夢見る姫君と傭兵01
そーいや、X(Twitter)やっています。あんまり呟かないですけど、新しい作品書いた時なんかは呟いているので、ぜひ。
カティーナ・ローティーン・メル、十七歳。大統領の一人娘。
それが私。
誰もが羨む身分の持ち主。
けれど私はそうは思わない。
普通の生活が、羨ましい。
この国は決して裕福ではない。お父様は大統領としてこの地を、北国ハーレーンを正しく治め、かつてのように栄光のある時代を築こうとしている。
でもそんなのは所詮夢物語だと私は知っている。お父様だってきっと気づいている。それでも自分が諦めてしまえば国民は何を信じればよいのかと、そう言って強ぶっているだけで。
お父様は嫌いではないけれど、苦手だ。尊敬している。敬愛している。大統領に相応しい人であると思っている。それでも良い父親かは分からない。
お父様のエメラルドの瞳が嫌いだ。あの瞳に見つめられると怖くなる。大統領の娘に相応しくあれと、そう言われている気がする。
実際にお父様がそう言ったわけではないのだけれど、どうしてだろう。
仕事をしている時のお父様は強者のオーラを持っている。大きな背中からは威圧感が感じられる。兵士たちはその背中を守るためにいる。そして彼らはそれを誇らしく感じているのだから、悪いことではないのだろう。
喉から発せられる低い声には何処までも響き渡る静かな力強さがある。その一声で兵士たちは戦場を駆け、命を落とし、誰かを救うのだから凄いことだと思う。
鍛えられた肉体からは兵士たちと同じくらい、いいや、それ以上に厳しい訓練を日々欠かさずしていることが分かる。元々お父様は軍人出身ではあるけれど、どんな人でも上に立つと訓練から離れ命令するだけになるというもの。けれどもお父様は今でもいつ戦場へ行ってもいいくらい鍛えているのだ。そういう点が国民に希望を抱かせる。
私を産んだお母様は出産を終えた一か月後に亡くなった。忙しい中、私を男手一つで育ててくれたお父様には感謝している。
それでも、私は。
「ここを出たい」
鉄格子の窓から見える景色は、私の憧れだ。
世界は広いのだと本で知った。海の向こうには小柄だけれど力強い人々が支配する東洋の島国大和帝国があって、その近くには和と伝統を愛する大国泰藍王国がある。他の大陸には一世紀半前までは我が国との交流の深かった資源と人口、面積に恵まれた大国アグリアがあるそうだ。
「いつか行きたいわ」
そのためには、お父様。
「さようなら」
私はお父様のもとを去るしかないの。
「ありがとう」
灰色の塔から見える景色なんて、私は見飽きた。
「愛している」
滅びゆく国と終わりを共にしたくはない。
「また、いつか」
会えることなんて、ないのだろうけれど。
そうして私は鍵の壊れたドアを開けて長い螺旋階段を降りた。
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大声で叫んで走り回って喜びます(近所迷惑にならない程度に)。
あと、悪役令嬢ものも書いていますので、よければ作者の他作品もどうぞ。