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第9話 聖魔事変〜決戦〜(4)

 「小娘って〜、子供扱いすんなし〜。…………はぁ〜、マジむかつくわぁ〜」


 ミラージェは指ポキをしつつナロを睨みつける。


 一方でナロはそんなミラージェを小馬鹿にするように、


 「こんな軽口でいちいちイラつくのも子供やねぇ。まぁウチからしたら人間なんてみーんな幼子みたいなもんやけどなぁ」


 と煽る。ひたすらにミラージェを煽った。


 実際ナロは見た目こそ20代前半に見えるが、年齢はゆうに三百を超えている。元々妖狐が長寿の魔族というのもあるが、ナロはその中でも伝説の妖狐と呼ばれる存在であり、一部地域では神として崇められたりしている。

 

 なので当然10代後半のミラージェはナロにとって特に幼く見えるのだが………………、


 「要は〜、アンタが年増のオバサン(・・・・)って事でしょ〜」


 とミラージェはナロにとっての禁句(・・)を口にしてしまう。


 「………………今なんて言うた?」


 ナロとミラージェの間の空気が一瞬で凍りつく。


 「いやだから〜、オバサ…………」


 「誰がババァやぁ!!!」


 ナロはミラージェが言い終える前にぶちギレる。その怒りは尻尾が一本増える(・・・・・・・・)程であり、


 「え〜………………、人の事ガキ扱いしといて〜、オバサン呼ばわりしたらキレるって〜、イミフ過ぎるんですけど〜………………」


 ミラージェも思わず引いてしまう。


 「コレは徹底的にシバかにゃいかんなあ」


 そう怒気を込めながらナロは言い、次の瞬間


 ()()()姿()()()()()


 「!?」


 突然の出来事にミラージェは驚く。


 ただ姿が見えなくなるだけなら、ミラージェにとっては大した問題では無い。格闘術を得意とするミラージェは相手の気配を感じ取るのは朝メシ前であり、それこそ自分は目を瞑っても相手の動きを読み取り戦う事も可能だ。


 しかしナロは違った。


 ナロは姿だけでなく、ミラージェが感じ取れる呼吸や動いた素振り、また相手が動いたことで揺らぐ空気、そういった気配じみたものも全て消していた。それこそ存在そのものを消したかのように。


 「ほらどうしたん?ウチはここにおるで?」


 どこからかナロの声が聞こえてくる。しかしそれがどこから聞こえてくるのがミラージェには分からなかった。


 そうしてナロを探している内に、


 「…………グッ!?」


 突如ミラージェの腹部に衝撃と痛みが襲う。どうやらナロがミラージェに蹴りをいれたようだ。


 そして蹴られる直前も蹴られた直後も一切気配は感じられなかった。


 「それなら〜…………、コレはどう!」


 ミラージェはナロを追うことを一旦諦め、全方位にスパークを放つ。


 姿が消えたところで実体はある筈である。ならば自分を中心に全方位を攻撃すれば効果はあるとミラージェは踏んた。


 そしてミラージェがとったこの行動こそ、ナロの狙いであった。


 (如何に聖騎士とはいえ力は無限では無いからなあ。…………悪いけど、このまま消耗戦とさせてもらうで!)


 そう、聖騎士の持つ聖武器も魔道具の一つである。そして魔道具には使用限度があり、エネルギーが切れればただの武器となる。


 そうなれば聖騎士の脅威は半分以下になり、戦闘が強くないナロにも勝機が出る。


 そこからナロはミラージェの攻撃の隙をついては攻撃を仕掛けた。


 基本的にナロの攻撃手段は蹴りが多い。ただナロの蹴りは普通では無い。蹴る際に足に魔力を込めることで威力は上がり、また妖狐の魔力の性質によって喰らった相手はナロに生命力を奪われ、そのエネルギーはナロの魔力として吸収される。つまりナロの攻撃が当たれば当たるほど、ミラージェは徐々に弱まりナロは強くなっていく。


 そしてナロの妖狐としてのもう一つ特異性(・・・・・・・)がある。


 「ほれ、どうしたん?威勢の割には大したことないやんか」


 わざとミラージェの前に姿を現して煽るナロは、


 六本の尻尾を煌めかす(・・・・・・・・・・)


 ナロの妖狐としての特異性…………、九尾(・・)


 ナロが神格化されたのは妖狐族でも千年に一度現れるとされる、九尾の能力を持って生まれたからだ。


 妖狐族の最初の先祖である九尾狐は、自身の中に眠る莫大な魔力を尾を媒体にして使用する事が出来た。当然ナロも同じであり、普段は使用出来ないが内に眠る魔力量だけで言えばこの世界で一番(・・・・・・・)である。


 そして尻尾一本増やす度にナロの魔力は倍になっていく。つまり今のナロは平常時と比較し、64倍の力を有していた。


 とはいえ、もちろん無尽蔵にこの能力を使える訳では無い。それぞれ尾の本数によって制限時間があり、それは尾が増える毎に短くなる。また、しばらくの間魔力を使えなくなるというデメリットもあり、特に七本目からリスクの高さが急激に上がり、()()()()()()()()()()()()()


 なのでこの後のことも考えると尾の数は6本でキープしたいのがナロの本音であった。


 (とはいえあの小娘からエネルギーは頂いてるから、まだ余裕はありそうやねえ)


 ナロはミラージェが攻撃を止めるタイミングを見計らいながらそう思った。このままいけば相手がガス欠するまでは魔力が持ちそうだ。


 ……………………しかし、次にミラージェがとった行動はナロの予想を裏切るものであった。


 「………………………………………………………………ふぅ〜」


 ミラージェは完全に構えと聖武器を解き、無防備な状態で立ち尽くす。


 そのあまりにも無防備な姿にナロは困惑し、それと同時に焦る。


 (クッ…………、コレやとこっちから攻め込まんと先に魔力が切れてまう)


 相手が動かない以上ナロはただ消耗するだけである。………………かと言ってこっちから仕掛けるのも少し躊躇われる。あの隙だらけに見えるミラージェは何かを狙ってるに違いないのだから。


 しかしこれでは埒が明かない。


 となればナロが取る行動は必然的に一つになる。


 ナロはミラージェ目掛けて走り出す。


 (小娘が何かする前に一撃で沈めたる!!)


 ナロはありったけの魔力を右足へ一点集中し、思いっきりミラージェにかました。


 ナロの攻撃はミラージェにヒットする。エネルギーも吸収できているので確実に仕留められた…………、


 「!?」


 「やっと捕まえたよ〜」


 ナロの渾身の一撃をモロに喰らった筈のミラージェは倒れること無く、そのままナロの足を捕らえる。そしてそのままナロに大量の電流を流し込んだ。


 「がぁぁぁっ!!」


 突然のダメージによりナロの姿隠しを解けてしまい、それをニヤリと笑ったミラージェは雷を込めた拳をナロにぶつける。


 ナロはうまく魔力を集めて急所を守ったが、ダメージと衝撃は消しきれず、吹き飛ばされてしまう。


 「アハハ〜、小娘とか侮るからこうなるんだよ〜」


 ミラージェは倒れるナロを見下ろしながら、ゆっくりとナロの方へ歩いていく。


 「…………なんでウチの攻撃が効かへんのや…………」


 ナロは息を荒らげミラージェを睨みつける。


 そしてそれにミラージェは当然と言わんばかりに、


 「そりゃあ〜気合と根性的な〜?」


 「くっ、この脳筋が!」


 こうしてナロとミラージェのて戦いは形勢逆転した。


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