1-2 ダメだこりゃ
ポンッ。
「ヴェルサイユに到着いたしました。」
手荷物を持って飛行機から降り、ゲートを通過。屋上から屋内に入り、トコトコ。扉の向こうには思わず目を剝く光景が、ドドンと広がっていた。
「豪華絢爛。」
到着早早、ゲッソリ。
ヴェルサイユ宮殿はフランス、パリ南西。ヴェルサイユにあるルイ王朝の大宮殿。
1682年から1789年までフランス国王の座所として、政治の中心だった。1626年、ルイ13世の離宮として建てられたのが始まり。
ルイ14世の時代に大宮殿の形式を備えた。
内部装飾は代表的バロック様式の壮麗なモノで、特に『鏡の間』は有名。室内装飾・庭園に至るまで、近世各国宮殿の模範とされる。
1789年、フランス革命の端緒となった『三部会』。1871年、『ドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム1世の即位。1919年、第一次大戦の戦後処理のため、連合国とドイツとの間に結ばれた『ヴェルサイユ条約』調印など、歴史的事件の舞台ともなった。
「金、掛け過ぎ。」
使用人、どれだけ雇ってたんだろう。
国力を示すには良いんだろうけどオーストリア、マリア・テレジアと神聖ローマ皇帝フランツ1世の末娘、マリー・アントワネットが嫁いできた時には、もうボロボロだったんでしょう?
奢侈を好み『首飾事件』で世の非難を浴び、フランス革命の際ギロチンで処刑された王妃さま。
気の毒だよ。
天真爛漫な姫君が政略結婚で、貧乏貴族に嫁がされてビックリ。それでも何とかしようと、慈善活動とかイロイロ頑張ったのにさ。
『パンが無ければお菓子を食べれば良い』なんて言ってナイのに、これでもか! と叩かれ捲る。
『首飾事件』だって巻き込まれたダケ。
ラ・モット伯爵夫人が王妃への接近を望む枢機卿、ロアンを利用してダイヤモンドの首飾りを騙し取ったんでしょう? ソレで宮廷の腐敗が明るみに出たんだ。
マリー妃は悪くない。
「ドッと疲れた。」
案内された部屋に入り、施錠してから寝台に飛び込む。行儀が悪いケド大目に見て。
広い宮殿の一角、立入禁止区域。異星人のために作られた特別室がズラッと並んでいた。応接室と寝室、その隣に浴室トイレ洗面所つき。
『部屋は狭いが問題ない』と旅行案内書に明記されているが、王宮と比較してはイケマセンという意味だろう。落ち着く広さだ。
「思い出すなぁ。幼稚部の編入試験を受けに、初めて足を踏み入れた時の事。」
ウィリアムが通っているのはペルセウス学院、中等部。
大いなる惑星、ペルセウス最古の私立学校。学費や施設使用料など、もろもろ高め。モチロン寮完備。
学院寮を見学した事があるが、その豪華さに呆れ果て絶句。談話室や遊戯室、温水プールにスポーツジム、食堂の献立表を見て『ダメだこりゃ』と思った。
幾ら貴族の子女が多いからって児童生徒、学生にアレは贅沢すぎる。
「帰星したら『驕奢な生活に慣れると、破滅するかもしれませんヨ』って、投書しよう。」