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白紙の地図と高校生のPGC 〜half red eyes〜  作者: 更級一矢
第一章 Half Red Eyes 編
22/83

第22話 護り手の少年

大変遅くなって申し訳有りませんでしたっ!!

二月は予定が詰まって居るので、一週間に最低一回の更新とさせて頂きます。(予定)

途中で逃亡する予定はございませんので、気長に待って居て下さい。




『二神篝にはやっぱり薬物が投与されてた。』


開口一番、電話で冷泉葵衣は言った。

「薬物?」

一希は聞き返した。

だが、帰った矢先だったので、格好は女装で、声も変わって居る事を忘れて居た。

『……もしかして、一姫ちゃん?』

葵衣の声は、僅かに楽しそうだった。

「一希だけど?」

葵衣の反応で、一希は自分の声が変わって居る事を思い出した。

「ああ、悪い。帰って来たばかりで、未だ声を元に戻して無い。」

『怪しいわね。本人かどうか確かめる為に、自分のスリーサイズか、一姫ちゃんのスリーサイズ言って。』

「どういう確かめ方だよ!?」

思わず一希は叫んだ。

『冗談よ。なら、自分か一姫ちゃんの写真携帯で送って。』

「俺の写真はともかく、一姫のはお前が只欲しいだけだよね!?」

一希を変態だの何だのと言う一姫が唯一と言っても良い苦手な物。

其れが葵衣だった。

『嫌い』では無く、『苦手』とする其の所以は、葵衣が一姫を溺愛して居る事に有る。

流石の一姫も、向けられる好意を(好意と言うには行きすぎて居るが)冷静に払う事は難しい。

葵衣は一姫が大好物で、本人曰く、一姫の色素が薄い長髪を撫でる以上の至福は無い、らしい。

其の為、葵衣は一姫を見つけるや否や、所構わず、砂糖に群がる蟻の如く向かって来る。因みに、此れを葵衣は『単なるスキンシップ』と言い、一姫は『単なるセクハラ』と言う。

『写真位良いじゃない。減る(もん)じゃ有るまいし。』

「減るよ!?色々と減るよ!?」

主に一姫のプライバシーが。

『はあ…仕方無いわね。今回は諦めようかしら。』

「そうしてくれ。」

一希は胸を撫で下ろした。


「…で、薬物が投与されてたって?」

『ええ。後、かなり高度な催眠術が掛けられて居た。』

「…思えば、何でお前が其れを知ってるんだ?」

『あれ?言って無かったっけ?』

「聞いてない。」

聞いたのは葵衣の欲望だけである。

『今回の調査は、冷泉銃工(うち)に回って来たの。』

冷泉銃工の主な仕事は、『銃工』と言う名の通り、銃火器及び弾薬の製造、開発だが、最近では、PMCから、犯罪証拠品や犯罪者其の物の精神鑑定等も請け負い始めたらしい。

だが、本来ならば、研究開発0課の葵衣が違う部署の情報など、手に入れられる筈も無い。

しかし、冷泉銃工の社長―――葵衣の父は、社内の情報流通が滞る事を嫌い、『課』ごとでは無く、『役職』ごとにコミュニティを作る様に仕向けた。

其のお陰で、情報がしっかりと行き渡り、今回の鑑定結果も葵衣の知る所となったのだろう。

「薬物って言うのは?」

『其れが分からないの。』

葵衣は困った様に言った。

『体内から辛うじて成分を抜き出せて、検査に回したんだけどね、結果は呆気なく返って来たわ。『不明』ってね。』

「『不明』?」

『ええ。一部じゃあ、新種の麻薬なんて結論も―――』

「麻薬!?ふざけるな!!」

一希は、思わず怒鳴り、葵衣の言葉を遮る。

たかが麻薬で、人が彼処まで壊れる訳が無い。

一希は麻薬漬けとなった人間を此れ迄に何回か見て居る。

彼等ですら、無感情な殺戮人形になるまで壊れては居なかった。

葵衣も其れ位は知って居る筈だ。

『勿論私も麻薬だとは思って無い。』

葵衣が静かに言った。

『足や背中にあれだけcrossoverの弾を喰らってもあんなに暴れられた其の理由が、単なる麻薬と催眠術で説明が付く筈が無いわ。私も思わず怒鳴ったもの。貴方と同じ様に『ふざけるな』ってね。』

「…分かってくれてるなら良い。済まない、取り乱した。」

一希は素直に謝った。

『解析はもう一度やり直させてる。次ふざけた答えを出したら、火薬投げ込む、って脅したから、まともな結果が出る筈。』

後半の言葉は、聞こえなかった事にした。

「分かった。…そう言えば、二神はどうしてる?」

『今の所治療中。まあ、麻酔を打って栄養剤投与してるだけだけど。』

「事情聴取は?」

『催眠術はともかく、成分が分からない薬の解毒が出来ると思ってるの?』

「まあ、そうか。」

其の時、電話の向こうから小さく葵衣を呼ぶ声が聞こえた。

『じゃあ、また。』

「悪いな、今度何か奢るよ。」

『なら、月の庵の一番高いやつ。』

「…金額による。」

『分かってる。じゃあ。』

「ああ。」

一希は通話を切り、着替えようとした所で、再び携帯が震え始めた。

ディスプレイには、『古手鞠 彗』と言う名が有った。

「―――はい。」

『済みません、忙しかったですか?』

「いえ、大丈夫です。どうしましたか?」

『…お願いが有るんですけど。』

「何ですか?」

『明日、もう一日だけ、護衛をして欲しいんです。』

「明日、ですか?」

『はい、駄目でしょうか?』

彗の声のトーンが下がる。

恐らく、昨日今日の出来事に不安感を抱いて居るのだろう、と一希は思った。

仕事の依頼に拒否や放棄と言う文字は一希には無い。

「構いませんよ?」

『本当ですか?有り難うございます。』

「昨日今日の日程で良いですよね?」

『はい。』

「分かりました。では。」

携帯が再び震え出す事は無かった。


そして―――

その日のニュースには、PMCが通り魔を逮捕したと言う一件が報じられた。



一姫の場面は今回の代わりに、後のストーリ―で長いの出す予定です。


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