第14話 覚悟
パンッ、と言う破裂音の瞬間ーーー
紅い花が咲き、拳銃と一希を紅く染めた。
強盗の命を完全に奪い取った事を確認した一希は、ゆっくりと立ち上がった。
今、一希の中では、一つの疑問が渦巻いて居た。
一緒に生活をし始めて二ヶ月。
ある程度の親密感は有った物の、其れは単に、『同居人』と言う関係から来る物だと思って居た。
幾ら血を分けた兄妹と言っても、所詮は他人。
だから、別に死んでも良かった筈だ。
其の筈だった。
だが、一姫が殺され掛けて居る光景を見た瞬間、一希はショックを受け、無意識に身体が動いて居た。
一希の精神は今、破壊と殺人に対する一部の理性の箍が外れた所為で、軽い混乱状態に陥って居る。
殺人を犯す事に対して、全く抵抗感を抱かなかった。
寧ろ、嬉々として行った位だ。
まるで、幼い子供が新しい玩具で遊ぶかの様に。
そんな事よりも重要だったのはーーー
『この『妹』と言う関係の少女には、罪を犯してでも救う程の価値が有ったのだろうか?』
そんな、疑問の解は。
「…兄…さん…?」
そう小さく呟いた一姫の表情と、僅かに焦点が合っていない、紅の目を見た瞬間、精神の落ち着きと共に導き出された。
「……ああ、そうか…」
この妹は仮令、どんな手段を講じても、自分が守って遣る必要が有る、と言う解が。
其れは、理論も存在しない、只の暴論だ。
だが、反論を返す者が居なければ、暴論もしっかりとした『理論』となる。
そして、当然ながら、一希に反論を返す者は皆無だった。
この瞬間、一希は決めた。一姫を守る為に、自分は如何なる業でも背負うと。
其れは、厳重に縛られた鎖の様な覚悟。
一希は、一姫を背にして、再びゆっくりと拳銃を構えた。
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