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魔女ベロニカの無能な召し使い  作者: にやな
イサギと初めまして異世界
1/27

ヤミ金の取り立てはお断りしています。

「借金踏み倒して私からトンヅラなんて、いい度胸してるじゃない」


深みのあるワインレッドの、腰まである長髪に、猛獣を思わせるような金色の瞳。更には男性である俺より上に位置する顔。恐らく180センチ近くあるであろう高い身長だが、女性らしいスレンダーな体型。威圧感のある美女だ。


物凄い存在感を放つこの見知らぬ女性は、俺が一人暮らししているマンションの一室でテレビを見ているとき、突然現れた。


現れた、と言っても玄関や窓から侵入してきた訳ではない。玄関のドアは二重ロックされているし、窓から入るにしてもここは地上12階の角部屋。ベランダは隣の部屋とは独立しており、2メートル程の空間が空いている。跳び移るなんてことは映画の主人公にしか出来ないだろう。


しかし彼女は現れた。玄関も窓も締まっているこの部屋に。声を掛けるまで俺に気づかれずに。


偉そうに腕を組み、未だソファーで呆然と間抜け顔を晒しているであろう俺を見下ろしている。


いろいろ言いたいことはあるが、取り敢えずは


「あの、靴脱いでもらえます?」


「密室に急に現れたんだからもっと他にリアクションないわけ!?」


だって土足で入ってきてるんだよ。彼女は見るからに日本人ではないけれど、日本では基本、家には靴を脱いで入るのが常識なんです。


ぷんすかしながらそれでも靴を脱いで、底が床に付かないように倒して置いてくれる辺り、案外常識のある人なのかもしれない。


靴を脱いで、今度は手を腰に当てた彼女。あんなやりとりをしたのに鋭い目は変わらず俺を見下ろしている。


「さて。貴方の借金の利子はこの100年で増えに増えまくって、もう貴方が一生を懸けても払えない額まで膨れ上がった。よって私はお金での返済ではなく、貴方の『時間』でもって返済してもらうことにした」


何やら怒っている様子だが、ちょっと待て。まだ未成年の俺が借金?しかも100年分の利子付き?何の話ですかお姉さん。そもそも金なんて借りた覚えはないし。新しいヤミ金の取り立てですか、それとも詐欺ですか?俺が生まれる前の利子も吹っ掛けるとか斬新ですね、流行るのかな。


「ヤミ金の取り立てでも詐欺でもないわよ」


「ちょ、勝手に心の中読まないでくださいよ」


「読みたくて読んだ訳じゃないわよ!駄々漏れで読めちゃったの!」


なんてこった。このお姉さん、俺の心が読めるらしい。伸長にしてはちょっと胸が足りなくないですか?とか安易に考えたらあの恐ろしい眼光がビームか何かになって、俺死ぬかもしれない。


「本当に殺してあげてもいいわよ。お望みとあらば目からビームくらい出して貴方の眉間貫いてあげる」


「うわぁ、ホントにそれ出来そうな眼光ですねすみませんでしたごめんなさい」


本当に目からビームが出るんじゃないかというあり得ない恐怖に駆られ、ソファーの上で土下座。


「相っ変わらずの減らず口ね。黙っていれば綺麗な人形みたいなのに、口を開いた途端に残念」


「初対面のお姉さんから残念の一言頂きました。俺ちゃん10のダメージで戦闘不能」


「どんだけ雑魚いステータスしてんのよ」


お姉さんの口からステータスの言葉が。さては結構ゲームとかしちゃう人だな。見た目のスーパーモデルさを裏切ってオタク趣味で、その美貌をフル活用してコスプレとかしちゃって「神降臨!!」とか言われちゃうやつだな。


「……読めるのに言ってることが半分も理解出来ないなんて」


「今の一言でお姉さんの隠れオタク疑惑は消滅しました」


お姉さんはオタクじゃなかった、残念。もしそうだったら俺のオタクで楽しい友人を紹介してあげたのに。


「ああもう!脱線し過ぎた!話を戻すわよ!とにかく貴方はこらから一生を懸けて私に返済するの!返済方法は労力の提供、終了まで貴方の時間は私のもの」


一息で言い切った彼女は、ビシッと俺に指差す。

あれ?だから俺は別に借金なんてしてな


「いい?これから貴方は私の召し使いよ、イサギ!」


「おお、俺の名前知ってるんですね。さすがヤミ金」


「だから違うって言ってんでしょ!」


「でも俺、ほんとに金なんて借りた覚えはないよ?」


お姉さんの目が鋭さを増した。何か不味いこと言ったかな?

でも知らないものは知らないし。借りてないものは返せない。お姉さんも、なんで俺を知ってるかしらないけど、俺はお姉さんのこと知らないし。


そんな分からないことだらけで、返済しろと言われてもなぁ。


「……貴方が覚えてなくても、私は覚えてる」


唸るような低い声で喋ったお姉さんにビクリと体を揺らしてしまった。睨むような視線は変わらず俺に向けられている。そんなに睨まれる覚えもないが。


「貴方が前世で作った借金。今度こそ返済してもらうんだからね!イサギ!」


その瞬間、俺の視界は暗転。

次に目を覚ましたときには俺が住んでいたマンションの一室は跡形もなく、変わりに欧風な木製ベッドに横たわっていた。




稲波イナバ イサギ17歳。

美人で恐くて意味不明なヤミ金(仮)のお姉さんに、どうやら誘拐されたようです。

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