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第2話 東方の島国アスカ(2)

 「アスカにはどれくらいで着きそうなの?」


 「アスカには一応密入国で入るので、まずはアスカ近くの港町に向かいます♪そこから潜水艇で行くのでザッと五日ほどですね♪」


 ルナの質問にニコニコ顔のミサが答える。


 ルナ達は今、東方の島国であるアスカに向かうべく、ロゼが使役する白獣馬(ペガサス)ネリィの馬車で空を渡り移動していた。ネリィの移動速度は前世のヘリコプターと変わらないが、揺れは少なくとても快適に馬車の中で過ごせていた。


 「立場は変わったけどこうやって仲間のみんなと旅をするのは久しぶりだね」


 とルナは外の景色を見下ろしながらリラックスした気持ちでくつろいでいる。


 「…………ところで」


 とルナは馬車の中へと視線を戻し、


 「何で二人は既に死にそうな顔をしているのさ?」


 と疲れ果てているのであろうか、ぐったりとしているフォーリアとロゼに声を掛ける。


 「……なんと言いますか」


 「特訓漬けの二週間を過ごしたわけだが……」


 フォーリアとロゼはお互いに寄りかかりながら馬車の天井を見上げ、


 「「地獄でした(だった)」」


 と声を揃えてそう呟いた。


 「そ、そんなに……」


 フォーリアとロゼがここまで疲弊しているのをルナは見た事がないので、どれだけキツかったのだろうかとルナは想像するが全く見当がつかなかった。


 ルナ自身も出発までの二週間はオニキシと共にダーウィンの指導をみっちり受けていたが、こんなになるまでは過酷で無かった。


 (まぁダーウィンの場合、騎士団長としての経験もあるから指導力は高かったしなぁ。……にしても脳筋そうなレーベクスはともかく、バルティックまでそんなに厳しいのは意外だなぁ)


 そんな事をルナは考える。


 「確か二人はレーベクスとバルティックに鍛えてもらったんじゃろ?それはお気の毒じゃったな」


 「そうですね、私でもあの二人に鍛えてもらうのは少し覚悟がいりますし……」


 とそんなことを言いながら、オニヒメはオニキシから注がれるお酒を美味しそうに飲みつつ、フォーリア達を笑いながら眺めている。


 「……九歳が酒なんて飲んでいいわけ?」


 ルナはジト目でオニヒメに尋ねるが、オニヒメは大した事ないと言わんばかりに手を振り、


 「ワシら鬼族にとってお酒は水みたいなもんじゃ、

細かい事など気にするでない」


 と言いながらオニヒメは再びクイッと手に持つお酒を飲み干し、オニキシに注ぐよう空の容器を差し出す。


 (お酒か……、そういえばこっちの世界に来てから一回も口にしてないな)


 とルナは少し飲んでみたいという気持ちを抑えつつ、オニヒメの飲むお酒を横目で見ていた。


 ルナも生前はお酒をそれなりに嗜んでいたので、当然この世界のお酒には興味を持っていた。しかし今は見た目年齢14歳ほどの少女の姿をしているので、お酒を飲むのは背徳感が強く、飲まないようにしていた。


 「そ、そういえばオニヒメ」


 「ん?なんじゃ?」


 お酒から意識を外すためにルナは話題を変えることにした。


 「吸血鬼……ってどんな魔族なの?」


 吸血鬼、それはルナ達がアスカに向かう事となった一番の目的である。


 「魔王様も言っておったが、吸血鬼は鬼族の中でも最上位種と呼ばれる化物……と言われていたのじゃ」


 「言われていた?」


 ルナは過去形なのが気になりそう口にする。


 「吸血鬼というのはそもそも伝説の鬼とされていて、ワシら鬼族の始祖と言われているのじゃ」


 とオニヒメは相変わらず酒を飲む手は止めずにそう説明する。


 「伝説では吸血鬼は不老不死の体質と脅威的な魔力、そして数多くの眷属をもってして世界を蹂躙したとされています。その後は多説ありますが、光の導き手として現れた勇者により吸血鬼は封印された……というのが通説ですね」


 オニヒメに代わりオニキシがより細かく吸血鬼伝説を語る。


 「まぁどうせ今回も偽物……であろうがな」


 とつまらなさそうにオニヒメはそう言う。


 「偽物って?」


 「たまに力を持った鬼族が己を吸血鬼の生まれ変わりと宣う事があるのじゃよ。そんな奴は不死でもなんでもないから、大体ワシのワンパンでくたばるのじゃがな」


 シュッシュッとシャドーボクシングの様に拳を振りながらオニヒメは説明する。


 「じゃあその始祖とされる伝説の吸血鬼以外は存在しないの?」


 「少なくともワシは見た事も聞いたこともない。……が、伝説にはもう一つ続きがあってな」


 と手に持つ酒を飲み干したオニヒメは一呼吸を置き、


 「始祖は封印される前、人間の恋人がいて始祖とその人間の間に一人の子供が産まれた……というおとぎ話があるのじゃ。まぁこれは後に脚色された逸話とされておるが、もし本当ならいつの日か先祖返りする可能性もあるなぁ」


 と語って聞かせた。

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