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自由を追い求めて

作者: カケル

 この世界で唯一、『自由』を追い求める生物は人類だけである。

 かの哲学者はそう口にした。

 人類だけが、その心身に能わない力を求め、陸海空、果ては宇宙にまでその手を伸ばしたのである。

 物理的に行き着く場所へと辿り着いてしまうと。

 次に求めるは精神だった。

 神、霊、魂と、目に見えない力を求め、宗教的な道へと踏み込んだ。

 ――そう、人類は自由である。

 食べようものなら石だって口にする。

 北極から砂漠、短時間なら深海にだって住まえる。

 奴隷だ何だと言われる時代があり。性別が何だとセンシティブな時代にもなった。

 全ての垣根を飛び越えて、世界中の誰とだって簡単に気軽に繋がれる。

 文明・文化の保存、そして進化をも重ねられる柔軟性。

 知恵と工夫、文字によって次代を創り上げられる挑戦心は、他の生命を遥かに凌ぐ。

 ――そう、何もかもが自由なのである。


 だからこそ――。

 世界の若者よ。未来を見据えているか?

 世界の年長者よ。次代を見据えているか?

 何もせずとも世界は回る。ボーっとしていても適当に生きられる。

 だがしかし、留まってはならない。

 止まってはいられない。

 世界は移ろい、次へ次へと変化を望む。

 進んでいるか? 前へ歩いているか?

 走らなくても焦らなくてもいい。

 だが人生を回すこと、高めること、向き合うこと。

 それが大事なのだ。

 時は流れる。

 そして今、時機が目の前に現れた。

 いざ、征こう――自由を求めて。

 いざ、往こう――世界を求めて。

 君が求めるは、すべてが夢の果てッ!


 ――

 何をしている?

 ……はい?

 本番中だぞ。

 いやその……テーマがテーマなもので、はじめの言葉は大切かなと。

 そこまで壮大なこと言えと台本に書いてあったか?

 書いてないな。

 書いてないなら何を言ってもいいというわけでもないんだぞ?

『人生のテーマ』なんて曖昧なテーマをかきだした担当者に言えよ。

 先輩に向かってッ。

 その後輩にはじめの言葉を任せたのは上だぞ? 文句は上に言えよ、ハゲ。

 ハゲてねえッ!

 あんたの『人生のテーマ』は『ハゲ防止』だろ? ブフッ!

 気色悪い哲学を喋りだすイキり野郎の分際でよお。

 気色悪いだあ? この崇高な考えを理解できねえ凡人がよくもまあ有名ラジオ局に出入りできるようになったなあ。あ?

 やんのかてめえ。

 そっちこそやんのか。おん?


 ——

 と、争いが始まった。

 有名ラジオ局史上初の生放送中乱闘。

 言葉の端々から感じられる、流れるようなコントの様に。

 だれもがそのチャンネルに耳を傾けた。

 争い、勝ち取ること、自由なことだ。

 上下をはっきりさせること、それもまた然りである。

 だがそれだけで自由を声たかだかに語れるほど。

 俺はまだ大人じゃな――。

 デイレクターッ、何ニヒルに浸ってるんですかッ。止めに行かないとマズいですってッ。

 拳と拳が肉を打つ音。

 嗚呼、なんと心地よい響きか――。

 パアン。

 頬に痛み。

 そして助手の佐藤に引き摺られるようにして現場へ入った。

 七転八倒、阿鼻叫喚。

 まさに大乱闘。

 いつしか佐藤すら鬼気迫る勢いで拳を握りしめていた。

 巻き込まれに巻き込まれていった俺……。

 後日俺の前歯は、差し歯になっていた……。

 はっはっは。

 では諸君——。

 法廷でまた逢おう( ’ω’ )> 。。。


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