観察の日 ⇒「バトルJOY魔巫女」 ニ、カイダイ
「今日は観察の日ですね」
「ええ、オネガイシマス……」
「はい了解です。じゃあいきますよー」
じー
「ウウ……」
「はい顔下げない」
じー
「トコロデ……」
「集中してくださいね」
「ハイ……」
じー
「ト、トコロデ……」
「うん」
「観察の日ッテ」
「こういう事じゃないよね」
「ハイ……」
「じゃあ何を観察するの? わたし?」
「先生、女性だったんデスネ」
「ほー、そうでしたか。しかも先生なんですね。ならそうなりましょう」
そう言って魔巫女は音もたてずに一口珈琲を啜った。肉感的な唇の隙間から白い歯がチラリと見えた。
「!!ナンカ……」
「なんか付いたね……」
そう言って魔巫女は脚を組み替えた。ジョギングが趣味の魔巫女のふくらはぎは、程よくついた筋肉と脂肪のコラボで、なんともいえない三十台女性の色香を放っている。
「うっわ……なんじゃこりゃ」
「凄いのツキマシタネ……」
「めんどくさいのが色々付いた……、『魔巫女』に突っ込む暇無く追い討ち来たわ」
「イロッポイ……」
「いや、ひどいでしょこれ。珈琲好きで、歯が真っ白か。描写されてしまえば認めるしかないわ。はぁ……」
魔巫女はそう言いながらも、激しく上下させる左手を止めない。そう、彼女はハミガキ依存症なのだ。彼女の左手には常に愛用の黄金ハブラシが握られている。
「うあああああ!」
「ヒイィ」
「絶対今とりつくろったでしょ、この描写」
「先生、そのハブラシ何事デスカ。本物の黄金ジャナイデスカ。そんな重い物動かしてたら……」
「やめろ! 言うな!」
魔巫女が振り上げた腕を間一髪で回避したタケヒコの頬に亀裂が入った。
「かまいたち現象」だ。幼少の頃より重さ10キロの黄金ハブラシで鍛え上げられた魔巫女の剛腕から繰り出されるパンチは、たとえ避けられても相手にダメージを与えるのだ!
「描写のやつ、調子のってやがる……。『与えるのだ!』 じゃないよまったく」
「タケヒコ……。僕、タケヒコだったんデスネ。 ほっぺたイタイ……」
「もう、わたし意味わからないわ。左手だけ漫画みたいな筋肉だし。八頭身バトル系の」
「しかし基本は女医さんデスネ……」
「お前もなんか設定追加されろタケヒコ! あ、最後に喋ると描写されるんだ。ほら、喋りなさい」
「……」
「……」
「…………」
「………………」
「……………………」
「……………………………………」
魔巫女はこらえきれずに、右手の珈琲をぶちまけた!
タケヒコは持ち前の動体視力でこれも素早く回避する。
だが第二第三の「珈琲ぶちまけ」がタケヒコを襲う。
これが魔巫女の特殊能力「薫~終わらない珈琲時間~」。魔巫女の右手に固定装備された珈琲の量に制限は無いのダ。
「しくしく……」
「スミマセン、ナンカ……」
「よかったね。動体視力が追加されて」
「先生も、珈琲がムゲンでオトク……いやスミマセン」
「両手塞がっちゃったよ……。左手の震動で珈琲常にこぼれ気味だし」
「ニトウリュウ」
「うるさい」