第十一話 『スキル屋』
十話突破しました。
更新が空いてしまってすみません。
3000PV突破&UA1000突破感謝です。それに30ポイント突破も。
だいぶ前ですが、
「さて、どこに行く?」
ボクの問いにミースはうーん、とつぶやきながらスキル屋の方角を指さした。
「スキル屋に行くの?」
ボクが訊くと、ミースは元気に答えた。
「ああ! もしかしたら新しく習得できるスキルが増えているかもしれないからな。それに、お告げがある可能性もないとは言えないからな」
お告げ、かあ。
お告げとはスキル屋を運営している不思議なお方が来店者にナニカを告げる、というよくわからないことなんだよね。
お告げをされる可能性は限りなく低いし、内容もいいこととは限らない。でも、もしかしたらなにかいいことがあるかも、と期待する人が聴きに来るんだよね。もはや名物と言っても過言ではないと思う。なんと的中率はほぼ百パーセント。
お告げの内容は、結婚相手の予言、ある人物の死、習得可能スキルの増減、固有スキルの発言などさまざまだ。特に最後のお告げは人々が求めるものだ。このお告げがされた者は英雄と呼ばれるような有名な人物となる。
まあ、逆に言えば英雄などの有名な人物はほとんど固有スキルを持っている、ということだ。
つまりお告げイコール占いのようなもの、ということかな。説明が難しいな。
……おっと、考えすぎたね。沈黙の時間が長かった気がする。
「じゃあ、いこっか!」
ボクの言葉にミースは顔を縦に振ることで答えてくれた。ってそう何回も振らなくても大丈夫だって。元気な娘だな、娘じゃないけどね。彼女だよ、彼女。彼女って恥ずかしいな、照れるし考えるのをやめようか。
「ああ!」
それにしても、ミースは本当に元気だね。今の返事もこう、身体をぴょんぴょんと跳ねさせて言っているし。
ボクたちは手をつないでスキル屋へと向かった。
ゆっくりと五分ほどかけてたどり着いたが、やはりいつみてもスキル屋は衝撃的な外観だなあ。だって入口が異空間に繋がっているんだもの。木で造られてはいるものの、ところどころが折れている支柱でなんとか支えられている、それがスキル屋だ。
ぼろいと断言できる外装とは裏腹に店内は近未来風に創られている。元の世界では見たこともないような鉱石がちりばめられている店内は来店者を魅了させる。と、言われている。
入店したボクらはその光景を目の当たりにしていた。
「いらっしゃい」
しわがれた老人の声が耳に入った。それはこの店の店主の声だった。店主はお告げで選ばれた者がなるらしい。この店主も店に来たら勝手に店主に任命されたらしいね。ご苦労なことで。選ばれたら強制的にスキル屋の秘密を知らされ、店を継ぐことになるらしい。
歴代の店主はそこまでしか話さないから、そこまでしかわからないけど。
「スキル、新しく使えるのはありますか?」
ボクの代わりにミースが敬語で店主に確認してくれた。まあ、新しく習得できるスキルがあれば店主が教えてくれるらしいけど……。
無言、ということは特にないみたいだね、残念。
しばし沈黙が訪れたのを確認したミースは軽く肩を落とし、礼をして店を去ることにしたようだ。
「ふむ……」
ん? 店主が何かつぶやいたようだけど……まあ、いっか。特に何もないならもうここに用はないし。
「失礼しましたー」
ボクは礼儀良くそう言って店を去った。いや、去ろうとしたのだ。店の扉に手をかけた瞬間、ボクの背後からしわがれたかすれ声がかかった。
「お主は今後古来からの友人と再会するだろう」
「え?」
古来からの、友人? 言葉遣いが変な気もするけど、そんなことは気にしていられない。どういうことなんだ? 答えを求めて再度店主の方を見るが、店主は何も言葉を話してくれなかった。
突然店主が発した謎のお告げ。古来からの友人、ということはボクの昔からの友人ということだろう。ボクの昔からの友人と言うと、ミースとザイクくらいしか思い浮かばないな。うーん、誰のことだろうかな。
「どうした、ウィズ?」
立ち止まって店から出てこないボクを不思議に思ったのか、ミースは店の扉を開けて声をかけてきた。誤魔化そうか、いやいや、隠す必要はないよね。と、いうかなあ。この世界のスキル屋の前の光景が見えているのに、扉の隙間に微妙な謎の空間ができているのには違和感を感じるな。
「お告げをもらったんだ」
店から出たボクは単刀直入に告げた。ボクの言葉に目を見開いたミースは大声で叫んだ。
「どんなお告げをもらったんだ!?」
割と冷静な部分があるミースでもこのあわってぷりだ。一般人がどれほど驚くか、大体理解してもらえただろうか。
ミースが詰め寄ってくるのを抑えながら、ボクは説明を始めた。と、言っても説明するほど大層なお告げをもらっていないんだけどね。
「古来からの友人と会うだろう、っていうお告げをもらったよ」
ボクの言葉にミースはへー、と、どこか安心したようにつぶやいた。なんでかはわからないけど……まあ、安心してくれたならいいや。あ、それと、蛇足かもしれない一言をつけたしておこうか。
「多分前世の友人じゃないかな」
少し考えていたらその結論に達した。まあ、それくらいしかないしね。楽しみと言えば楽しみだけど、ヤツが転生、なんてパターンだったら絶対に殺すよ。
「っ!?」
えっ、なんかものすごく驚いてるんだけど、そこまで衝撃的なことかな? ミースは無言でボクに詰め寄ってきた。それもジト目で。確かにこのミースも可愛いけどさ、なんか無言の圧力ってやつが怖いかな。やっぱ可愛いから放置で。
ん? なんで涙目に……?
「……ウィズのバーカっ!」
「えっちょっと何って……あ、ご、ごめん!」
言っている途中で自らの過ちに気付いた。もしかしてさっき、前世の友人を女性と誤解された? いやいやいや、流石にそれはないか。ミースはそこまで嫉妬しないし、そんな都合よく人の心は読めないよね。
「わ、私を無視しないでくれ……」
えっ、そっちだったか。っていうか泣かないでくださいよ、本当に、ほんとに。彼女を泣かせたりしたらししょーに半殺しにさせるし、ボクの心境的にも厳しい。
「えっと、ごめんね? な、なんでもするから……あっ!」
やばい、ボクのバカ。
今、ボクは気付いた。このよくわからない展開はミースによって仕組まれた展開なのだと。なぜ気付けたのか、それは簡単だ。なんでも、とボクが言い始めた途端にミースは涙を引っ込ませ、顔を下に向けて小さく笑っていたからだ。なぜ言質を取られる前に言葉をとめなかったんだよ、ボク。多分テンションが上がっていたのだろう。じゃなくて、ど、どうしよう。
恐る恐る盗み見ると、ミースは顔を空に向けて高笑いをしていた。ミースは小さくて幼く、かわいらしい顔とは裏腹に、魔王のような漆黒の笑みを浮かべていた。
……忘れよう。
「なんでもする、そう言ったな、ウィズ?」
いやらしい笑みを浮かべて問い返すミース。可愛いけど今は気にしてる場合じゃないよね。ボクはミースに何を言われても我慢できるように、覚悟を決めた。
「私と――おはな」
恥ずかしそうに言いかけたミースを見てボクは察した。そしてこれ以上ミースを辱めないために口をふさいだ。右手で。
「わ、わかったよ」
動揺を隠そうとしたけど、流石に無理だった。多分今のボク、顔真っ赤だろうな。ミースの言葉が言葉だからね。ミースが落ち着いたのを見計らって手を離した。
しばし、沈黙が守られた。このままじゃ気まずい、そう思ったボクは発言のタイミングをうかがった。もし、これでミースと発言が被ったら更に話しづらくなるからね。その間三秒ほど。ミースが口を開こうとしていないのを確認してボクはゆっくりと口を開いた。
「ザイク達にお昼、買ってきてあげよっか」
ミースはボクの言葉にこくこくとうなずいた。その様子はとても可愛らしく、なんというか、年相応と言う感じだ。
「次はウィズがお店を案内してくれよ?」
いつもの調子を取り戻したみたいだ。不敵に笑うミースの姿を見てボクは確信した。うん、さっきのミースも可愛いけど、やっぱりいつものミースの方が安心するな。
さて、昼食かあ。どこに行くのがいいかな。スイーツのようなデザート系の店は朝行ったので満足なんだよね。というかもう無理。ここは年頃の男子としてボリュームのあるジューシーなガッツリ系の店に行こうかな。いや、待てよ? 確かにそれならボクとザイクは満足だろう。でも女子メンバーには合わないだろう。うーん、どうしようか。
そこから数分考えて出したボクの結論、それは。
「おお! いい匂いがするぞ! あのバードの肉もおいしそうだし、あのサラダもおいしそうだな!」
うん、正解だったようだ。ボクはとある友人の親が営業している定食屋だ。何の木かは忘れたけど、よく建築に使われる木材で、おしゃれに組み立てられている。親御さんのセンスが感じられるね。
昼間ながらも少し暗い落ち着いた雰囲気の店の様子に反し、はしゃいでいるミースにため息をつきながら、もう一度店内を見回した。バード、という鶏肉のような肉を焼いているおかげで店内は白い煙に包まれていた。
「さて、何を頼む?」
「んー、そうだな」
ミースは店内の煙を払い、近くのテーブルに座っていた男女が食べていたバードの丸焼きを見て、大きく言った。
「バードの丸焼き!」
店内にいた人たちの視線がミースへと集結した。しかしミースは一切気にせずに店員に目を向けて、堂々と声をかけた。
「バードの丸焼き二つください!」
……逆にボクが恥ずかしくなってくるな。いや、ここは堂々としていた方がいいのかな。どうやら周りの人も温かい目で見てくれているしね。お店の人を見てみると、そこには苦笑いしている店員さんたちがいた。
あれ、ミースってこの店に来たことがあるのかな。でもさっき聞いたときはない、って言ってたから本当に来たことがないんだろうな。
まあ、楽しいからいいかな。
「どうしたんだ、ウィズ? 顔がにやけているぞ?」
「いやあ。……幸せだな、ってふと思っただけだよ」
ミースは顔を赤らめてぼそぼそと言った。
「私も同じことを思う、ぞ? あ、ありがとな?」
ミースの恥ずかしがる様子を見ていたらからかいたくなってきたな。なんて言おうかな。うーん、よし、決めた。
「ミース可愛い」
ちょっと直球すぎたかな。多少恥ずかしかったけど、ミースの喜ぶ顔が見られたから万事解決だよね。ボクの選択は間違ってなかったようだ。
ちなみにミースがいいかけた言葉は、「お花畑に行こう」という隠語です。
意味は皆さんで想像してみてくださいね?
聞きたかったっらメッセージでどうぞ。




