1-1 永遠の愛
惑星ペルセウスの伯爵令息ウィリアムは私立、ペルセウス学院の中等部三年生。高等部へ内部進学するため、見聞学習を申し込む。
選んだのは太陽系第三惑星、地球。
現地で渡された内進課題は、多くの卒業生を苦悩させた難問。『終わった』と心の中で呟くも、気を取り直してフランスへ向かう。
夜のパリを散策中、出会った盲目のピアニスト。いろいろ話すうちに仲良くなり、課題に向き合うようになった。
貴族の常識、両親の事。奔放な伯父のアレコレも含め、永遠の愛とは何かを考える。そんなウィリアムが出した結論とは。
永遠の愛 ~盲目のピアニストに恋をした異星人~ はじまります。
ウィリアム・イワノ伯爵令息が初めての星外旅行に太陽系、第三惑星を選んだのは不人気だったから。
好戦的で低能な地球人から学ぶ事など何も無い、というのが一般的なペスセウス星人の考え。よって各種保険適用外。
そんな惑星を選択するのは問題児か、特殊な物事を好む異端児。
「匂うな。」
鼻が曲がりそうだ。
無防備ならペルセウス星人でも耐えられない、恐ろしく強い毒性を含んでいる。
大気中に含まれる有機塩素系化合物。発癌性や催奇形性が強く、内分泌攪乱化学物質も持つ。なのに、地球人は平気なのか。
・・・・・・平気、らしい。
「サッサと済ませよう。」
課題を仕上げなければ内部進学できない。
ペルセウス国立大学に進学予定の兄は扨置き、ペルセウス国立高校には姉も在学中。三日早く生まれたのに、戸籍上は弟になっているアレが進学を希望している。
ペルセウス王立高校を滑り止めに受験し、合格してるからな。もし内部進学に失敗すれば、ヤツと同じ高校に通う事になる。カモしれない。
考えたダケで憂鬱だ。
「にしても何だ、この題目。」
ウルル天港に到着後、検疫を受けて入星審査。荷物を受け取り税関へ。
到着ロビーに出たら『内進課題はこちら』って、派手なプラカード持った事務員が居た。で、引当てたのがコレ。
「永遠の愛?」
終わった。
天港から一番近い町で見つけた古書店で、埃をかぶっていた日本の『国語辞典』と『漢和辞典』を購入。
最初から日本の辞書を探していたワケじゃない。
町一番の書店で英語以外の辞書を探したら、取り寄せる事になると言われた。入荷するのは二週間から一か月後と聞き、ビックリ仰天。
気の毒に思ったのだろう。その書店員に紹介されたのが、前述の古書店である。
話を戻そう。
買い求めた辞書を引いた結果、愛には複数の意味があり、『慈しむ』『慈しむ心が赴き及ぶ』事を表すと判明。
地球では価値ある物を大切にしたいと思う、人間本来の温かい心。人、特に異性を慕う心。神仏の慈しみ。物に執着する心。
親兄弟の慈しみ合う心、異性や同性を慕う情、大切にする事、好ましく思う事、惜しむ事も『愛』らしい。
「とりあえず『フランス料理』と『マカロン』なる物を食べに行こう。」
食いしん坊、万歳。
「タスマニア島からコルシカ島に転移して、ヴェルサイユに泊まるか。」
観光する気マンマンである。
ウィリアムよ、課題は良いのか?
『愛』と『恋』の違いなら判る。愛は与えるモノ、恋は求めるモノ。以上。お爺様、先代シュイスキー侯爵の話は非常に解り易くて助かる。
父方も母方も皆、貴族。政略結婚が当たり前。なのだが、母方の祖父母は相思相愛。その娘アリィサ、つまり私の母は現実主義者。
初めは『恋に恋する乙女』だったが不幸が重なり、現実的なモノを重視するようになったと以前、笑いながら話してくれた。
貴族、それも侯爵令嬢だ。政略結婚から『逃げられないなら』と、恋人と別れられないイワノ伯爵令息に契約結婚を提案。二男一女を儲けた。
兄姉誕生後、契約に則って迎えられた内妻は一男一女を出産。
つまり書類上、次男坊である私は中つ子。本当、ツライよ。