第1話 魔王軍幹部会(4)
ミサの案内でグランデリシャ内を歩きつつ、ルナ達は自分達の拠点へと向かう。
「到着しました♪」
魔王城から約30分程歩き、目的地に着いたミサはその建物をアピールするかの様に両手を掲げてる。
「ここが……」
ルナはその建物を見上げ思わず息を飲み込んだ。
そして隣ではフォーリアも「えっ……」と驚きを隠せないでいる。
そう目の前の拠点……、ヒナギがルナ達に用意した家は、リーシャとフォーリアが暮らしていたエルフの集落のあの家にそっくりだったのだ。
そんな二人の様子を見て「ふふーん♪」とミサは上機嫌に鼻歌を歌いながらルナと鼻と鼻が触れる距離まで顔を近づけ、
「驚きましたか♪?」
と言って笑顔を見せる。そしてクルッとルナ達に背中を見せ、右腕を掲げて人差し指をチッチと横に振りつつ、
「な・ん・と!魔王様自らこの拠点をルナさん達が使いやすいようにとリフォームしてくれたんですよ♪なんでも最初に会った時から仲間になるって確信してたみたいです♪」
と説明してくれた。
(ヒナギのヤツ、こんなサプライズまで用意してくれてたのか)
ルナは自分の新たな家を見て感動したが、ふと疑問に思ったことがありミサに尋ねる事にした。
「凄く嬉しいんだけど……、コレ、いいの?魔王城より遥かに大きいんだけど……」
そうルナの目の前にある建物は家というより屋敷という表現がしっくりくるほど魔王城より数倍は大きく広かった。屋敷は二階建で広い庭もあり、そして屋敷の入口には立派な門と、そこに"幹部・魔法少女ルナ"と書かれたプレートがつけられていた。
ルナの質問にミサは「大丈夫です♪」と前置きを置き、
「魔王城は他の幹部の皆さんの拠点を含めても一番小さいです♪」
と答えた。
▽▽▽
「魔王様はなんでも"実家のような安心感"?があるみたいで、あの城を構えてるんですよ♪」
新しいルナ達の屋敷の敷地内に入りつつミサがその様に説明する。
(確かヒナギも俺と一緒で異世界転生したって言ってたっけ……。名前といいあの城といい、もしかして同じ日本から来たのか?)
ミサの話を聞いてルナはそんな事を考える。
(まぁ落ち着いたらまたヒナギとそこらへん話そうかな)
そう思い、ルナは屋敷の玄関を開けた。
「おお!中も凄く綺麗だな!」
家の中に入ったロゼがテンション高めに呟き、
「中もあの家と似てますね。間取りや部屋の配置も変わらなそうです」
フォーリアもどこか懐かしむように中をぐるっと見渡す。
「おーやっと来たんやね」
と廊下の方からナロがこちらに手を振りながら歩いてきた。
「あれ?どうしてナロがここに?」
「ウチの拠点、ここの隣なんよ。せやからお隣さんに挨拶と思おてな」
とナロは勝手に家の中に入ってた事に対しては何も思ってないように答える。
「申し訳ございません。勝手に入るのは悪いと思ったんとですが色々と準備をしておきたくて」
そう言ってナロと同じ所から現れたのはユリウスの副官であるカルメアであった。
「我が主様の拠点もルナさん達の隣なので、用事のある主に代わりご挨拶に伺いました」
とカルメアはルナ達にお辞儀をしながらそう言った。
「あ、あぁ、よろしくお願いします」
突然の事にルナは驚きつつ挨拶し、その横では「普通に不法侵入ですね♪」とミサが呟く。
「それより準備とは?」
先程のカルメアの言葉から出た準備についてフォーリアが質問する。
その質問に「待ってました!」と言わんばかりの表情をナロは浮かべ、
「みんなでお風呂に入ろうや!」
と言った。
▽▽▽
「はぁ〜染み渡る〜」
久しぶりのお風呂にルナは生き返った心地になる。
「なんでそんなに一人離れてるん?」
広い浴槽の中、一人離れた隅っこにいるルナにナロは声を掛ける。
「あぁ…………うん」
(リーシャ以外の女性とお風呂に入った事ないからまだ緊張するんだよなぁ)
そんな事を思いながらルナはゆっくりとナロ達の方へ近づく。
魔法少女として転生してから結構経つといっても転生前は女性経験が皆無の男だったルナにとって、美人揃いのお風呂イベントは刺激が強すぎたのだ。
「緊張してるんですか♪?」
そんな風に可笑しそうに笑うのはちょうどルナの隣に来たミサである。メイド服の外からは分からなかったが、豊満なバストと健康的な肉付きのウエストとがとても魅力的な裸体である。
目をそらす様にルナはミサと逆の方を向くと、
「…………?いかがされましたか?」
リーシャ以上のたわわな胸と艶やかなオーラ(なんか凄くエロい雰囲気)を醸し出しているカルメアがお酒を飲みながらこちらを妖艶な笑みで微笑みかける。
(ううぅ…………)
目のやり場に困ったルナは正面を向く。
「ずるいやんカルメア、ウチにもそれ飲みたいわ」
そう言って湯船から立ち上がったナロの全身をルナは見てしまう。見た目相応の胸(実年齢は考慮しないとする)と細い腰周りであるが、濡れた髪を含め何とも言えない色気を出しており、カルメアとは違う意味で艶やかな雰囲気を持つ。
前方左右と逃げ道を塞がれたルナに残されたのは背後のみであった。ルナは意を決して振り返ると、
「いいお湯ですねルナ様」
ペターンという失礼極まりない表現が似合うフォーリアが気持ち良さそうに浸かっていた。
「…………うん、落ち着くね」
フォーリアの胸を凝視しながらドキドキした心をルナは落ち着かせる。
「むっ……何か変な事考えてますか?」
ルナの視線に違和感を覚えたフォーリアがルナをジト目で見てくるので、「なっ、なんでもないよ!」とルナは誤魔化した。
「………………………………うーん」
そんなルナとフォーリアのやり取りを見つつ、相変わらず全身露わにして立っているナロが近づいてきた。
「ど、どうかした?」
ナロの裸体を視界に入れないよううまくナロの方を向きルナは尋ねる。
するとナロはフォーリアをじーと見た後、
「いやなぁ、フォーリアって人間に戻らんの?」
「「……………………………………んん?」」
ナロの言葉にルナとフォーリアは互いに?を思い浮かべて見つめ合った。