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4、共同生活の始まり

喫茶店で知華と友樹が話し込んでいる。

「どうやって説得しようか。」

堅物の舞には面白い経験になるだろうと知華は面白がってこの同居生活を始めようとしていた。

友樹も実際に住むところがないし次の居場所が出来るまでいられる場所が必要だった。

「祐哉は俺が何とかするけど、舞ちゃんのほう、大丈夫?」

「私の方は来てからうまくやるから、調子を合わせてくれればいいわ。」

知華はワクワクしていた。

「じゃあ夜に。」

そういって友樹は祐哉のところへ向かった。


「祐哉、住むとこ見つけてやったぞ。」

友樹が嬉しそうに話しかけてきた。

「ホントに?」

「ああ。」

「何処だよ、安いのか?」

まさか知華と会っていたなんて夢にも思っていない祐哉は友達への感謝の気持ちが湧いていた。

「あの家。」

「えっ?」

「だから今日泊まったあの家だよ。」

友樹の口からまた突拍子もない言葉が出てきたので祐哉は驚きを隠せない。

「あの家ってお前、何勝手なこと言ってるんだよ。それに朝断られてたじゃないか。」

「知華ちゃんが何とかしてくれるって。」

自分の知らないうちに話が進んでいるのとなぜ自分まで一緒に住む事になっているのか分からない祐哉は

「ならお前だけそうすればいいじゃないか。俺はごめんだ。」

ゴミ屋敷のような家、それも女が住む家になぜ俺が?友樹の自分勝手な行動に腹が立ってきた。

「頼むよ。さすがに俺一人じゃ無理だろうし、2人のほうが心強いじゃないか。」

「何で俺まで住まなきゃならないんだよ。」

これ以上話したくないと祐哉はその場を立ち去った。

ここで引き下がるわけにはいかない、友樹が追いかけて来て食い下がる。

「お前だって住むところないだろ。それにこれから先俺に頼みごとしないんだな。」

痛いところをついてくる。しかしそんなことで折れていたら大変になる事は祐哉も分かっていたから今回は聞く耳を持つまいと頑なだった。

「頼む、知ってるだろ俺が行くところがない事くらい。あそこに住まないと本当に行くところがないんだよ。」

そう言って目の前で土下座した。

そこまでされた祐哉は何も言えなくなった。友樹にここまで頼み込まれては断ることなど出来るはずがない。

だけど「あの女がOKするとは思えないけどな。」心の中で思ったが言葉にはしなかった。


昨日の約束のケーキを食べながら、ちらちらと自分の様子を窺っている知華。

「どうしたの?。」

なにか言いたそうなのは明らかだ。

「いや別に。」

言いにくい事なんだろうか、心配事なら言ってくれればいいのに。

「何かあったの?」

そう聞いても言葉を濁すだけの知華。

そのうちそわそわし始めた。

よほど言いにくい事なのだろう。

今まで二人で暮らして来てこんな事無かったのに。

そうやって気をもんでいた時、

「ピンポーン。」

インターホンが鳴った。

「はーい、今開けます。」

舞が誰だか聞いているのを聞こえないふりをして知華は急いで玄関へ向かい2人を招き入れた。

「おじゃまします。」

友樹だけがそう言って、祐哉は無言のまま入って来た。

舞が知華を睨みつける。

「いったいどういう事?」

「今日からその部屋貸すことにしたから。」

すでに決まったような口ぶりの知華を自分の部屋に引っ張っていく。

「どういうことなの知華、何で勝手に決めてるの?」

「だって住むところも無いっていうし、ほら一部屋空いてるし、ねっ。」

悪びれた風もなく話す知華に怒りが込み上げてきた。

「分かってるわよね、私達の状況。私にはしなくちゃいけない事があるし、あなただってこんな事がばれたらどうなるか。ましてや男の人がこの家に住むなんてありえない事でしょ。」

部屋の外に2人がいるのもお構いなしに大声を上げる。

「何とかなるわよ。それになんか面白そうじゃない。」

舞の怒りを全く気にしていない様子の知華。

「とにかくあの2人を今すぐこの家から追い出して。」

一歩も引く気はない。

「じゃあ自分でどうぞ。」

知華の方も引く気がないようだ。こうなったらどうにもならない事を知っている舞は自分で何とかしようと部屋から出て2人を怒鳴りつける。

「あなた達、いったいどういうつもりなんですか?」

どうにかして自分が2人を追い出さなければ。

「直ぐにここから出て行って下さい。ずうずうしいと思わないんですか?無神経な人とは一緒に居られません。とにかく早く出て行って。」

舞はわめき散らした。

「すみません、でも僕ら本当に行くところがないんです。」

そう言って祐哉の時と同じように友樹はまた土下座をしたのだった。

舞は驚いたがここで怯むわけにはいかない。

「そんな事を言われても私達には全く関係のない事です。あなた達に部屋を貸す義理もありません。」

頑なに出て行かせようとする。

「僕には両親も兄弟もいません。だから頼る人もいなくて、ここに置いてもらわないと寝るところだってどこにもないんです。」

ここに住もうと嘘をついているとしか思えなかった。

「そんなウソまでついて、あなた恥ずかしくなんですか。」

それまで黙っていた祐哉が急に声を出した。

「何も知らないくせに。」

「え?」

「今の言葉取り消すんだ!」

祐哉は舞に向って言い放った。

「あなたいったい何の権利があってそんなこと言ってるんですか?だいたいあなた達は・・」

舞の言葉を遮って、祐哉が怒り出した。

「ウソ?恥ずかしいだって?何にも知らないお前がこいつにそんなこと言う権利があるのか?」

「権利ですって?人の家に上がり込んで勝手にここに住むなんて話をしておいてそっちこそ何の権利があってそんなこと言ってるんですか?」

「もういい、友樹、こんなことまで言われてここに住む事ないだろ。こんなんだったら公園で寝る方がよっぽどましだろ。」

友樹の腕を掴んで出て行こうとした。

しかし友樹はその腕を振り払い

「いやだ、二度と公園なんかで寝たくない。お願いします。何でもしますから、少しの間、お金が貯まるまでだけでもここに置いてもらえませんか?」

「本当に身寄りもないらしいの、しばらくだけ居させてあげない?」

友樹の必死さと知華の言葉に何も言えなくなって舞は自分の部屋へ入ってしまった。


舞は部屋にこもったきり出てこない。

友樹が心配そうに知華に聞いた。

「やっぱり無理なんじゃぁ?」

「大丈夫、安心して。」

舞の性格を知っている知華には確信があった。

その時ドアが開いた。

バンッ!!

舞が紙をテーブルに叩きつけた。

「同居契約書」そう書かれている。

「これが守れるなら同居してあげてもいいわ。」

知華がにやりと笑った。



1.期限は最長3カ月とする。

敷金を貯めることを思えばこれ以上は必要ないと思います。もちろんこれより早く出て行くのは構いませんから。

2.同居の事は誰にも話さない。お互いの生活に干渉しない。

今の生活を知られたり、乱されるような事があれば即刻出て行ってもらいます。

3.部屋以外にどんな小さなものも置かない。

例えば靴も帰ったら自分の部屋に持ち帰ること。洗濯物も自分の部屋の中に干してください。

4.ほかの部屋に入らない、覗かない。

特にあの部屋(部屋の方を指差して)の事は聞くことも禁止です。

5.月に一度こちらが指定した日は午後9時まで家に入らない。

出来るだけ事前にお知らせしますが急な事もあるのでそれも了承ください。

6.お金について

まず家賃折半、光熱費はいつも基本料金内でしか使ってないのでそれを折半でそれ以上の分はそちらに持ってもらいます。あっ、電話は使用禁止です。かかってきたのも絶対に出たりしないでください。 それからトイレットペーパーや洗濯洗剤はもちろんお金のかかっているものを勝手に使った場合はその都度頂きます。

それと当たり前の事ですが家事は分担制にします。洗濯は各自、朝と夜の食事はこっちで掃除はそちらがでどうですか?2人が頷いたのを見て、もちろん食べた分の材料費は頂きますと付け加えた。

7.上記以外についてはその都度相談して取り決める事。

今後不都合な事も出てくると思うのでとにかく勝手な行動だけは慎んでください。

守れない場合は即刻この契約は解消させてもらいます。



ひとつひとつ補足しながら一通り説明して後は委ねるといった様子の舞。

友樹と知華に文句はなかった。

まさか彼女が了承するとは思っていなかった祐哉は驚きを隠せない。

「あの、俺は遠慮・・・。」

言いかけた時、友樹となぜか知華ちゃんにまですごい形相で睨まれた。

確かに一緒に住めばしばらく住む所の心配はしなくて済む。

その間に次の部屋を見つければいいかとこの状況に乗る事にした。

「この6番の夜の9時までって何時から?」

不思議な内容に祐哉が尋ねる。

「それは決まっていないので今は言えません。朝早くから叩き起こすことはないので心配しないでください。」

不可解な答えだったが月に一度くらいならとそれも了承することにした。

祐哉が契約内容はお互いというのを強く主張した後、4人はそれぞれ書面に署名した。


きれい好きな祐哉は早速、耐えられないゴミの山を片付けようと部屋の掃除を始めた。

「ちょっとストップ!!」

慌てた舞が止めに入って来た。

「勝手に動かしたりしたら分からなくなるわ。それから物を捨てる時には必ず確認してからにしてください。」

「いきなりかよ。」

祐哉の手に持ったものを取り上げようとする舞に続けてたしなめる様に

「自分の書いた契約書守ってもらえませんか?」

「何をです?」

「人の部屋は覗かない、入らない。だろ?」

面喰ったように

「あの、それは・・・、とにかく大切なものばかりなんです。だから勝手に動かされると困るんですけど。何かあったら弁償してもらいますから。」

祐哉の言う事は当たっていたがここで負けてはいけないと舞は強引に言い放った。

「それじゃあ俺たち、寝る場所ないんですけど。家賃を払うのにこんなゴミばかりの部屋じゃ耐えられないんだけど。」

「分かりました。片付けますからちょっと待ってください。」

とりあえず荷物を部屋のすぐ外へ運び出した。

「こんなところに置いて掃除するときはどうするんだよ。直ぐに捨てるか自分の部屋に持って行けよ。」

横柄な態度にまたムカついた。

「急に来て、住まわせてもらって文句ばかり言わないでもらえます?」

「文句って、俺は正当な主張をしているだけで文句言ってるのはそっちだろ。女なんだから少しは片付けたらどうなんだ。」

「あなたに女なんだからと言われる筋合いはありません。」

「私が明日やるから。」

「まあまあ。」

見かねた2人が止めに入った。

納得できない様子の祐哉と舞は各自の部屋に入ってドアを閉めた。

やれやれとこの先を思い2人はため息をつく。

舞と祐哉は布団の中でも気が治まらない。

「あいつ無神経だわ。」

「あいつ何考えてんだ。女じゃねえ。やっぱり地球外生物だ。」

そうやって共同生活第一日目が終わった。



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