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第7話 十年前(2) Sorella

遅れて済みませんでした!!

所で、『第5話 十年前(1) Incontro』の内容が少し足らず、考査期間の為に修正出来ていないので、内容に齟齬が生じると思いますが、今月には修正致します。

申し訳ございません。

雪華と桜華。姉妹が神崎紫蘭と出逢い、新たな名を貰ってから約半年の歳月が流れた。

この半年間、姉妹は紫蘭に『殺しの仕方』を学ばされていた。それは、自衛と言うレベルを遥かに越えた戦い方。故に、紫蘭の授業は厳しかった。

しかし、努力が思わぬ才能を開花させる事は少なくない。雪華は格闘に刃物、銃と近接戦闘の才能を、桜華は銃剣術と狙撃に関しての才能が開花した。特に、桜華の狙撃の腕は紫蘭に舌を巻かせる程の腕前になっていた。

そんな、ある日の朝の事だった。

「今日は実戦を体験して貰う。」

開口一番、何でも無い様な―――そう、余りにも自然で思わず何も考えずに頷いてしまいそうな―――口調で紫蘭は姉妹に言った。

「実戦…ですか?」

「ああ。雪華も桜華も気付いているだろう?―――戦が近付いている。決して、避ける事が出来ない戦が。」

紫蘭の言葉に姉妹は頷く。紫蘭に因って研ぎ澄まされた危機察知能力を使うまでもない。

近い内にマフィア同士の抗争が始まる。噂は、人を選ばず耳に入る物だ。

「師匠は、どちらに付かれるか、お決めになられたのですか?」

ここでは、仮令一般市民であろうと、マフィアに肩入れしなければ生きていけない。そうしなければ、稀に現れる獣や、強盗などから守って貰えないのだ。

かつて義父や義母が選んだグレー(中立)では生きていけない。その事を姉妹は、僅か一、二ヵ月で知った。二人から義両親を奪ったのは、中立を掲げる事に業を煮やしたマフィアの人間だと言う事実と共に。

「今日契約に行く積もりだ。だから、雪華と桜華には、普段の俺の仕事を代わりにやって貰う。」

姉妹を養っている紫蘭の職業は、実を言うと、姉妹にも知らされていなかった。しかし、この時代のこんな場所に、まともな職が有る訳がない。大方、口を大にしては言えない裏稼業だろうと、姉妹は確信していた。

「分かりました、師匠。何をすれば宜しいですか?」

「…二時間程前、この街に鼠が入った。数は五匹。漁りを終えた奴等は、そろそろ巣に帰る頃だが……生憎、まだ土産を渡していない。」

「土産の渡し方は?」

「内容も渡し方も雪華と桜華に全部任せる。」

接待のやり方は教えたしな、と言うと紫蘭は僅かに姉妹に笑い掛けた。

「感激して二度と戻りたくなくなる様な物を渡してくると良い。」

「…お任せ下さい。桜華、五分後には出るよ。」

「うん。」


◆◇◆◇◆◇


それから三十分程立った頃。原型を留めていない廃車が数台有る以外には何の特徴もないシャッター通り。

『来ましたよ、姉さん。』

いい加減壊れても可笑しくない旧式のインカムから、桜華の声を廃車の影で雪華は聞いた。

「作戦通りにやるよ。桜華にタイミングは任せる。」

『…了解。』

音が割れる様な質の悪いインカムの所為だけではないだろう。桜華の声は、何時もに増して固い。

無理は無いだろう。姉妹は生まれて初めて人を殺す。更に言うと、戦いの火蓋を切るのは、雪華の少し後ろの廃屋の二階に陣取る桜華なのだから。

姉妹は薄々感じ取っていた。この『実戦』が、これからも続く事を。自分達を拾ってくれた恩人でもあり師匠の神崎紫蘭の目的を。

でも、姉妹に取っては些事に過ぎなかった。路傍で苦しみながら死ぬか、醜く足掻き続けるか。短い時間とは言え、自分達で決めた事を姉妹は覆す積もりはない。

最早、引き返せない所まで足を踏み入れてしまったのだから。

『―――始めます。準備は良いですか?』

雪華は、レッグホルスターから銃とナイフを取り出す。足音は直ぐそこまで迫って来ていた。

「…良いよ。」

返事をすると同時に、狙撃銃の発砲音が響く。先頭を歩いていた男が頭から血を噴き出し、倒れた。

動揺が収まらない内に物陰から雪華は男達に襲い掛かる。

「散らば―――」

擦れ違いさまに左手に持ったナイフで頸動脈を掻き切ると、序でに右手の銃を連射し、一人を蜂の巣にする。

『姉さん、後ろです。』

「もう一人は任せる。」

廃車の影から銃を撃とうとしていた男に振り返ると同時にナイフを投擲する。木に何かを打ち込んだ様な音と銃声が木霊した。

一拍置いて、眉間にナイフを生やした男と銃弾に後頭部の大半を持って行かれた男は倒れた。

『コンプリートです。』

「そうみたいだね。」

ナイフを抜き、雪華は後ろを見る。眼に焼き付ける。

自分達がした事の有り様を。これから作り出していくであろう光景、その始まりを。

『…姉さん、帰りましょう。何時までも血塗れだと風邪を引きます。』

「そんなに酷い?」

『酷いです。』

己の姿を割れた硝子に映す。ペンキを掛けられた様な様を見て、雪華は嘆息した。

「……姉さん。」

遠慮がちな桜華の声が後ろから聞こえた。そこには、狙撃銃を背負った桜華がいた。

「私達が、やったんですよね…」

転がる五つの死体。雪華の隣で、桜華はそれを見る。雪華と同じ様に、眼に焼き付けている。

知らず知らずの内に、雪華は桜華の頭を撫でていた。絵具を拡げる様に、桜華の髪に血が付く。

「…私は猫じゃないですよ。」

「分かってる…そんな事。」

雪華は知っている。

自分が今撫でている者こそ、この世界で最も大切な自分の『妹』だと。

桜華は知っている。

自分の頭の上に手を置いている者こそ、この世界で最も大切な自分の『姉』だと。

仮令互いがその手を見えない汚れに汚したとしても、その事実は変わらない。

「桜華、帰ろうか。」

姉妹が姿を消すのに、大した時間は掛からなかった。


◆◇◆◇◆◇


「…先ずは越えた、か。」

去っていく二人の後ろ姿を見ながら、紫蘭は呟いた。

姉妹が失敗した時の為に、敢えて控えていたのだ。

―――あの姉妹を拾ったのは、偶然に過ぎない。滅多に通らない路を偶々通り、絡まれている姉妹に出逢った。

何時思い出しても酷い眼だったと思う。光こそ有った物の諦めと絶望を宿し、何時堕ちても可笑しくない眼だった。

それから半年。

今まで多くの教え子が越えられなかった壁を姉妹は越えて見せた。未だ多くの欠点は有るが、及第点だ。

紫蘭自身も掘り出し物を見つけたとは思う。故に、不安が付き纏う。

姉妹と朝話した様に、抗争―――戦の気配は日に日に濃密になっている。姉妹が、周りの人間が思うよりも速く。既に肩入れしている紫蘭には、それが分かっていた。

一度深淵から這い上がった人間は、子供であろうと強い。だが姉妹の場合は、互いの存在が有ったからだ。

一人で深淵から這い上がる事が出来るかは、分からない。でも、もし這い上がる事が出来たなら―――紫蘭はあの姉妹に、否、あの姉妹のどちらか一人(・・・・・・)に喰われる。それは、最早決まった運命だ。

「…ッ」

紫蘭は右肩に手をやる。金属特有の冷たさと固さが伝わる。

だが―――

あの姉妹を最悪の運命に巻き込ませたくはない。

一体あの姉妹が何をした?

奪われ続ける事すらも罪なのだろうか?奪われる様な物を持つ事自体が罪なのか?それを護る手段も無いのに?

だとしたら、そんな運命などゴミ以下だ。

自分が逆らうしかない。姉妹と同じ様に。逆らうのが、早いか遅いかの違いだけだ。

恐らく、今までで一番戦いだろう。余りにも無謀過ぎる。

罪滅ぼしの積もりは無い。たった二人の人間では償えない程の罪を紫蘭は重ねている。

それでも、紫蘭は抗う事に決めた。


活動報告か後書きに書いたと思いますが、現在新作の構想を練っています。

所が優柔不断な作者は、浮かんだ二つの案のどちらかを選べません。

と言う訳で、読者の皆様にお願いがございます。

面白そうだな、読みたいなと思う方の番号を書いて、投票して頂けないでしょうか。

①異世界転生も何もない、異世界人だけが出て来る戦記(最初に浮かんだ方で、粗方の設定は出来ています。…煮詰める必要大ですが。)

②少し未来の日本を舞台にした魔術学園物。(最近浮かんだ方です。かなり煮詰める必要有り。)


如何でしょうか?

これの悩みで、期末考査も手に付きません。(笑)

質問等有られましたら受け付けます。どうか、投票をお願い致します。

投票期間に付いては決めていませんが、一週間程度を考えています。反響に因って伸ばしますが…


因みに来週の更新は、期末考査の為、休ませて頂きます。大変申し訳ありません。

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