5.共同生活 第一日目
朝、体に重さを感じて目が覚めた。
目の前には友樹の顔があって、首には手が太もものところに足が乗っている。
俺は抱き枕か。
ため息と共に起き上がり乱暴に友樹の体を剥がすと彼は祐哉が寝ていた所を寝ぼけながら温かさを求めて続けている。
可愛い奴。
クスッと笑って、友樹は午後からと言っていたからもう少し寝かしておく事にした。
時刻は7時。
そおっと着替え始めた時、大きくドアが叩かれた。
「朝ですよ。ご飯出来ました。」
その声に友樹がもそもそと動き出した。
せっかく俺が寝かせておこうと思ったのに。
ぶすっとしたまま部屋を出ると地球外生物が台所とリビングの間をバタバタと行き来している。
それを無視して洗面台に行くと知華ちゃんのほうが寝ぼけながら顔を洗っていた。
「おはよう」と挨拶され、そっけなく「おはよう。」と返す。
その後ろから「いただきます。」と元気な声が聞こえた。
友樹のやつ、寝起き悪いはずなのに。
テーブルに近づくとこの間と同じ温かいご飯にお味噌汁数種のおかずが並んでいる。
ついさっきまで寝てたとは思えないスピードで食べている友樹はおかわりがあるか聞いている。
自分でよそいに行こうとする友樹の代りに知華ちゃんが入れに行ってくれている。
「あと一杯分はあるから祐哉さんもお代わりしてね。」
「ありがとう。」と返事をしたが結局それも友樹が食べてしまった。
「やっぱり男子は食べる量が違うわねぇ。」
ニコニコ笑う知華ちゃんの横で「今度からもう少し炊いておきます。」と地球外生物がぼそっと言った。
祐哉は今日、朝から気分がいい。
月に一度の特別な時間を過ごせる日だから。
目の前には少女漫画が積み上げられている。
ネットカフェで誰の目も気にせず大好きなマンガを読みふける、友樹にも教えていない唯一の趣味。
知られたら何を言われるかわからないからこれからもこれは秘密。
この時間だけは誰にも邪魔されたくない。
お気に入りのマンガを何度も真剣に読み返し、満ち足りた気分に幸せを感じていた。
その時電源を切り忘れていた携帯が震えた。
集中しているところを無理やり途切れさせれ祐哉はチッと舌打ちし、相手を確かめもせずバッテリを外した。
最近ストレスが溜まっていたのかいつもより1時間延長してしまった祐哉が家に着いたのは夜の九時近くなっていた。
夕食がいらない場合その日の夕方5時までに連絡する事になっている。
残りものでも外で食べるよりは安く上がる、そう思いいらない連絡はしていない。
しかしテーブルの上には何もない、台所に入っても綺麗に片付いている。
何かあるばずだと冷蔵庫に手をかけたところで後ろから機嫌の悪い声が聞こえてきた。
「今から食べるんですか?」
「ああ。」
返事を聞いた途端、不機嫌度がさらに上がったまま地球外生物は押しのけるように自分が冷蔵庫の前に立った。
いらない連絡はしていないのだから当然ではないか。
彼女に態度にせっかくの良い気分すら吹き飛ばされてしまった。
「ちょっと時間かかるのでお風呂にでも先に入って下さい。」
その言葉からご飯の用意をしてくれるらしい事がわかったのでしぶしぶではあるが厭味のひとつも残さず黙ってそれに従った。
テーブルにはから揚げに野菜炒め、朝とは違う具の入ったお味噌汁そのどれからも湯気が立っていた。
まさか出来たてのものが食べられるなんて思ってもいなかった祐哉は風呂場で言った彼女に対する厭味に反省した。
「こんなの毎日やられたらたまらないわ。今度から時間がずれたら別料金頂きますからね。」
反対にぶちぶち厭味を言いながらも、祐哉のおかわりのご飯をよそい、食べ終わると部屋へ入って行ってしまった。
そして地球外生物が地球の中に入ってきた。
しかしまだ祐哉はこの事に気がついてはいない。