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白紙の地図と高校生のPGC 〜half red eyes〜  作者: 更級一矢
第一章 Half Red Eyes 編
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第23話 護衛最終日 〜誘い〜

世間体と言う言葉が有る。

自らの保身の為の理由に、よくよく使われる言葉だ。

そして、保身の為ならば恐らく、殆どの人間は手段を選ばない。

この学園もそうだった。


「え―――二神先生は、実家の都合で昨日退職された。此れからは副担任の僕が担任になる。改めて宜しく。」

朝のHRの空気と言う水面に、副担任がそんな言葉の石を投げ込んだ。

水面に波紋が広がる様に、水に落としたインクが広がる様に、教室は喧騒に包まれる。

だが副担任は、そんな空気を収めようともせず、暫く傍観した後、足早に教室を出て行った。

勿論、一希も雪華も、彗も傍観者である。

雪華に至っては、一希が早朝に電話で彗からの電話の内容―――護衛の依頼だ―――を伝えた為、眠そうにして居た。

「…やっぱり揉み消したか。」

小さく呟いた一希に動揺は無い。

予想した通りだった。

教職員の不祥事等、そんな物は学校に取っては害毒でしかない。

昨日のニュースでも、二神の事は『無職の男性』としか言われて居なかった。


見事に、この事件は闇に葬られた。


此れから先の未来に、この事件の真実を紐解く事が出来る人間は居ないであろう。

此れが第四都市の『完全な統治』を謳うPMCがやる事だ。

完全な統治?

当然だ。

いざとなれば、『無かった事』にするのだから。


良く晴れた空、其の水色が、何故か今日はくすんで見えた。


ノートを取る代わりに、心無しか一つ一つの行動に動揺を僅かに感じさせる教師達を観察する事、約四時間。

何時の間にか、昼休みとなって居た。

彗は弁当を食べ、一希と雪華は、購買のパンをかじる。

会話が無い三人は、他者から見ると、偶々同じ場所で食べて居る様に見えるのかも知れない。

其れ程、三人の間を漂う雰囲気は異様だった。

そんな雰囲気が何時まで続くかと思われたその時だった。

「昼食が終わったら、屋上に行きませんか?」

彗が弁当を摘む箸を、止めて言った。

「屋上ですか?」

「はい。…何だか外の空気が吸いたくて。」

其の言葉に二人は、ああ、と納得する。

二神退職の話を聞いてからの教室の空気は、三人の間を漂う雰囲気とは明らかに一線を引いて居る物の、異様と言えた。

外の空気が吸いたいと言う気持ちは、自らの身を以て体感して居る一希達には痛い程理解出来た。

「良いですね。そうしましょうか。」

雪華が同意した事で、此れからの予定が決まった。


昼食も終盤に差し掛かった時、突如雪華の携帯が震え始めた。

「あ、済みません。先に行ってて下さい。」

席を立った雪華はパンの包装をごみ箱に捨てて、教室から出て行った。

「行きましょうか、一姫さん。」

「はい。」

其の後を追うかの様に、一希と彗も教室を後にした。

一希は気付けなかった。

屋上へと誘う彗の声が、僅かに震えて居た事に。


逆瀬女子高には五つの校舎が存在する。

今日一希が彗に連れて行かれたのは、立ち入り禁止の筈の―――一希は知らなかったのだが―――北棟の屋上だった。

立ち入り禁止と言う言葉で外界から隔離された屋上には、当然人は居なかった。

一希は屋上の柵に体重を預け、都市を―――生きて行くには明らかに狭い世界を見る。

広がる町並みの奥、山の代わりに視界の奥に映るのは、巨大な灰色の隔離壁。

一希は其れの外に有るであろう『侵入者』達が住まう森林を思う。

あんな自然は、人工的な物を除けば、既に教科書の写真や記録映像位でしか見る事は出来ない。

数年前、何処かで聞いた様な言葉が蘇る。

『人類は既に滅んで居る。』と。

確かにそうかも知れない、と一希は思い、黄昏る。

だか、一希は後ろから僅かに聞こえた、ジャカ、と言う独特な―――銃器を構える音と、首筋に走る寒気をを逃さなかった。


―――ああ、やっぱりか。


そして、一希は最後の襲撃者に振り向かずに声を掛ける。


「要求は何ですか?」

「…両手を頭の後ろに組んで下さい。」


後ろでRATの銃口を一希の首に突き付けた、古手鞠彗が其処には居た。

声は、やはり震えて居た。


次話は近い内に投稿します。

多分其れが二月の間に確実にだせる物だと思います。

考査が又始まるので、勉強しないと…


詳しい期間等については、近い内に、活動報告、次話の後書きにて…


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