第1話 魔王軍幹部会(5)
「ええーと……、どういうことでしょうか?」
ナロの言葉の意味が分からないフォーリアはナロに尋ねる。
一方ナロはナロで、
「あれ?意図的に戻ってないわけじゃないんか」
と不思議そうに答えた。
どうも話が噛み合っておらず、「もしかして君ら……」とナロは何か察したような表情を浮かべ、
「フォーリア、一回自分の容姿を確認見てみ?」
とナロに言われ、フォーリアは水面に映る自分の顔を、そしてルナは今一度じっくりとフォーリアの顔を見て、
「「………………………………………………あっ!」」
二人は同時にナロの言っている事の意味を理解した。
今のフォーリアは髪が黒白の斑模様で瞳は右が青で左が黒のオッドアイ。つまり本来のフォーリアの外見ではなく、ロイターとの戦いでルナに魔力を与えられた時の姿を維持していたのだ。
「…………全く気付いてませんでした」
「私も…………」
フォーリアとルナは互いに見つめ合う。
(フォーリアはあの戦いの後、鏡とか見る機会なかったし自分で気付かないのは仕方ないよなぁ。…………俺が気付けなかったのは何の言い訳も出来ないけど)
ルナは心の中で反省する。そしてフォーリアはというと、
「しかしあの戦いの時のように体から魔力を感じることは無いんですよね……」
とフォーリアは不思議そうに自身の胸に手を当ててそう告げる。
「ちょっとよろしいですか?」
そう言って今度はカルメアがじーとフォーリアの全身を眺め、
「フォーリアさんは半魔人化しちゃってますね」
と簡単に告げ、再びカルメアはお酒を飲み出す。
「半魔人って?」
ルナがカルメアに質問すると、
「魔人っていうのは魔力を有する人間ってことだよ♪」
カルメアに代わりミサがルナの質問に答えた。
「フォーリアちゃんの場合、ルナちゃんの魔力をもらって一時的に魔人になったみたいだけど、今は魔力が使えない…………、でも体内にはルナちゃんの魔力がある状態だから魔人と人間の中間、つまり半魔人って事♪」
「じゃあフォーリアから私の魔力を完全に抜き取ればフォーリアは普通の人間に戻れるってこと?」
ルナが尋ねるとミサは「ええーとね……」と少し困った様な表情を浮かべ、
「ちょっと今回はただの魔人化とは違ってイレギュラーみたいだね♪」
と前置きを置き、
「人間が魔力を有するのは三パターンあって、まず一つは血統で稀に魔力を受け継ぐ場合。人と魔族の間にできた子供っていうのは基本的に人間として産まれるんだけど、親が上位魔族、若しくは先祖がかなり強力な魔力を有した魔族の場合稀に子供や子孫にその力が受け継がれる事があるんだよ♪」
とミサは指を一つ立てる。
(先祖返りみたいなものかな)
ルナはそう自分なりに解釈していき、続いて二本目の指をミサは立て、
「二つ目は魔法で人間に魔力を与える場合。これは一時的に魔法で対象の人間を魔人にして、魔法が切れると効果が切れて人間に戻る。人間が魔力を持つのはこのパターンが多いんだよ♪」
と説明する。
「ん?私達の場合はこのパターンじゃないの?」
とルナはミサに尋ねる。その質問にミサは真面目な表情を浮かべ、
「そして最後三つ目は魂の契約によって人間を眷属にする場合。これは主に悪魔等の特定の魔族が使用するんだけど、相手の魂に己の魔力を結びつけて魔力を付与する。これだとさっきのただ魔力を与えるより強力な効果もある反面、眷属の契約は死ぬまで解消される事は無い」
と最後のパターンを説明した。その後ミサは再び笑顔を浮かべ、
「今回ルナちゃんはこのパターン三に近いんだよ♪それは多分ルナちゃんの魔力は普通の状態じゃないからだね♪…………でも正しい手順で契約を結ばなかったからフォーリアちゃんは人間と魔人の間の中途半端な存在になってるわけね♪」
とルナとフォーリアの顔を交互に眺めてそう言った。
「それじゃあ結局どうすればいいの?」
ルナはフォーリアを人間に戻す方法を再度ミサに尋ねる。
それにミサは「簡単だよ♪」と答え、
「まだ完全に眷属契約は結ばれてないから、きちんとした儀式をして契約を無かったことにすればいいんだよ♪」
と言った。
「じゃ、じゃあそのやり方を教えて下さい!」
ミサから解決方法を説明してもらい、ルナは詳細を教えてくれるよう頼む。それにミサは「それはいいけど……」と言い、
「但し、一度契約を無かったことにすればもう二度と魔人にはなれない」
と静かに言い、
「これはあれだね、魂が魔力を拒絶する事になるからもう魔力を受け付けない身体になるからだよ。だからフォーリアちゃんの取る選択肢は力を失って人間に戻るか、それともルナちゃんの眷属として一生を魔人として過ごすか」
とフォーリアの目を見てミサは言う。
「ご、ごめんフォーリア。私の無責任な行動のせい……」
「謝らないで下さいルナ様」
責任を感じたルナは謝ろうとするが途中でフォーリアに止められる。
「あの時ルナ様が魔力を与えてくれなければ私達は死んでいたかもしれない。……それに」
そこまで言ってフォーリアはルナと正面から向き合い、
「私もお嬢様の蘇生とルナ様の夢を叶える為にルナ様の力になりたいんです。……私の方からお願いしたいくらいですよ、ルナ様の眷属にして欲しいって」
と何の迷いもないような笑顔でフォーリアはそう告げる。
「フォ、フォーリアぁ〜」
「ちょ!ルナ様!?」
ルナは嬉しさのあまりフォーリアに抱きつき、フォーリアは裸同士という事もあって恥ずかしがる。
そんな二人を見て、
「本当に仲が良いんですね♪」
とミサが言い、「せやろ?」とナロが頷く。
「えーと、そしたらその眷属の契約の儀式っていうのはどうやるの?」
フォーリアに抱きつきながらルナはミサに尋ねる。
「そこはこの私に任せて下さい♪」
とミサは胸をポンッと叩き、
「私はこれでも上位悪魔種の魔法悪魔です♪契約関係は全部私にドンとこいです♪」
とふふーんとしたり顔でミサは言う。
それに「「お願いします」」とルナとフォーリアは答えるが、
「二人で盛り上がってるところあれですけど……」
とお酒を飲むカルメアがルナ達を見て、
「あなた達のお仲間のイケメン君はいいのかしら?」
「「…………………………あっ!」」