックさんを、俺は隣から見ていた。




エルフ兄妹が無事の再会を喜んでいる間、俺はこうなった経緯を聞いた。


フィリンちゃんは3週間ほど前に狩りに遇い、奴隷商に捕まってしまった。それからすぐにケイブルグラムに運ばれた。商品になるため傷つけられはしなかったが、首輪をつけられた。これは魔抗石を埋め込まれたもので、これを身につけていると魔力を使おうとしても一部が吸収され流れを乱されてしまい、魔法の使用を妨害されてしまうらしい。一見、細かい彫刻が施されたオシャレな首輪にしかみえないが、とんでもないものなのだ。それがあるせいでフィリンちゃんは魔法が使えず、縛られて売りに出された。

レア中のレアということで公には売られず、秘密裏に貴族に接触し買い手を探して1日。

そこからが不幸中の幸い、いち早く情報を仕入れたディックさんが買い取ったのだ。最初こそ怯えきってディックさんを睨んでいたフィリンちゃんだったが、彼は指一本たりとも彼女に触れることはなかったし、彼女に対して優しく話し掛けるのみだった。

綺麗なドレスを与えられ、美味しい食事に自分に触れてこない買い手。買い取られて3日、フィリンちゃんはやっと口を開いた。何処の生まれで、どうやってここに売られたかを。そして、駄目元で解放して欲しいとも。

それを聞いてディックさんも答えた。その首輪がある限り、解放したところですぐに捕まってしまうだろうと。首輪は奴隷が逃げてもすぐに連れ戻せるように作られたものでもあり、鍵を持っていなければ外せない。鍵を要求したが渡されたものがその首輪と合わず、外せなかったことも。その奴隷商はディックさんが解放を目的に買い取ったことを察しでもしたんだろう。逃がしたとしても、また捕まえて違うところに売ればいいとでも考えたんだろう。

ディックさんから話を聞いたフィリンちゃんは、消息不明な奴隷商から鍵を奪うまでここに置いてもらえるように頼んだそう。


「だからディック様には感謝しているんです。ただ逃がすためだけに大金を叩いて私を助けようとしてくれていること、今も忙しいお仕事の合間に奴隷商の情報をかき集めてくれていることも、私は知っています。もし、私が無事に村に帰ることが出来たとしても、そのせいで村の場所が知られたりしたら今まで以上に犠牲者が出てしまいます」


落ち着いたフィリンちゃんがしっかりと落ち着いた口調で話してくれた。ファーニルの妹だからってちゃん付けしてたけど、雰囲気は完全に俺より大人だ。お姉さんだ。


そっか、あの首輪はGPSのような機能もあるようだ。いくらエルフが強い種族だとしてもこんな卑怯なやり方されたら打つ手も限られてくるんだろうな。


「奴隷商のメンバーには首輪の位置を関知するために魔術師が複数います。恐らく、少なくとも5人は」


「よくそこまでの人数を集めたな。そいつらは僕より強いのか?」


「いえ、魔力保有量も魔法も、兄さんの方が確実に上です。でも、魔術師たちは殆ど戦闘には出てきません。やるのは狩りのために罠を張ったり、首輪の監視だけのようでした。狩りには専門の部隊がいるようで」


「じゃあフィリンちゃんはその専門の部隊に捕まったの?それって、傭兵ギルドにいるおっさん達みたいにごっつい奴等?」


「そうですね、人間の中では体格はいい方だと思います。……すみません、知っている情報が少なくてメンバーの大まかな人数すら分からなくて」


「いやいや、状況が状況だもん。寧ろそこまで観察出来てたことに吃驚だわ。俺なら大人しく出来なくてぼこぼこにされそうだし」


「……目に浮かぶようだな」


ファーちゃん酷ぇ。早くも俺のキャラを把握しやがって。嬉しくねぇぞこにやろう。


とにかく、問題は首輪らしい。これさえ取れれば村に帰るのは簡単になるだろう。だが、魔力を吸収する魔抗石。勿論、首輪に魔法を使ったところで吸収されて終わりだ。凄腕の剣士とかなら金属の首輪も切れたり……するかは分からないけど、如何せん場所がな、首だから危険すぎる。

鍵で外すのが一番手っ取り早くて確実なんだろうけど、どうもただの鍵ではない。鍵に魔抗石と対になる魔石が嵌め込まれており、その魔力を魔抗石に吸収させないと外れない仕組みになっているそうだ。ただのピッキングではどうにもならない理由がこれだ。


さてさて、難しくなってきやがった。どうしたもんかね。




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