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第8話 聖魔事変〜交錯〜(5)

 「皆さん乗りましょう!」


 カルメアの一言でルナ達は次々と馬車へと乗り込んで行く。そして全員の乗車を確認し、


 「それじゃ、一気に聖王国を脱出するぜ」


 ロゼは馬を叩き走り出させる。よく見るとその馬は普通の馬ではなかった。体格そのものは普通の馬と何ら変わりは無いが、瞳は紅く、額には一本の角が生えている。その姿から魔獣なのではとルナは推測する。


 その魔獣は物凄いスピードで走り出し、前方の集団は慄いて道を開けるのが大半で、中には身を呈して止めようとした者もいたが、衝突の衝撃で吹き飛んでしまった。


 「おいお前、この魔獣…………」


 ユリウスはこの魔獣を知っているのだろうか。その姿に少々驚いているように見える。


 「………………はい。お借りしました」


 そんなユリウスにロゼは頷いて答える。


 魔獣のスピードに任せて進み、あっという間に国の外へと繋がる門の近くまで辿り着いた。


 普段は開いているその門も、今の非常事態によってか閉ざされている。


 流石のこの魔獣の突進力を持ってしても、突破するのは無理そうだ。


 「私に任せて…………」


 城から離れた為か、ルナに付けられた拘束魔道具の効力は弱まってる様に感じ、魔力を練れるのを確認すると、ルナは魔法少女へと変身し、馬車から身を乗り出してステッキを門へ向ける。


 「巻き込まれる人がいたらゴメンなさい…………。螺旋魔力弾(スパイラルショット)!」


 ステッキから放出された魔力弾は門へと直撃し、門に大きな穴を開ける。


 「さすがルナだな!」


 ロゼはルナに拳を掲げ、その拳にルナも自分の拳を重ねる。


 そしてそのまま門の外へと飛び出し、ルナ達は聖王国からの脱出に成功する。


▽▽▽

 聖王国から出た後も、ロゼは馬車を走らせ続ける。これだけの騒動を起こしたのだから、追っ手が来るのは間違いない。離れるだけ離れるのに越したことはない無いだろう。


 ロゼは街道を走り続け、やがて右手に森が見えてくるとその中に入っていく。


 「この先で落ち合う事になってるから、そこまで一気に駆け抜ける」


 と馬車から身を乗り出していたルナにそう言った。


 「落ち合うって誰と?」


 「この魔獣を貸してくれたヒト」


 とロゼは魔獣を撫でながらそう告げる。


 しばらく森の中を駆けて行くと、やがて広いスペースへと辿り着いた。ここが目的地のようで、ロゼは馬車を停めた。


 ロゼは辺りをキョロキョロと見渡し、やがて目的の人物を見つけたのか手を振る。


 ルナはその先にいる人物に視線を向ける。


 「あれ?ヒナギじゃん」


 そこには以前、旅の途中に出会ったヒナギがいた。今日は一人のようで、あの時いたオニヒメは見当たらない。


 「やぁ、待っていたよ」


 そう言って笑顔で手を振りながらヒナギはこちらへ歩いて来る。


 そしてルナの横からユリウスが顔を出し、


 「やっぱりか…………。来てるなら来てるって言ってくれよ。…………ボス(・・)


 とユリウスはそうヒナギに言う。


 「は?え………………ヒナギがボス?」


 ルナは混乱する。ヒナギがユリウス達のボスという事は…………、


 「じゃあ改めてだな。俺は魔王のヒナギ・スメラギ、この世で恐れられている魔王軍のトップだ!!」


 とヒナギこと魔王は高らかに笑いながらそう言った。


▽▽▽

 そんな光景を見ながらロゼは少し前のことを思い出す。ロゼは魔獣を借りるにあたり、彼の正体が魔王だと聞かされていた。最初は冗談だと思っていたが、彼と少し行動する内にそれが本当だと思い知る。


 とはいえ彼と出会ったのは、ほんの少し前である。ロゼはハミネ町へ送還されてる途中、ルナ達を助ける為に運転手を脅して馬車を乗っ取り、そのまま聖王国へと戻った。途中城の方から爆発音の様なものが聞こえ、きっとルナ達が何かに巻き込まれてると確信し、国の門まで辿り着いた。


 しかし門の前には多くの兵士が警備をしており、ロゼ一人では到底突破出来るものでは無かった。


 そんな時だ。ロゼが焦り、どうするか考えてる中背後から声がした。


 「俺が助けてあげるよ」


 その男は自分の事を「魔王」などと言い、自分は聖王国に入る事はできないから、代わりに彼の仲間とルナ達を助けて欲しいと言った。


 ロゼは当然その男の言うことを信じられなかったが、「ちょっと待ってね」とその男が言った瞬間、彼の姿は消え、数秒後に姿を見せると彼は門の方を指さす。そこには先程警備した2〜30はいたであろう兵士が、全員気絶していた。


 「今は無理に信じなくて良いよ。…………でも君も仲間を救う為に、なりふり構っていられないんじゃない?」


 と言われ、ロゼは彼の指示に従うことにした。 

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