第一話 『旅の準備』
昂った気持ちを落ち着かせてから、ボクとザイクは商店街に向かった。
学園都市の商店街は生活用品、娯楽屋、武器屋などが揃っていて、ほとんどの用事がここのみで済むようになっている。
今回ボクたちの目玉商品は、旅に役立つ便利グッズ、回復アイテム、装備品の三つ。
ボクたちはまず、装備品を決めることにした。
特に理由はないけど。
装備品は大まかに、武器、防具、アクセサリーと別れていて、どれも専門店があるため、基本は専門店を全て周って買うことになる。
早速ボクたちは防具の専門店に向かった。
ボクは基本、遠くから狙撃のみという戦闘スタイルなので、動きやすい軽装の服を買おうと思っている。
ザイクはボクを守らないといけないので、それなりに堅い装備が必要だけど、スキルのおかげで、重量のあるものは必要ないようで、軽めの鎧を買うことができそうだ。
「いらっしゃいませー!」
建てられてからかなり月日が経っていると思われる扉を開けると、この店の看板娘らしき娘の元気な声が耳に入る。
ボクは周りに誰かいるか確認するために、少し周りを見回したが、店内にはほかの人物は見当たなかったので、客はボクたちだけ、ということが分かった。
年が同じくらいに見えたからか、話しかけやすそうだったかはわからないけど、看板娘は笑みを浮かべながらボクたちに声をかけた。
「本日はどのようなご用件でございますかー?」
その様子を見てボクは早めに装備品を決めることを決意した。
あまり長く話してもいいことないしね。
「じゃあ、ボクには出来るだけ軽装の動きやすい服を、こっちには、重すぎない程度の鎧をお願いね」
初めて会う人にはそれなりの礼儀と猫かぶりが重要だと思う。
第一印象は結構大事だと思う。
その心構えを忘れず、ボクは軽い笑みを浮かべて答えた。
今の状況を客観的にみると、二人の女性が互いに笑みを浮かべていることになる。どこか怖いな。
「はい! では少々お待ちください!」
彼女は、ボク達に合う防具を探しに店の奥に入っていった。
「……腹黒」
既視感を感じた。
適当に店に並んでいた防具を眺めていると、店の奥から彼女がやってきた。
「お待たせいたしましたー! まず、……あ。す、すみません! お名前を訊かせていただいてもよろしいでしょうか?」
看板娘は意外とドジだった。
なんとか名前を呼ばないで接客をする方法でも考えておいたらよかったのにね。
あなた様、とか。やっぱ名前を呼ばずにというのは無理かな。
「鎧を頼んだ方がザイク。ボクがウィズだよ」
優しげな笑みを浮かべながらボクは問いに答えた。
何回笑っているのだろう、ボクは。ここまでだと虚しくなってくるな。
ボクの隣にいるザイクがジト目でボクを見ていたので、きっと、ボクの内面は現れていなかったのだと思う。
まあ、愛嬌を振りまいても損はしないし、我慢しよう。
「ありがとうございます! では、ザイク様から合わせますね」
合わせる、というのは、装備を決めることだ。
装備を決めるのには少し時間がかかったので結果だけ言うと、ザイクは、銀色の魔法鎧となった。
魔法鎧、というのは、簡単に説明すると、魔法をかけて加護を付与した鎧のことだ、確か、だけど。
ザイクの魔法鎧の付与効果(魔法の効果のことを言う)は、自動修復、重さ軽減、操作性アップの三つ。……結構高かった。
ボクは、白のローブに、青の縦線少しが入った、服だ。
このローブにも付与効果があって、自動クリーニング、移動速度アップである。
そして、このローブには特殊効果が付与されている。
――それは。
『永遠の純白』という。
効果は、『このローブは汚れない』だ。
うん、かなりどうでもいい効果だね。
値段は特殊効果がついている割には安かった。
ザイクのと比べると、桁が一桁も違った。
少し悲しくなりながらも、ボクはローブをしまった。
そして次に、ボクたちは武器屋に向かった。
防具屋と比べると比較的新しい扉を開くと、武器屋の中が見えた。それと同時に背の低く幼い少女が……っ!?
「逃げてザイク!!」
ほぼ反射でボクは叫んだ。
「え? あ、あぁ。了解!」
ザイクはあきれながらも、武器屋に背を向けて駆け出した。
少し遅れてボクも外へと駆け出した。
後ろからは、少し遅れて身長の低い少女が走ってくる。
「? ウィズとザイク……だと? あ! ま、まてっ!!」
舌足らずではないけど、幼い少女の声が背中で聞こえた。
ちっ、気付かれたか。
「っ!」
……実はボクってドジなんだよね。その事実を裏付けるように、ボクはドジッ娘ですらも顔を真っ青にするくらいの勢いで、すっ転んだ。
慣れてるからなんとか受け身には成功したけど……ヤツに追いつかれてしまった。
ヤツはボクを見て、にっこりと笑い、言った。
「捕まえたぞっ! ウィズっ!」
あー! ボクのドジ!
ドジッ娘イコール可愛い、なんて等式はボクには成り立たないのに!
しかもボクは男(の娘)だから、ドジッ『娘』じゃなくて、ドジッ『子』だしね。
……じゃなくて、落ち着け、ボク。
ボクがパニックに陥っていると、ヤツは首をかしげて言った。
「……落ち着いた、のか? それはどうでもいいか。ということで、ウィズ! 私を冒険に連れていってくれ!」
向日葵が極寒の地でも咲いてしまいそうなほどの笑みを浮かべる彼女の名は『ルフエル・ミース』だ。ボクはミースと呼んでいる。
ああ、やっちゃった。
「勝負は私の勝ちだから、連れていってくれるよな、ウィズ?」
ミースは、勝ち誇ったようにボクに言った。
――彼女は、少し前にボクたちの冒険に着いていきたい、といって駄々をこねた。
どうしても抑えきれなくなったので、しょうがないから『ボクを見つけて、捕まえたらいいよ』と口約束をして、何とかその場を逃れたんだけど。
まさか本当に捕まえられるとは思わなかった。
一応、学園で『治療終了』なんて、たいそうな二つ名を貰うだけの実力はあるから、決して油断はしてなかったんだけどな。
そこは、ミースの実力だね。あと、ボクの油断もあったな。
ボクは自分にあきれながら、言った。
「……しょうがないなぁ……いいよ」
「やったあー!!」
疲れたように言うボクに対して、元気いっぱいにはしゃぐミース。
完全な反比例だった。はぁ、これからが心配だなぁ。
ボク、大丈夫かな。
「よ、よかったの?」
不安そうに、って、ザイクはいつも不安そうだったね。
そう問いかけてくるザイクに、ボクは諦めたように答えた。
「自分で誓った約束は絶対守るものだよ」
なんかいいこと言ったなぁ。ま、どうでもいいや。
どちらにしろボクがやらかしたことだし。
もう、切り替えないとね。
ん? 何かを忘れているような。
あ、武器を選ばないと。
そういえばミースは準備できてるのかな、そう思ったボクはミースに問いかけた。
「ミースは旅の準備出来てる?」
「完璧だっ!」
思い出してみれば一ヶ月前から旅の支度をしてたんだよね、ミースは。
はぁ。準備万端すぎるって。
……まさかこの展開は予想済みだったのかもしれない。
あんまり考えすぎてもよくないよね。気にしない、気にしないっと。
「あ、あの……ぶ、武器は?」
あ。また忘れてた。
話に集中しないとね。
「ごめんごめん。忘れてた」
ボクは、先ほどと同じように、ザイクにほほ笑んだ。
「……ウィズ」
ジト目で軽く睨まれてしまった。
けど、ザイクの頬は少し赤くなっていた。
「……うわー。ザイクが腐ってるー」
「お、俺は腐ってないっ!」
かなり強い否定だった。
この状態のザイクを攻撃するわけにもいけないので、ボクは軽く流しておいた。
「じょーだんだよっ」
ザイクも自分が取り乱していることに気付いたのか、深呼吸をして自分を落ち着かせていた。
「ん? よくわからないが武器はどうするんだ?」
空気を読めなんて、まだミースには求めすぎだね。
「話が脱線しすぎたね。ごめん。じゃあ急だけど今までの戦闘から考えると、ボクの武器は弓か槍。ザイクは長剣。ミースは杖。これでいい?」
とりあえず、話を進めるために、現状をまとめてみた。
二人の顔を見ると、納得したようにうなずいていた。
「じゃあ……いいかな?」
ボクは念のために、もう一度二人に問いかけた。
「う、うん」
「ああ」
ミースはもう杖を買っていたので、この後ボクとザイクは自分たちの武器を選んだ。
ボクの武器は、弓矢も買わないといけないので、よけいに時間がかかった。
「ふう。武器を選ぶだけでも結構時間かかったね」
武器を選び終わったボクはそうつぶやいた。
「で、でも! いい武器が選べたね!」
ボクの言葉に対してザイクは興奮しながらそう言った。
ザイクは笑っていて嬉しそうだな。
「……やはり私は先に選んでおいて正解だったな」
そんなボクたちを見てミースは小さく言った。
確かにボクとザイクだけでこれだけの時間がかかったから、それに加えてミースもいたらものすごい時間がかかっていたんだろうな。
次に、ボクたちはアクセサリー屋に行き、アクセサリーを選んだ。アクセサリーはすぐに決まったので、回復アイテムや旅の便利グッズを選びに、アイテム屋に向かうことにした。
あまり投稿に間が開かないよう、気を付けます。




