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第八話 『告白』

 ボクの前世は二人に認められた。

 未来が明るく、これからの行動がすべて成功してしまうような錯覚を覚えた。

 当然、この事実が認められたからと言って、なにかが劇的に変わるわけではない。


「と、いうのがボクの前世だったんだ」


 先ほどまでの話に少し補足をして、話を締めくくった。

 興味深そうに話を聴いていた二人は、ボクの前世についてどう思ったのかわからないけど、悪いことはなさそうだった。

 少し前までは親友であった人物が違う人物になってしまったようなものだから気味が悪いとは思ったけどな。


「波乱万丈な人生だったな」


「お、お疲れ様?」


 それぞれの感想を述べ、場に静かな雰囲気が戻った。

 しばし、沈黙が守られたが、ボクはあることを思い出し、ミースに尋ねた。


「そういえば、ボクの怪我はどのくらいで治るかな?」


 できるだけ早く旅に出たいけど、出来るだけ完璧な状態で旅立ちたい。

 さて、どうなのかな?


「父さんは一週間ほどで治ると言っていたぞ」


 一週間、かあ。そこまで長くはないが、すぐでもない。微妙だな。

 ヤツさえいなければ順調に旅に出れたのにな。いや、でもヤツがいなければ紅さんにも会わず、前世の記憶を取り戻すこともなかったのか。

 うーん、そう考えると、どちらが良かったのかわからないな。


「た、旅に出たかったなあ」


 ふと、ザイクがつぶやく。

 どうやらボクと同じことを思ったらしい。

 ザイクは旅をかなり楽しみにしていたからなあ。よけいに残念なのだろう。


 その時だった。


「何か店でおいしい料理を食べたくなってきたな……」


 おなかがすいたのかミースは小声でつぶやいた。

 これがすべての始まりだったとボクは思う。

 これがきっかけとなり、ボクはミースと――


「あ! じゃあ商店街でおいしいものでも食べない?」


 ボクは浮かんできたアイデアを即座に言った。

 ボクも何かおいしいものを食べたかったのだ。

 それに、ミースと食事をすると楽しいしね。


「フ、フルーツとかよさそうだね」


 ザイクまでもが乗り気で、全員の意見が一致した。

 ボクは出歩いてもよさそうなので、明後日商店街に行くことに決まった。

 順調に計画が決まっていく中でふと、ボクは思った。


 これってザイクがいなかったらデートじゃね? と。


「えー!? は、恥ずかしすぎる!?」


 二人がボクに遠慮して出て行ったこの部屋にボクの声がむなしく響いた。

 あ、ザイクはミースのお父さんの部屋に泊まらせてもらうらしいけど。

 じゃ、じゃなくてこれって軽いデートだよね。

 その場のノリに乗せられてしまったけど、相手が違ったらナンパだよね!?

 ボク、なんてことをしているんだよ!? 前世では告白も一回しかしてないしまだ返事も返ってきてないから女性経験が一回もないボクがハードルを飛び越えてナンパ!?


 お、落ち着け、ボク。落ち着くんだ。

 これでもボクはコミュニケーションが得意なのが唯一の取り柄だから女子で仲の良い友達だっていた。

 話すのは慣れているだろう?


 し、しかも当日にはザイクもいるし大丈夫だよね……。


 考えても埒が明かない。

 その結論が出たボクは当日までの日を平凡に過ごした。


 それは当日の前夜だった。


「ご、ごめん! と、虎マスクと予定が入っちゃって、い、行けなくなっちゃった!」


 あ。ま、まあ虎マスクだからしょうがないかな。

 そう思ってしまうほどザイクの声は震えていた。

 また、脅されてたりするかもね。流石にないと思うけど。

 そう言ってザイクはボクが寝ている部屋を出て行った。


 現実逃避はやめようか、ボク。

 これで明日は完璧なるデートと化したな。

 これは前世なら刺されてたかもな。今考えてみればこの世界には美形が多いし、恋愛関係にも発展しやすい。

 生々しいことを言うけど、この世界は危険が多いから死ぬ人の数も多いんだよね。だから、子を成せないような弱い遺伝子の人や、そのようなことを行わない人が先に死んで行って、今生き残っているのは遺伝子が強いか、美形なんだよね。

 これはあくまでボクの推測だけど。

 間違ってはいないと思う。


 現実から逃げるな、ボク。

 確かに前世じゃ恋愛はしてなかった。

 でもコミュニケーションが苦手ではないし、女子とも気軽に話せる。

 この世界ではよくいるレベルだが、美少女とも気軽に話していた。

 大丈夫、勇気を出すんだ、ボク。

 このままじゃあ無限ループになってしまう。


 なんとか思考を落ち着かせたボクは、眠りについた。



「ウィズっ! 起きてくれ!」


 う、うん? あ、朝かぁ。

 っ!?


「何でミースがここに!?」


 ボクは被っていた毛布から顔を出して言った。


「え? 私はこの家に住んでいるしおかしくないはずだが……」


 ミースは何もわかっていないようだ。

 首をかしげておかしいな、といいながら考えている様子はどこか馬鹿らしかった。

 失言だったね。

 えっと、かわいらしかったとでも言えばいいのかな。

 ……これだとボクの羞恥心が限界突破するな。

 とにかくミースは鈍感だというのは再確認した。


「まだ早朝だよね?」


 ボクは毛布をどけ、寝ていたベッドから身体を起こしながら尋ねた。


「それなんだがな……」


 ミースは顔をうつむかせ、なにかを言いかけた。

 どうせミースのことだから早く起きすぎたとかだろう。


「早く起きすぎてな。暇だったからウィズを起こしたんだ」


「人の睡眠を犠牲にしちゃダメだよ、うん」


 自分が少し怖くなった。予想がピンポイントで当たりすぎだよね。

 ボクはため息をついた。

 昨日は色々と考え込んでいたから、寝るのが遅くなったため、今はものすごく眠い。

 今日のことについて色々とシミュレーションをしていたら収拾がつかなくなってしまったんだよね。

 自分で言い訳をし、自分で解決する。どこか孤独感を煽られた。


「寂しいものは寂しいからな。……このくらい許してくれないか?」


 また、顔をうつむかせ、上目づかいでボクに対して許しを請うミース。

 その姿はとても可愛くて普段との差が、さらにボクを緊張させた。

 ……今日はこれを一日中やるのか。嬉しいけど恥ずかしいな。ザイクと虎マスクに監視とかされてなければいいんだけど。


「許す」


 ミースの姿を見たボクはこう答えるしか選択肢はなかった。


「ありがとう。じゃあ着替えたら行こうか……あっ!?」


 どうしたんだろうか。

 ミースは急にかわいらしい驚き声を上げると、顔を赤らめた。

 ボクは疑問に思い、訊いた。


「急にどうしたの?」


「え、えっと……」


 ミースは言うのを躊躇していた。

 何故か。そう考えていればこの後のデート、じゃなくて商店街散歩計画は少しの羞恥心で過ごせたのに。


「……今から私たちがする行動はさ、世間一般で言う、デート、ってやつじゃないか?」


 ボクにはデートと言う言葉が与える羞恥心が怖かった。

 どうやらミースも残念な事実に気づいてしまったようだ。

 カップルでもない二人がデートもどきのデート。


 どこをどう見ても恥ずかしい。

 お互いに顔を合わせて、逸らす。


 気まずい空気がボクたちの間に流れる。

 いつもはなにも感じない沈黙が今では重さが明確に感じられる。

 気まずい。この空気を壊さなければ。そう思ったボクは商店街散歩計画、略して買い物に行こう、と言った。


「買い物でも行かない?」


「買い物でも行かないか?」


 ハモった。

 お互いに、同じタイミングで同じことを発言してしまった。

 そして、再び場に気まずい空気が流れかけたときに、ボクは言った。


「デートに行こう」


 あ。やらかした。デートと言わないように意識していたら逆にそれを意識してしまい、言ってしまった。絶対に言ってはいけない言葉を。


「デ、デート……」


 ミースはただでさえ赤かった顔を真っ赤にさせ、うつむいてしまった。

 ヤバい。引かれる、下心がバレる。

 ど、どうにかして立て直さなければ。


「え、えっと、あ、ありがとな、ウィズ。こんな私とデ、デートをしてくれるなんて」


 顔を上げてミースは言った。

 どうやらミースもパニックになっているようだ。

 視線は安定しないでどこかをさまよっているし、足も小刻みに何かのリズムを刻んでいる。

 それにしても、こんな私?

 ボクはミースの自分を見下している発言にイラッとした。

 前世のアイドルと比べても人気になりそうな、可愛い顔つきに芯の通っているまっすぐな心。穢れのない純粋な気持ちをぶつけることができる精神。


「ミースは可愛いよ」


 ボクは思わず言ってしまった。

 頭の中には、ここからの発言はすべて後になって後悔する、ヤバい、と危険信号を出しているが、それでもミースの発言は否定したかった。


「まっすぐに人を心配してくれるし、常に全力で物事に取り組んでいる。当然失敗もするけど、それを次の成功への道にしてる」


 ここまで言ったら止められなかった。

 今までミースを想ってきたこと、それをすべて伝えたかった。

 ミースは真剣な表情でボクの話を聴いてくれていた。その顔にはほんの少し、赤みがかかっていたが。

 こんな時にもボクを受け入れてくれるのも、大好きだ。


 今までの想いをすべて伝える。

 ボクはそれだけを思い、話を続けた。


「少し前からボクの面倒を見てくれた。時々笑ってくれたよね。笑ってくれた時は本当にうれしかったよ」


「――ウィズ」


「昔から今も、ボクの想いは変わらないよ」


「――ウィズっ」


「ミース。ボクは君のことが――」


「ウィズっ!!」


 ボクは、ミースの叫びを聞きながらも思った。

 このまま言葉を続けていいかと。

 しかし、これは誰も止められない。

 いや。


 ボクの想いは誰にも邪魔させない。


「大好きだ。愛してる」


 ボクは、長年言えなかった想いをついに、彼女に、愛おしい彼女に伝えた。


「ボクと付き合ってください」


 ボクだってこんなシチュエーションで、告白をしようなんて思わなかった。

 でも、いいじゃないか。


 なにが起こるかなんて生きてる間でわからないんだから。

 ボクの格好がパジャマで、朝早くても、何が悪いんだ?

やきもち回です。

そのうち手直しします。

急展開で申し訳ないです。

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