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第2話 東方の島国アスカ(4)

 「あの子は誰だったんだろ?」


 「さあ?この国の人だとは思いますが♪」


 海から上がったルナ達はその少女がいないかぐるっと見渡すが見つからず、とりあえずルナの魔法で水を出して海水と魔獣の粘液を洗い流した。


 「でも只者ではありませんでしたね♪一瞬しかあの子の魔力を見れませんでしたが、相当のものでしたよ♪」


 「でも見た目は可愛い女の子だったよね……、もしかして魔人?」


 「その可能性が高いですね♪……それにしてもアスカは人の国と認識してましたが、これは少し探りを入れる必要がありそうです♪」


 とそんな会話をしている内に辺りを探索していたフォーリアとロゼ、そしてなにかの動物を背負いながらオニヒメとオニキシが戻ってきた。


▽▽▽

 「そんな事があったのですか」


 オニヒメ達が狩ってきた動物の肉を食べながら、ルナは先程の出来事をみんなに話した。


 「うん、とても強い子だったよ」


 ルナはあの少女を頭に思い浮かべる。サラサラの銀髪に赤い瞳、着物をこしらえて体より大きい刀で一瞬で巨大な魔獣を倒した少女。その容姿はルナの知る吸血鬼に近いものであった。


 (もしかしてあの子が吸血鬼なのか?)


 当然ルナの思考はそう結びつく。しかしそれは考えたくない事でもあった。


 (もしそうなら俺達の標的は……)


 ルナ達は吸血鬼討伐の依頼という名目でこの国に来ている。つまりあの子がその標的ならルナは助けてくれた少女と戦わなければならないかもしれないのだ。


 (……まだそうと決まったわけじゃないし、考えるのはやめておこう)


 ルナはそう決めて彼女の事を一旦保留にする事にした。


 「そういやぁ、この国の依頼人はいつ来るんだ?」


 とロゼが肉を頬張りながら誰に言う訳でも無く尋ねる。


 「そろそろ来ても良いんですけどね♪」


 とミサがヒナギから預かっている手紙を見ながら答えたちょうどその時だった。


 「失礼、貴殿らが魔王国からの客人であられますか?」


 少し離れたところからルナ達の方へ歩いてくる一人の男性が声をかけてきた。


 「そうですよ♪こちら確認してください♪」


 そう言ってミサはその男性の所に行って手に持つ手紙を渡す。その男性は手紙を受け取りざっと中を確認すると、


 「確かに間違いないようですね。お待たせして申し訳ない」


 そう言って深々と頭を下げ、


 「私はこの国の皇太子であるザクロと申します。遠路はるばるお越しいただき感謝致します」


 と自己紹介をした。


 「こ、皇太子!?」


 目の前の男性がこの国の皇子と知りルナは焦るが、ザクロは「そんなに畏まらないでください」と笑顔でそう伝える。


 「本来であれば私達の城にてもてなしたいところなのですが、事情も事情なので当面過ごしていただく隠家に案内したいと思います」


 そう言うとザクロは手をパンパンと叩いた。すると森中から馬車が一台現れ、


 「ではどうぞお乗り下さい」


 と促されたので、ルナ達は急いで残りの肉を平らげて馬車に乗り込んだ。


▽▽▽

 「それでは早速今回の依頼の件についてお話をしたいのですが」


 馬車が動き始めてすぐザクロはそう話を切り出す。


 「待て、その前に一つ確認したいのじゃが」


 とザクロの言葉をオニヒメが遮り、


 「本当にワシらに討伐させたい者というのは吸血鬼なのか?」


 とオニヒメは尋ねる。


 「はい、それは間違いありません」


 「それはおかしいのぉ。本物の吸血鬼が現れたならこんな小国あっという間に滅ばされるじゃろ」


 とオニヒメは馬車の外、辺り一面森であるが、緑覆う綺麗な状態を見てそう告げる。


 「そうですね……。この国は平和そのものですよ」


 とザクロもなんとも言えない表情でそう話す。


 「え?吸血鬼って伝説と言われるほどの魔族なんでしょ?」


 ルナはザクロの言葉を不審に思いそう尋ね、ザクロはその問いに静かに目を閉じて


 「確かに鬼族の始祖と呼ばれる吸血鬼は世界を滅ぼす程の力を持っていたとされています。……しかし、今この国にいる吸血鬼は心優しい吸血鬼……、いや人間なんです」


 と答えた。


 「その口ぶりからするに♪この国に現れた吸血鬼というのは強大な力を持った鬼族ではなく……」


 とミサが口にすると、


 「……はい。私達アスカの皇族は伝説の吸血鬼カーミュラの子孫。……そして私の妹(・・・)こそが先祖返りして現世に現れた吸血鬼です」


▽▽▽

 「…………さっきのお姉ちゃん達、面白かった」


 銀髪赤眼の少女は先程の海での出来事を思い出し一人で笑みを浮かべていた。恐らく外の国の人だろう。ならこの国の外の世界を教えてもらいたかったと思うが、少女にはこの後日課であるお役目があるので、名残惜しいが離れることにしたのだ。


 吸血鬼(・・・)の力を使える少女は特技の一つである影移動を使用し目的地へと向かっていた。


 「…………それじゃあお兄ちゃん、ツバキ、今日もお役目頑張るね」


 そう言って吸血鬼の少女ツバキは影から出て、目的地であるとある施設中へと入っていった。 


 

 

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