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第9話 聖魔事変〜決戦〜(15)

 「「「「「…………………………………………は?」」」」」


 ルナ、フォーリア、ロゼ、ヒナギ、ナロの五人はユリウスのとんでも発言にフリーズする。一方でカルメアは「やっぱりそうですよね」と頷いた。


 「えーと………………どういう事だ?」


 五人を代表してヒナギが尋ねる。それにユリウスは煙を吐いた後、


 「まぁ確かにこの子の肉体は死んでる。…………けれど魂は死んでない」


 と答えた。その説明にカルメアが補足するように、


 「正確に言えば、死ぬ直前に魂が肉体から切り離されたおかげでまだリーシャさんの魂は無事でいる……ってところですね」


 とリーシャの体をジロジロ見ながら答えた。


 死者を操るユリウスはともかく、どうしてカルメアもそんな事が分かるのか、とルナが疑問を持つと、そんなルナに説明するように横からナロが「あのビッチは淫魔(サキュバス)やから、魂の事は専門分野なんよ」と教えてくれた。


 「でも一体いつそんな事が?」


 とヒナギは疑問を口にする。そしてそれにユリウスは笑いながら、


 「そりゃあ〜あれだ、みんなも見てただろ?」


 と言ってタバコでルナ(・・)の事を指しながら、


 「そいつと熱烈な口付けをした時さ」


 と告げた。


▽▽▽

 ユリウスとカルメアの説明を要約すると、ルナが暴走してそれを鎮めるためにリーシャがキスを通して魔力を送った際、リーシャの魂も一緒にルナの中に取り込まれたようだ。実際に魂を見る事が出来るカルメア曰く、今もルナの中にはルナ以外にもう一つ魂があるらしい。


 そういえばロイターとの戦いの最中、一瞬リーシャの声が内から聞こえてきた気がしたが、それはルナの中にリーシャの魂があるからなのかもしれない。


 そしてユリウスが言うには、生物は肉体と魂が相互にリンクする事で活動する事が可能となり、どちらか一方でも欠ければ機能停止となってしまう。基本的に生物は肉体が先に死を迎え、肉体が死んだとほぼ同時に魂も滅する。しかしリーシャの場合、肉体が死ぬより先に魂が分離されたので、魂は無事にルナの体内に保護された。そして更にエルフの王族の血の特性と死ぬ直前のリーシャの覚醒のような状態のおかげで、肉体も完全には朽ちていないようで、リーシャの魂を肉体に戻す事が出来れば、生き返らせる事も可能らしい。


 「じゃあ私の中から早くリーシャの魂を取り出して!!」


 一通りの説明を聞いたルナは早速そのようにユリウスにお願いする。


 しかしユリウスは深くタバコを吸ってから、


 「それは無理だ」


 と簡潔に、そしてキッパリと言った。


 「どうしてだ?魂と肉体の融合は死霊術師のお前の十八番だろ?」


 ルナに変わってヒナギが尋ねた。


 「ボス、今回のはかなりのイレギュラーだ。俺もこんな状態は初めて見る。…………俺の死霊は、死んだ魂を召喚してソイツの身体に強引に結びつける事で成り立っている。けどエルフ娘は魂は生きてるんだ。そんな状態じゃあ俺の魔法は使えない」


 とユリウスは答えた。


 「それともう一点、蘇生が難しい点があります」


 とカルメアが口にする。


 「ルナさんの体内にリーシャさんの魂がある……、これは間違いありません。しかしリーシャさんは魔力を媒介にルナさんの中に入り込んだので、魔力と魂が融合してしまっています。…………更にリーシャさんの魂はまるで深い眠りについているかのように反応しません。…………こうなればこちらからリーシャさんの魂を取り出すことも、リーシャさんの魂の方からルナさんの外に出ることも現状できないのです」


 と話してくれた。


 「つまりリーシャを生き返らせるには、リーシャの魂を私の中から取り出す方法とその魂をリーシャの体内に戻す方法を見つけなきゃいけない……ってこと?」


 ルナの言葉に「「そういう事だ(です)」」とユリウスとカルメアは答えた。


▽▽▽

 リーシャの事を話し終えた後、ルナ達は生き残った集落のエルフ達と一緒に集落の復興作業をしていた。


 しかし、森は焼かれ、建物は壊され、地面には大穴、とてもじゃないが元通りにするのは無理だろう。


 「少しいいか?」


 作業から離れて少し休んでいたルナにヒナギが声を掛けてきた。


 「ルナ、これからお前はどうするんだ?」


 「そんなの決まってるよ、リーシャを生き返らす方法を探しに行く」


 ヒナギの質問にルナは即答する。


 実際ユリウス達の話を聞いた後、ルナはフォーリアとロゼと三人で今後のことを話し合い、満場一致でそうする事にしたのだ。


 「ヒナギ達はどうするの?」


 今度は逆にルナが質問する。


 「そうだなぁ…………」


 ヒナギは辺り一面に広がる戦いの傷跡を見て、


 「とりあえずあのエルフのみんなを俺の国に招こうと思う」


 とヒナギは言う。聞けばヒナギが魔王として治める国は、人も魔族も分け隔てなく仲良く暮らしている国らしい。


 聖王国を見てきたルナにとっては想像も出来ない話である。


 「人と魔族の共存か…………、それが全世界で実現出来れば平和なのにね」


 ルナは本心からそう思い口にする。


 「…………そこでなんだが」


 と突然ルナの肩に手を置き、ヒナギは真正面からルナの顔を見つめる。


 「ルナ…………、お前も俺の所に来ないか?」


 「え……………………?」


 ヒナギの誘いにルナは困惑する。


 そしてヒナギは続けざまに、


 「今回の一件でルナ達は完全に聖王国にマークされる。そうなれば聖王国側…………、いや最早人類から迫害されるといっても過言じゃない。そうなればきっとこの先の旅は過酷で困難なものになる」


 と説明し、


 「それに俺自身ルナの力を借りたいっていうのも大きい。当然俺もリーシャの父のルーシアとの約束もあるからリーシャを生き返らすのに全力で協力する」


 と話す。そして、 


 「さっきルナの言った、()()()()()()()()()()()、それは俺の夢でもあるんだ」


 と手に力を込めヒナギは語る。


 「ルナなら、いやルナとならそんな世界を作れると俺は思う!………………どうかな?」


 そう言って再びルナの瞳を覗き込んでヒナギは尋ねる。


 ルナはヒナギの言葉を聞き、考える。確かに彼の言う通り、このまま旅をしても、良い方向に向かわないだろう。ならいっそ魔族としてヒナギ達の仲間になるのは良いのではないか。


 とか色々考えたが、


 「………………いいね」


 「ん?」


 ルナは率直に思った事に笑みを浮かべる。


 (きっとリーシャも同じ事を思うだろうな)


 「その素敵な夢が叶うのを見てみたい。…………だからこれからよろしくね」


 そう言ってルナはヒナギに手を差し伸べた。


 そしてヒナギはルナの言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべて握り返し、


 「歓迎するよルナ!…………()()()()()()()()()()()!!」


 「…………………………………………………………………………ん?」


 こうして魔法少女ルナは魔王軍の幹部となった。

 


 


 

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