死越のやさしさで
新一は、彼の出来る精一杯の哀れみの表情で、小夜子の姿を見やった。
私に何が出来るだろう?
小夜子のおびえ震える背中に伝えたいことは何か。伝えられることは何か。黙って立ち去るというのもある。
……それじゃあ今までと変わらないじゃないか。
でも私に何が出来る?そもそも、何か出来るなんて考える資格が私にはないじゃないか。
なんでいつも逃げることばかり考えるんだろう。
進むことだけが正しいかどうかなんてわからない。
人生の数ある選択肢のなかの一つ。
私の求めていたもの。
………全てを打ち明けよう。
同じ高校に進学したのは偶然じゃなかったこと。中学から高校を経て、そして今に至っても、私は小夜子のストーカーだ。
結局、偶然なんて何もなかった。
再会によって蘇ったのは、忘れようとした歪んだ愛だった。小夜子をふったのは、ただ愛を確かめたかっただけなんだ。
全ては変えたい過去。
助けて欲しい。小夜子は許してくれるだろうか。
『どうしようもない奴だ。この後に及んでも、まだ、助かる気でいるのか』
(……助けてくれよ。お前と俺は一人なんだ。そうだろ?)
『………一緒にするな』
(なん…だよそれ、なぁ、見捨てるなよ。怖いんだ。怖すぎる)
『見てらんないよ。俺は消える。お前と一緒なんてごめんだからな』
これ以後、彼は二度と私の問いかけに応えることはなかった。
無様なもんだ。自分にさえ見捨てられる。
わかってたんだ。俺には先に進む資格なんてない。
だから、今回だけは許して欲しい。
「小夜子、全てを聞いてください」
たとえ、この告白が小夜子を更なる死地へ追い込むことになっても
「‥僕はあなたのストーカーでした…」
初めて語る本音。
「‥だから、あの時のことも…」
これからが真実。
偽りのフェイスはもう無い。
読みにくかったと思いますが、最後までお付き合いくださいありがとうございました。