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第8話 聖魔事変〜交錯〜(4)

 「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬーー!」


 落ちながらリーシャは絶叫する。みるみる内に地面が見えてきてもう間もなく衝突してしまうだろう。


 「逃げ出してる最中なんだからあんま大声出すな」


 耳元でそんな声が聞こえ、それと同時に落下は止まり、リーシャの身体は宙にぷかりと浮かぶ。それは隣で浮いているユリウスがリーシャの服の襟を掴んでいるからであ………………………………、


 |(って締まってる、締まってる!首元、締まってる!)


 空中で襟を掴まれてることで自然とリーシャは首を吊るされてる状態になる。


 リーシャは窒息しかけて声を発せられないので、ユリウスに涙目で睨みながら胸を叩いて、苦しいアピールをする。


 「あっ、悪ぃ」


 ユリウスはリーシャの腰へ手を回し、そのままゆっくりと地上へ降りていく。


 そして地面に着くなりリーシャは地に手と膝をつけ俯く。


 「はぁ……はぁ……、死ぬかと思った。二回も!死ぬかと思ったんだけど!?」


 とユリウスを涙目で睨みつける。因みに突然の死の恐怖にリーシャは膝が震え、立てないでもいる。


 「まぁまぁ、無事に出れたんだから良いじゃねえか」


 ユリウスは笑いながら屈んでリーシャの頭に手を置く。そして国の外を見て、


 「まぁ安心するのはこのイカれた国を出てからだけどな」


 と呟いた。


 むむむ、とユリウスに対して感謝とか怒りとか色んな感情が混ざりあってる中、こちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。もう追っ手が来たのかとリーシャは焦ったが、それは知ってる顔の人の物だった。


 「主様、お待ちしておりました。…………無事に助け出せたようですね」


 と赤いドレスを綺麗に着こなす美女は言う。彼女は中層のあのレストランで音楽を奏でていた人だった。


 「アナタも久しぶりね」


 とその女性はリーシャの事を当然知っていたようで、こちらにウインクをして微笑みかける。


 「てかお前、何でこんな時にそんな派手な格好なわけ?」


 「先程まで、この国のイケメン貴族と熱い夜を過ごしていたので」


 「………………一応、上司の俺が敵地に忍び込んでいたんだけど?」


 「はい、ですので今日はお相手を二人に留めておきましたよ」


 「………………この淫乱が」


 とユリウスはその女性と軽くやり取りをし、


 「あぁ、一応こんな痴女だが、俺の副官だ。味方だから警戒しなくて良い」


 とリーシャに言う。それに合わせてその女性、


 「では改めまして…………。魔王軍幹部・死霊術師(ネクロマンサー)ユリウス軍の副官を任されてます、カルメアと申します。以後よろしくお願いしますね」


 とカルメアはビッ…………、聞いた情報とは異なり、清楚で礼儀正しい印象でリーシャに挨拶をした。


▽▽▽

 リーシャ達はカルメア先導のもと、夜の中層エリアを駆けていく。


 カルメアはただ男を漁っていただけではなく、それとなく虜んで転送魔道具の起動鍵を入手していたらしい。


 やがて転送エリアに到着すると、カルメアは魔道具を起動させ、リーシャ達は無事に下層エリアへと到着した。


 「フゥ…………、ここまで来たらこの国を出るのもあと少し…………」


 「こんにゃろーー!」


 「ガハッ」


 突然ユリウスが吹き飛んだ。イキナリの事にリーシャは目をパチクリさせる。


 するとユリウスが立っていた場所に尻尾を生やした女性が立っていた。


 「イテテ……、イキナリ何すんだよナロ」


 「第一声がそれなん!?テメェの無茶苦茶な行動でこっちは大変やったんやで!?尻尾五本(・・)も出したわ!!」


 とユリウスからナロと呼ばれた女性は、怒り心頭でユリウスに詰め寄り地団駄を踏む。


 状況が全く飲み込めず、呆然とその光景を眺めていると、


 「…………リーシャ!」


 「お嬢様!」


 とても馴染み深い声が背後から聞こえて来た。


 リーシャはその声に胸を高鳴らせ振り返る、


 「………………!ルナさん!フォーリア!」


 そこには愛しい仲間の姿があった。


▽▽▽

 「はいはーい、感動の再会だったり、因縁の鉢合わせだったり各々いろいろありますが、今はそれどころでは無いですよー」


 と手を叩きながらカルメアさんはみんなに向かって声を上げる。


 「そうだね。まずはこの国から逃げないと。…………でもその前に」


 とルナは言い、フォーリアに「降ろして」と伝え、覚束無い歩きでゆっくりとユリウスの所へ向かう。


 「ありがとう、リーシャを助け出してくれて」


 「別にボスに言われたからやっただけだ」


 ルナはユリウスに頭を下げて感謝の言葉を述べ、それにユリウスは気にするなという態度で返す。


 「それじゃあこのまま一気に行くぞ」


 とユリウスは言い、「まだ言いたい文句はぎょーさんあるんやけどな」と言いつつも、ナロもその方針に同意した。


 そしてまだ走る元気は無いルナをフォーリアが背負い、先頭からカルメア、ユリウス、リーシャ、ルナ・フォーリア、そして殿にナロの並びで街を駆けて行く。

 

 「おいナロ!流石にこの人数は目立ちすぎる!全員に潜伏の魔法かけられねぇか!?」


 「どっかの誰かさんのせいでそんなに魔力の余裕ないわ!」


 と魔王軍幹部同士で言い争いを始める。


 そうこうしている内に、目の前に集団が現れた。


 「チッ、一気に蹴散らすか」


 「それはやめた方がええな。後ろからヤバい気配がプンプンやわ。今は一刻も早く進むべきやわ」


 と顰め面をしてナロが言う。 


 「こりゃあちょっとヤバいかもな…………」 


 とユリウスが苛立ちを露わにする。


 その時だった。


 前方の集団とルナ達を遮るように一台の馬車が猛スピードで突っ込んで来た。


 「早く乗って!」


 そしてその馬車を運転していたのは、もう1人の仲間、ロゼであった。


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