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ブラッディスキル ~出血多忙な旅人たちの冒険譚~  作者: 独りっ子
第一章 学園都市にて

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第十八話 『彼女の処遇』

今日の推敲より明日の投稿。とばかりの荒文すみません。

短いのは、微妙に区切りが悪くなってしまうからです。次は頑張ります!

「奴隷……わかりました」


「ウィ、ウィズ! 何を言っているんだ!? ど、奴隷だなんて……」


 あ。また勘違いさせるように言っちゃったな。まあ、間違ってはいないんだけどさ。


「冗談だよ。……さて、暗殺者さん。君はこれからどうしたい?」


 ボクの問いにうたがわしげな目を向けるが、しっかりと答えた。


「家族のもとに帰りたいです」


 なんだ、しっかり喋れるじゃないか。彼女の真っ直ぐな目を見つめながら、ボクは軽々しく言った。


「家族が無事だという保証はあるの? 居場所はわかってるの? お金はあるの?」


 彼女を心配させるような言葉を軽々しく吐いた。一つ目については大丈夫だと思うけど、残りはどうかな。いや、居場所も多分大丈夫かな。彼女は家族のことについてほとんど漏らしていないはずだから、狙われないかな。最後は……多分大変なんじゃないかな。お金があったらこんなことやらないし。好きでやってるならいいけど。さっきの動きからするに、実戦経験はあんまりない、つまりこの業界に身を落としたのも割と最近ってことかな。


 いや、わからないけどね。実際はどうなんだろう。ボクは彼女に目を向けた。


「……」


 彼女は震えていた。視線を地面に向け、自分の身体を抱きしめて。あれ、僕そこまでひどいこと言ったかな。この現状をわかっているか確認しただけなのに。現状把握能力が備わってないのかな。ただの推測だけでなんとなくわかっちゃうのに、本人がわかってないなんて困るな。とりあえず、今までどのくらい人殺しをしたのかな。その数でなんとなくわかりそうだけど。


「今まで殺しをしたことは?」


 ボクの問いに、彼女は顔を上げて小さくつぶやいた。


「……り」


「え? 何人?」


 小さすぎて聞こえなかったので、聞き返した。二桁いっているのかな。


「一人……です」


「えっ」


 ひ、一人?


「一人って……これのことだよね?」


 そう言いながら、ボクは人差し指だけを立てて彼女に見せる。彼女は横目でボクを見て、小さく小さくうなずいた。そうか、一人かあ。まあでも……彼女の様子を見るに納得かな。


「戦闘のセンスはずば抜けているけど、経験はほとんどない。殺した一人は復讐の相手および弱っている相手で、本格的な暗殺は今日が初めてで成功したら家族を養うだけのお金が入る予定だった、ってとこかな?」


 驚いている彼女の様子を見る限り、あながち間違ってなさそうだね。センスがある人って、割と羨ましいな。まあ、経験がないと何事も失敗しやすいんだけどさ。というか彼女、生活はどうするつもりだろう。日常生活を送るには衣食住が必要だしね。彼女に足りてないのは……食べ物と住まいかな? 両方ともお金があれば何とかなるんだけどな。いや、衣もお金が必要か。食べ物は一晩くらいなら何とかしてあげられるけどね。


「はい。そう……です。……私はこれからどうすればいいのでしょう……?」


 彼女のすがるような言葉に、ボクは黙って空を仰いだ。彼女をどうするか。ボクたちの旅には連れて行けない。ボクや、ミース、ザイクの家に置いてもらうわけにもいけない。しかも、無一文と来た。さて、どうするか。


 まず、働く場所の確保と住居の確保からだよなあ。


「君はこれからどうしたい?」


 できるだけ、彼女の望む環境に整えてあげたいんだけどな。さて、どうかな。


 ボクの問いに彼女は顔をうつむかせて悩んでいる様子だったが、しばらくするとボクの方を遠慮がちに見た。そして言った。


「私は……普通の女の子になりたいです」


「じゃあ、そう言った関係の仕事を探して」


 おくよ、と笑顔で言い切ろうとしたが、彼女は小さく首を横にふった。


「でも私は! ……普通の女の子になれませんよ……戦うことしかできない、ただの暗殺者ですから……」


 うーん。何かイラつく言い方だなあ。もうちょっと、自分で新たな道を作ろう、なんて思わないのかな。まあ、それをどうにかさせるのが今のボクのやるべきことかな。


「じゃあ、戦うことも、助けることもできる仕事でいいかな?」


 ボクは有無を言わせない、とばかりに笑顔で彼女に訊いた。彼女はしっかりとは理解していないようだったが、かすかにうなずいた。


 戦うことを善いこと(・・・・)にする。戦うイコール敵を倒す。敵を倒す、ということは誰かを守ることにつながる。誰かを守る仕事といえば、警備や見張り。それに加えて家事などをする職業……


 メイドだ!


 彼女は女だし、戦うこともできるし、家事をしたいという決意がある。メイドにぴったりじゃないか。身辺警護や秘書もできると思うしね。ただ、信頼がないとできない仕事だから、これから日々地道に働いていくことが大事になるけどね。


「そんな仕事あるわけ……」


 またもや舌を向いている彼女に、ドヤ顔を決めて言った。


「戦うメイドさん、なんてどう?」


「え?」


 一瞬こちらを疑うような目を向けた彼女だったが、すぐに無表情に戻った。無表情になる前、一瞬顔が青くなったような気がしたけど、多分見間違いだよね。


「家事は練習してできるようにならないといけないし、信頼のために長年必死で働かないといけないけど、普通の女の子にも、戦う女の子にもなれる、万能な仕事だと思うよ」


 ボクは笑顔で言い切った。すごく面白そうだし、なにより彼女の希望を忠実に守っている。問題はどこに雇ってもらうかだけど……まあ、あてはあるといえばあるし、ここは大船に乗った気持ちでいてもらわないと。


「メイド……いいかもしれません」


 お。ちょっと乗り気になってきたかな?


「じゃあ……やる?」


「……はい」


 よし、これで決まりかな。


「……どういうことだ?」


 あ。ミースのこと忘れてた。結構早く決めちゃったからよくわからないことになってそうだな。ボクは、ミースがわかるよう、丁寧に今までの流れを説明してあげた。


「な、なるほど。それでは、仕事場が決まるまで、彼女の寝床や食事などはどうするんだ?」


「うーん、それは残念だけど彼女に頑張ってもらうしかないかな」


 ボクの言葉に、ミースは大きな声で告げた。


「では、私の家に泊まってもらう! ……というのはどうだろうか」


 え!? ま、まあそれが一番いいけどさ。……いや、ミースがいいって言うならいっか。


「じゃあ、そういうことにしようか」


「私に感謝するんだぞ!」


 彼女は戸惑っていたようだが、悪くない結末になったとだけ確認すると笑顔で言った。


「ありがとうございます!」

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