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第8話 聖魔事変〜交錯〜(3)

 「…………どうしてあなたがここに?」


 突然の魔王軍幹部であるユリウス登場に、リーシャは動揺してしまう。


 そしてそんなリーシャの都合はお構い無しと言わんばかりに、ユリウスはタバコを吸いながら部屋に入ってくる。


「ボスの命令だ。いいから付いてこい、ここから出るぞ」


 そう気だるそうにユリウスは言い、吸いきったタバコを床に捨て足で火をもみ消す。


 「ちょっと待って!ここから出る前にルナさんを助けないと!」


 「ルナ?…………あぁ〜、あん時の女か」


 ユリウスは新しいタバコに火をつける。彼がタバコを吸ってないところは見たことない。


 「この期に及んで自分よりお友達の心配とはなぁ…………」


 ユリウスは呆れた表情を浮かべるが、


 「安心しな、ルナって奴も少し前に別の仲間が救出したみたいだ。なんかフォーリアっていうのも一緒みたいだぞ」


 とどこか優しい口調でユリウスはそうリーシャに告げる。


 「…………良かったぁぁ〜」


 その言葉を聞き、安心した瞬間張り詰めていた糸が切れ、リーシャはヘナヘナと座り込む。


 「安心するのはこの国を出てからにしな」


 ユリウスは溜息をつき早く部屋から出るよう促す。


 部屋を出ると一本の道があるだけで、他に部屋らしき物も何も見当たらない。


 「ここはどこなんですか?」


 「…………位置だけでいえばこの国の中層と上層の間だな。なんの為の場所なのかは俺も分からん」


 と律儀にも聞いた事にはちゃんと答えてくれる。


 こうしてリーシャはユリウスと二人でどこかも分からない暗い道を二人で歩くことになる。ユリウスは自分を助けてくれるようだが、やはり不信感…………というよりは気まづさが強く、何ともいえない空気が二人の間に流れていた。その為リーシャは歩いている間はユリウスと一定の距離を保ち、下を俯いている。


 「…………あのよぉ、俺が言える立場じゃねぇが、そこまで警戒しなくてもいいぞ?」


 ユリウスの方も気まづくなったのか、後ろを振り返り困った表示を浮かべる。


 「あっ、はい。…………すいません」


 思わずリーシャは謝ってしまう。それにユリウスも諦めた様に溜息をつき、再び歩き始める。


 どれくらい歩いただろうか、変な雰囲気が漂う中移動してたので体感は長時間に感じたが、そんなに疲労感も無いので実際は大した距離ではなかったのかもしれない。やがて道の先に一部、光が差し込んでる場所があった。


 「ほら、着いたぞ」


 そう言ってユリウスはリーシャを呼びつける。


 呼ばれるがままにその場に向かう。


 光の正体は、穴の空いた壁から射し込んでいる月明かりだった。どうやらここからユリウスは侵入し、脱出する計画らしい。


 「こんな大胆に穴開けて大丈夫なの?」


 「問題ないさ」


 リーシャの不安を嘲笑うかのように、ユリウスは不敵な笑みを浮かべる。


 「もっと大胆な穴開けりゃ、嫌でもそっちに注目いく」


▽▽▽

 「はぁ……はぁ……、あのクソ神父!」


 ナロは怒りを全く隠すことなく、叫びながら走っていた。


 その隣をルナを背負ったフォーリアが追走する。ルナは身体に付けられてる魔道具によって力が出せないようで、こうしてフォーリアが背負うことになった。


 背後から多くの兵士が追ってきてるのだろう。 多数の足音と声が聞こえてくる。


 そもそも何故こんな状況になったのかといえば、ルナを助け出し、リーシャを探しに行こうと部屋を出た途端、けたたましい爆発音が聞こえてきたのだ。異変に気付いた兵士達が次々と駆け寄り、こうして今の状況が出来上がった。


 「クソったれ、とりあえずあの馬鹿がエルフの姫を救出したみたいだから、ウチらもさっさと逃げ出すよ!」


 どうやらこの騒動を利用し、ナロのいうもう片方の仲間、あのユリウスがリーシャを見つけだしたようだ。


 「来た時のように潜伏の魔法を使えば良いのでは?」


 ナロの横で走りながらフォーリアは尋ねる。


 「そんな流暢な事してる場合か!?この事態にさっきの聖騎士が戻って来たらウチらは終わりや!!」


 最早最初の頃の落ち着いて余裕のあったナロはそこにいなかった。


 やがて後方だけでなく正面からも追っ手が現れ、三人は挟み撃ちされてしまった。


 「あぁぁぁ!ウチは正面切っての闘いは専門じゃないのにーー!」


▽▽▽

 「それじゃあ先に行け」


 そう言ってユリウスはリーシャに穴から出るよう促す。それに従って穴の前に立ち、


 「…………………………………………………………………………」


 リーシャは無言で固まる。


 「何をチンタラしてるんだ?早くしないとここにも敵さんが来るぞ?」


 「…………………………………………………………」


 が以前とリーシャはフリーズしている。


 やがてリーシャは穴を指さし、引き攣った笑みを浮かべ、


 「一つ確認したいんだけど、この穴から出るの?」


 「そうだと言ってんだろ?」


 リーシャは何かの間違いだと思い聞くが、ユリウスの答えは変わらなかった。


 「え〜と………………、下が見えないんだけど?」


 「そりゃあ崖の間から侵入したからな」


 「………………それで?もしかしてここから飛び降りろと(・・・・・・)?」


 「そう言ってんじゃん」


 「馬鹿じゃないの!?」


 思わず魔王軍幹部相手に怒鳴ってしまう。でもそれは仕方ないじゃないか。ちょうど夜という事もあり、下の地面がまるで見えない。こんな高さから飛び降りたら間違いなく死ぬ。


 「…………ったく。いつまでもグズグズしてんじゃねぇ!………………てい」


 ドンッ


 とそう言ってユリウスはリーシャのお尻を軽く押すように蹴る。そしてその衝撃でリーシャの身体は空中に投げ出され、


 「んにゃーーーーー!!!!!」


 そのまま重力に従って落ちていった。 

 


 


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