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第1話 魔王軍幹部会(2)

 休息を取り五日目、とうとう魔王国へ行く準備が整ったようで、ヒナギの指示のもと集落の中央に全員が集まる。


 全員が集まったのを確認するとヒナギは魔力を高め詠唱を始める。すると地面から特大の魔法陣……、聖王国で各層を移動するためのゲートと似たような物が浮かび上がった。


 「よし!みんな、この上に乗ってくれ!」


 ヒナギの合図で全員魔法陣に乗り、ヒナギが再び詠唱を始めると魔法陣が輝き出し、ふわっと宙に浮いたような感覚をしたと思ったら、見知らぬ町の広場にルナ達はいた。


 そこは聖王国の城下町、下層エリアの町並みよりは少し小さいが、多くの者が行き来をし活気溢れる町であった。


 そして何より目を見張るのは、そこにいるのは人だけでなく、多種多様な魔物もいる事だった。往来では楽しく話している人やドワーフ、恋人なのだろうか腕を組みながら仲睦まじそうに歩く人間の男性とうさ耳の女性、元気よく駆け回っている人間の子供と魔族の子供達。ヒナギの言う通り、そこには人と魔族が共存する空間が形成されていた。


 「あー!魔王様だ!」


 遊んでいた一人の男の子がこちらに気付き、嬉しそうに魔王様と呼びながらヒナギのところへ駆け寄ってくる。それに続くようにそこにいた子供達はみなコチラに走って来て、


 「魔王軍ー!一緒に遊ぼ!」


 「今度はどこに冒険してたの!?またお話聞かせて!」


 「あっ!ナロばあちゃんもいる!」


 「おい!今ババァ呼ばわりしたのは誰や!?」


 目をキラキラさせながらヒナギを見上げる子供達と、ナロに追い掛け回されながら楽しそうに笑う子供達と、その光景を見るだけでここがどれだけ平和なのか伝わってくる。


 「あれ?魔王様、この人達は?」


 ケモ耳を生やした女の子がルナ達に気付き、指をさしてヒナギに尋ねる。


 「俺の新しい仲間だよ」


 ヒナギは簡単にそう言ってルナ達に目を向ける。


 「はじめまして、私はルナだよ」


 とルナは笑顔を振り撒いて子供達に自己紹介する。子供達は「うわぁ……、可愛い」と口にし、


 (やだ!なにこの子達!凄い可愛いんだけど!)


 とルナは思い、おもわずそのケモ耳少女を抱き上げて抱きしめた。


 その女の子も楽しそうに「きゃ〜!」と明るい声を上げ天使のような笑顔を浮かべる。


 ルナに続いてフォーリアとロゼも簡単に自己紹介をする。それをルナに抱かれながら聞いていた少女は、


 「あの二人はルナちゃんのお友達?」


 と聞いてくる。


 「そうだよ〜。私の友達で大切な仲間なんだ」


 「ふーん……」


 ルナの言葉にその少女はルナとフォーリア達を交互に見て、


 「私知ってるよ!ルナちゃんみたいなの、ぎゃくはーれむ?って言うんでしょ?」


 「…………………………………………………………ん?」


 突然小さい女の子の口から変な言葉が聞こえ、ルナ達は固まってしまう。


 「あれ?女の子がカッコイイ男の人に囲まれるの、そう言うんじゃないの?」


 ルナ達の反応を見て戸惑ったのか、不思議そうな表情を浮かべケモ耳少女は尋ねてくる。


 「えーと……、その言葉誰から教えてもらったん?」


 子供達との追いかけっこを中断したナロはこちらに近づきケモ耳少女に尋ねる。


 その質問に少女は満面笑みを浮かべ、


 「カルメアお姉さん!!」


 「あのくそビッチ!!」


 カルメアの名前を聞きナロは声を荒らげ立ち上がる。その際「ビッチって何?」と少女が聞いてきたが、「悪い言葉だから忘れようねー」とルナが苦笑いを浮かべつつ誤魔化した。


 ナロはカルメアを探すが周囲には見つからず、


 「ユリウス!アイツはどこにいったん!?」


 とユリウスに詰め寄る。一方ユリウスは小さい子供がいるのも気にせずタバコを吸い始め、


 「アイツならしばらく男と遊べなくて溜まってるからいつもの店に行くって、到着した途端いなくなったぞ」


 と言い、その言葉を聞き「あのビッチがぁぁぁ!」と言ってナロはどこかに走り去る。


 そしてユリウスも、


 「じゃあボス、俺もそろそろ離れるわ」


 と言い、堂々と歩きタバコをしながら離れていく。


 「ええーと…………」


 ヒナギは気まづそうな表情を浮かべ、


 「まとまりなくて悪いが…………、改めて、よく来たな。ここが俺の国グランデリシャだ」 


▽▽▽

 子供達と別れた後、ルナ達はヒナギの案内で魔王城に向かうことになった。


 一緒に来たエルフ達は、いつの間にか戻ってきていたカルメアが案内するということで別れ、ネリィとルリィは一旦ヒナギが預かり二頭の生活区に転送する。


 あんなに大勢で来たのに気付けばヒナギと一緒にいるのはルナとフォーリアとロゼだけになった。


 「それで魔王城はここから遠いの?」


 グランデリシャの街並みを眺めながら歩きつつ、少し前を歩くヒナギにルナは尋ねた。因みにルナの横を歩いてるフォーリアは先程子供達からナチュラルにイケメン(男)扱いされて凹んでおり、それをロゼが笑いを堪えつつフォローしていた。


 「いや、この街の中央に構えているからもうすぐ着くぞ」


 「??」


 ヒナギの答えにルナは頭にハテナを浮かべる。パッと見町中を見渡しても城らしき建物は見当たらない。


 (もしかして目には見えないように魔法がかかってるのかな?……いや、地下にあるとかも考えられる!)


 何せ魔王の城、前いた世界ではゲームにおいて最終ダンジョンとして位置付けられる魔王の居城なのだ。きっと迫力のある大きい城に違いない。などとルナは密かに楽しみにしつつヒナギに着いていく。


 やがてヒナギはある一軒の家の前に立ち止まった。


 「ここに何か用事でもあるの?」


 ルナはヒナギの横に並んで尋ねる。


 「ん〜なんというかだな……」


 ヒナギは歯切れ悪く口篭る。


 ルナは嫌な予感してその家を見た。パッと見は普通の少し大きめくらいな家にしか見えない。そしてルナ家の入口にあるものを見つけ、


 「…………ねぇヒナギ」


 「何も言うな、言いたいことは分かる」


 とヒナギは観念したかのように溜息をつき、


 「…………魔王城へようこそ」


 ルナはその言葉を聞きやっぱりかと思った。


 ルナはその一軒家の入口にある「魔王城」と書かれたプレートを見つつ溜息をついた。 



 

 

 

 


 

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