分類の有無
少し山の中を歩くと、二人は月が良く見える場所に腰を落ち着かせた。
『小夜子はなんで蛙馬に会おうとしたんだ?』隣に座る小夜子の横顔を見て聞いた。
(確かに気になる。そういえば、駅で出会った時から時折見せる小夜子の変化に気づいてはいたんだ)
小夜子は月を見つめていた。
『言いたくないなら言わなくていいんだ』新一は小夜子の視線の先を追った。
「……言わせて、ううん、言わなくちゃいけないのよ。きっと」
小夜子は膝を抱えた。
「お父さんとお母さんが事故で死んだの。それがショックで、……認めたくなくて、だから、新しい人格に逃げようとしたのよ」
小夜子は新一を見た。
「私ってバカでしょ?」
小夜子は静かに泣いた。
(バカなのは私だ)
新一は小声で私にだけ聞こえるように言った。
『助けようなんて少しも考えちゃいない…』
(……なんだと?)
次の瞬間、小夜子の震える肩を、新一は強引に抱き寄せてキスをした。
突然の出来事に小夜子は微動だに出来なかった。
我に帰った小夜子は新一を両手で突き放す。
「なんでそういうことするの!!」小夜子は涙に濡れた表情で叫んだ。
『ここまで来たんだから、期待しなかった訳じゃあないだろ?』
(お前何を言ってる!!)
「ふざけないで!!少しでも信用した私がバカだったわ!」小夜子は急いで立ち上がって、もと来た道を探した。
その後ろで新一が言った。
『待ってくれよ小夜子、愛してるんだ、あの時からずっと』新一は小夜子の肩に手をかけそのまま押し倒した。
(やめてくれ)
力関係を誇示するように小夜子の上にまたがり、あらがう小夜子に新一は歪んだ笑みを浮かべた。
(やめてくれ)
新一は小夜子を犯した。
私は何もすることが出来なかった。
あるのは自分に対しての激しい怒りと脱力感。小夜子は切り裂かれた衣服を身にまとってただ泣くだけだった。
惨劇の終焉に新一は言った。
『お前のやりたかったことを全てやってやったよ。満足だろ?』
(………)
『どうした?まだ不満かい?それなら体の自由は返した。後は好きにしてくれ』
(……ふざけるなよ!一体何がしたいんだお前は、俺の全てをめちゃくちゃにして……、
こんなことが俺のやりたかった事だと?)
『お前こそふざけるな!!俺はお前なんだ、境界線をひくなよ!』




