プロローグ
月の光が照らす部屋の中で、一人の少女がうずくまっている。
城に隠された最上階の一室、そこに少女は産まれた時から隔離されていた。
とはいえ全くの自由がないというわけでない。制限と見張りはつくが城下町を散歩することもできるし、食事や書物といった娯楽も何不自由なく与えられる。
しかしそれは陽があるうちの話である。
少女は夜になると部屋に強制的に閉じ込められ、朝になるまで一切の自由を奪われる。
「……………………………………寂しい」
少女は自身の長く、サラサラな銀髪を手で梳かしながら呟く。
少女は夜が嫌いだ。夜は少女を孤独にする。
しかしそれは仕方のない事だとも少女は理解していた。
少女の中にある化物の血、それが活発になる夜は、国を護る為にもこういった処置をとるのは当然だ。殺されないだけ幸運なのだから。
「……………………………………………………寂しいよ、お兄ちゃん」
それでも11歳の少女には辛い事だ。自然と兄の名を出してしまう。
少女の歳と10も離れており、この国の王子でもあり、少女を可愛がってくれる大好きな兄。
少女は国の為……というより大好きな兄の為にと、これまでの辛い事を頑張って我慢することが出来た。
だからこそ、毎日行われる地獄のような日課にも少女は耐えられる。