『光が沈むまえに』
普段はソネット等を書いていますが、初めて断章形式の抒情短編詩に挑戦してみました。
Ⅰ 夢の残り香
あの朝、私は、いつもなら私より早く目覚める彼女の寝顔を見ていた。
その微かな吐息のなかに、言葉にはならないものが、たしかに息づいているような気がした。
それは、彼女の夢の残り香のように、部屋の空気に溶けていった。
──いつかの夕暮れ、彼女がふいに言った言葉を思い出す。
「ねぇ、夢って、なんだと思う?」
風の音にまじって、遠くへ流れていったその問いに、私は答えられずにいた。
夢──それは、ふれることすらできない、淡い望みのようなものなのかもしれない。
人は、夢みることさえできない光を追いながら、風の音に耳を澄ませ、まだ見ぬ朝を待ち続けているのかもしれない。
Ⅱ 雲のかたち
彼女は、空を眺めるのが好きだった。
何も言わずに、ただ、雲のかたちが変わってゆくのを見守っていた。
その横顔には、なにかを求めているような、それでいて、すでにその答えを知っているような、そんな静けさがあった。
「わたしね、夢のなかで、誰かに手をふられたの。 でも、それが誰だったのか、思い出せないの。 ただ、“わたしはこの人を知っている”って──その光のような存在に、それだけを感じたの。」
彼女はそう言って、少し笑った。
その笑みは、触れ得ぬものに包まれてきた人のような、やわらかな笑みだった。
Ⅲ 風のほとりで
人は、なにを求めながら生きているのだろう。
それは、淡い夢かもしれない。
遠くに霞むまぼろしかもしれない。
あるいは、存在すらしないものなのかもしれない。
それでも──誰かの声や、風の匂いや、沈んでは昇る陽の光のなかに、
ふと、なにか答えのようなものがあるのではないかと思うこともある。
彼女は まだ 眠っていた。
彼女の吐息は、あまりに静かで──
私は、そっと彼女のそばを離れ窓を少し開けた。
そこには、変わらない風が、かすかに立っていた。
Ⅳ 光の沈黙
窓辺に差し込む光が、彼女の頬に触れていた。
その光は、彼女の夢の続きを語ろうとしているようだった。
私は、ただ見ていた。
言葉もなく、祈りもなく、ただ、見ていた。
光は ゆっくりと 彼女の頬を離れ
部屋の奥へと沈んでいった。
私は その沈黙のなかに 立ち尽くしていた。
風は まだ そこにあった。
その風のなかに、彼女の声が、問いが、笑みが、
ほんの少しだけ、残っているような気がした。
私は、そっと目を閉じた。
なにも見いだせないままに──
ただ、そこには、なにかがあるような気がした。
Ⅴ 問いの余韻
そして 風が もう一度 静かに 彼女の問いを ふりかえった。
──ねぇ、夢って、なんだと思う?
その問いの余韻が 私を包んでいた。
余韻は 言葉にならないままに
ただ 胸の奥に 静かに 溶けこんでいった。
Ⅵ 夢のかけら
窓の外では 雲が かたちを変えていた。
そのかたちは どこか 彼女の笑みを思わせた。
触れようとすれば すぐに崩れてしまうような──
私は もう一度 目を閉じた。
風は まだ そこにあった。
そして その風のなかに
夢のかけらのような 静けさが 漂っていた。
読み返してみると、語彙や表現がやや乏しいかなと感じましたので、もっと幅と深みのある文章を書いていければな、と思いました。




