2、出会い
「遅れてすみません。」
舞を連れて知華がみんなに挨拶をする。
お嬢様との合コンだからと男性陣が張り切って高い店のそれも個室を予約していた。
その場の雰囲気にそぐわない舞の出で立ちをちらっと麗美が睨みつけた。
「どうぞ、どうぞ。」
幹事役の健が声をかける。
会はすでに始まっていた。
「揃ったところでまずは自己紹介から。」
興味ない舞はさっさと並んでいる物を食べ始めた。
脇から知華が服を引っ張った。
「?」
食べるのに夢中だった舞に
「舞、自己紹介。」
コンパなんて初めての舞はただ座って食べていればいいと思っていたのだ。
「有李栖 舞です。」
それだけ言ってまた食べ始めてしまった。
知華は親友の行動に冷や汗が出た。
「この子、合コンが初めてなもので。」
その場を取り繕うように言い添えた。
「なんていう女だ。いや女でもなく地球外生物なのかも。」
祐哉はぼそりとつぶやく。
「祐哉さんて彼女とかいらっしゃるんですか?」
みんなとの会話が弾みだした頃、麗美は目をキラキラさせ精一杯愛らしく尋ねる。
他の女の子も興味津々だ。舞を除いては。
「さあ?」
女性のそんな態度に飽き飽きしている祐哉は声を出すのも面倒なのだ。
雰囲気をぶち壊されまいと
「いません、いません。誰か面倒見てくれそうな人はいませんか?ちなみに僕もフリーです。かわいそうな僕たちに愛の手を」
友樹がおどけてみせた。
「ゲームでもやろうか。」
健がさらに盛り上げようと提案した。
「仲間はずれゲーム、知ってる?」
知らない様子の人達の為に説明を始める。
「質問は順番ね。両手を机の上に出してYESなら右手をNOなら左手を引っ込める。
分かりやすいように右手はパーで左手はグーね。人数の少ないほうが負け。罰ゲームは好きなお酒でいいから1杯ね。」
「いや・・。」
祐哉が言いかけたところで友樹がそれを制止した。
「レポートはいいんだな。」
小声ながら痛いところを突いてくる。
友樹を信用出来なかったがレポートの事を言われて祐哉は仕方なく押し黙った。
「では最初は僕からね。今日ここへバスで来た人。」
無難な質問する健に続き
「帰りはタクシーの人。」
お互いの状況を知ろうとする質問は初めは遠慮がちに。
「今、親と同居している人。」
徐々に興味深い質問へと変わっていく。
男の子からすると親と同居がどうかは付き合う上でも重要な一つだ。
男性陣からはナイスな質問だと歓声が上がった。
楽しく進みゲームは盛り上がっていた。
ラッキーなことに祐哉はまだ飲まずに済んでにいた。
「はい次。」
待ち構えていたように祐哉の反応を知ろうと麗美が質問する。
「今日この中に気に入った人がいる人。」
右手が残ったのは祐哉と舞の2人だけだった。
お酒を飲まないといけなくなって困惑している祐哉と反対に舞は嬉しそうにしている。
豪酒の舞は普段は飲まないようにしているがタダとあっては飲まないわけがない。
それもわざわざ飲めというのだから嬉しくてたまらない。
一方祐哉は躊躇していた。
隣の友樹が大丈夫だという風に目配せをして飲むのを促している。
ええいっ。
この場で飲まないのもプライドが許さなかった祐哉はついにお酒を口にした。
「ちょっとトイレ。」
すぐさまそう言って立ち上がった。