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第2話 エルフの集落(4)

 リーシャとの入浴を終えた後、族長であるリーシャの父親が俺と話をしたいとの事だったので、一緒にご飯を食べようとなった。


 食事の用意までまだ時間がかかるという事だったので、俺はリーシャに連れられ客室に案内された。案内された部屋は大きめなベットと机にソファー、それにテラスも付いてる、高級ホテルの一室|(泊まったこと無いのであくまで妄想だが)の様な立派なものだった。


 「今日は泊まっていって大丈夫なので、この部屋を自由に使ってくださいね」


 「こんな立派な部屋を使わせてもらって良いの?」


 「もちろんよ!ルナさんは命の恩人だし、それに……私の大事な友達なんだから」


 「リーシャ……。うん、じゃあ今日は泊まらせてもらうね」


 「今日だけとは言わずに何日、……いや何ヶ月、何年でも泊まってっていいんだからね!」


 「さすがにそんなにはお世話になれないよ」


 リーシャは初めて友達が自分の家に泊まりにきたかのように|(いや、本当に初めてなのだろう)喜び、お風呂を出たあとからずっとテンション高い状態だ。俺自身も行く宛てなど無いし、こっちの世界で面識あるのはリーシャしかいない。それに前世でも、高校卒業後は魔法少女の良さを広める為にひたすら漫画を描く生活を送っていたので、久しく友達と遊ぶ、……いや、体が弱かったので子供の頃も友達と遊んだ記憶もあまりないな。なので実際俺もリーシャという友達ができたのが嬉しかったりする。


 俺がそんな思いに馳せていると、リーシャはモジモジとしながらこちらを見つめ、


 「ご飯までもう少し時間かかるみたいだね。……ルナさん、私、ずっと友達とやってみたいと思ってた事が、その……沢山あってね、それで、ええと……」


 と恥ずかしそうにモゴモゴしていた。俺はそれを見て笑いながら、


 「いいよ。ご飯までは私が相手で出来る事があれば何でも付き合うよ!」


 「ホント!じゃ、じゃあちょっと待ってて!」


 そう言ってリーシャは駆け足で部屋を出て行き、ドタドタと慌ただしく部屋に戻ってきた。戻ってきたリーシャの手には一冊のノートらしきものがあった。


 「そのノートは?」


 「これはね、私が友達とやってみたい事がまとめてあるノートなの。」


 そう言ってリーシャは俺の目の前でノートを広げてみせた。そこにはビッシリとリーシャのやりたい事とそれをリーシャと友達がやっているイラストで埋め尽くされていた。中には「友達とお風呂に入る」、「友達と体の洗いっこをする」と先程俺とやった事も含まれている。


 「私ね、昔からこうやって友達が出来たらコレやりたい!ていう妄想して、それをノートにまとめるのが趣味、……いや、唯一の楽しみだったの。……変だよね?」


 アハハとリーシャは恥ずかしそうにノートで顔を隠す。


 |(そうか、リーシャってどこか俺と似てるところがあるんだな……)


 俺は密かにそんな事を思い、


 「全然変じゃないよ。……それじゃどれからやる?」


 「!じゃ、じゃあこれから!」


 俺の答えにリーシャは嬉しそうに反応し、ペラペラとノートをめくってとあるページを指さす。そのページには、


 「髪の手入れか……」


 「うん、私自分以外の人の髪の手入れをした事がないの。お風呂から上がったばっかでルナさんの髪、まだ乾ききってもないから、丁度いいかなぁって」


 「うん、じゃあお願いしようかな」


 「任せて!」


 そう言ってリーシャはまた部屋を走って出ていった。……とても幸せそうな顔で


▽▽▽

 「それじゃルナさん、そこに座って」


 リーシャはタオルと櫛を持って部屋に戻り、俺をソファーに座らせて、髪の手入れを始める。まだ湿気っていた俺の髪を丁寧にタオルで拭き、櫛で髪をゆっくり伽始める。


 「ルナさん、手入れしたいって私からお願いしといてなんだけど、せっかくサラサラの良い髪の毛なんだからもっと大事に扱った方がいいわよ?お風呂から出たあともバスタオルで雑に拭いてるだけだったし」


 「うーん、そう言われても髪の毛に気を使ったことないから、どうすれば良いのか分からないんだよね」


 「えっ!?それでどうしてこんな髪質を今まで維持してきたの!?」


 「そう言われても……」


 |(この容姿は今日生まれたものだからなぁ)


 と思いながら、なんてリーシャに説明しようか考える。


 俺がなんて言い訳しようかと考えていると、リーシャは無意識で


 「私、ルナさんの事もっと知りたいな……。あっ!ごめんなさい!私ったら図々しいよね、今のは忘れて」


 と呟いた後、リーシャは慌てて訂正する。でもその言葉を聞いて俺は


 |(リーシャは俺に自分の内の想い、それにノートなんてきっと誰にも見せてない秘密を今日会ったばかりの俺、……友達の俺に話してくれたんだ。俺もある程度のことはしっかりリーシャに話すか)


 と思い直す。


 「リーシャ、さっきお風呂でも簡単に話したんだけど、私は別の世界から来たの」


 俺の真面目な顔と声のトーンに反応し、リーシャも


 「うん」


 と真面目に聞く準備をしたように相槌をうつ。


 「前の世界の私は、父親に憧れて多くの人の命を助ける救助隊の仕事がしたいと思ってたの。でもあいにく私は生まれつき体が弱くてね、父親と同じ仕事にはなれなかった」


 「うん」


 「私は悲しかった。何で自分は弱い体で生まれたんだろうって、何でやりたい事をやれないんだろうって」


 「うん」


 「でもねある日、魔法少女というのを知ったの。魔法少女っていうのはね、前の世界では力も弱い普通の女の子がある日不思議な力で魔法少女に変身して、人々を助ける為に悪と闘うお話なの。私はそのお話を見て、私もいつか魔法少女になりたいって思った。でも魔法少女はお話の中の存在で、当然なれるわけない。でも魔法少女の良さ、人を助ける素晴らしいさを多くの人に知ってもらいたい、でももし叶うなら私も魔法少女になりたいと願い、漫画……、分かりやすく言うと絵本を描いてたの」


 「うん」


 「そんな中私は事故で死んじゃってね、そうしてこの世界に生まれ変わった。……いや、記憶とかも引き継いでるから転生したが正しい言い方だね。それもずっとなりたかった魔法少女としてね。そしてこの世界に来てすぐ、リーシャがゴーレムに襲われているところに出くわした。……これが私、ルナよ」


 「うん。……そうなのね」


 リーシャは髪を梳かしながら俺の話を真剣に聞き、俺が話し終わったタイミングで手を止める。そして背後から俺を優しく抱きしめ、


 「ルナさんも私と似てるのね。生まれた環境で叶うのが難しい夢を持ちつつ、それでいて諦められないからにそれを文字と絵でまとめる。……私、ルナさんとは今日会ったばかりだけど、すごい身近に感じる」


 と俺に語りかける。俺はそれに、前からリーシャの手を握り


 「私も同じ事考えてた」


 とリーシャに答えた。


 

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