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第8話 聖魔事変〜交錯〜(2)

 「ここはどこなんですか?」


 走りながら横にいるナロに話しかける。


 「はぁ……はぁ……、ここはこの国の中層と下層の間、ってところやねぇ」


 息を切らしながらナロはそう説明し、そしてそのまま立ち止まってしまう。


 「はぁ……はぁ……、あかん、少し休ませてや……」


 そう言ってナロは膝に手を置き息を整える。


 薄紫色の髪と耳は大量の汗で湿っており、その姿に女性の私も少しドキッとしてしまう艶めかしさがあった。


 「あ……アナタは魔王軍の幹部なのでは?」


 気持ちを紛らわす為にナロに話を振る。その問にナロは申し訳なさそうに笑いながら、


 「ウチは魔王軍の中で隠密や諜報の担当でなぁ、潜入や変装、誘惑や闇討ちは得意やねんけど、体力はないねん……」


 とナロは告げる。そして休憩と奏して簡単にここまでの経緯を教えてくれた。


 ナロは魔王の命令で、この国で囚われてるであろう

昔の恩人であるエルフの王の一人娘、つまりお嬢様の救出に来たそうだ。何故この国で囚われているのかを知ってるかといえば、魔王は昔からお嬢様の事を遠くから気にかけつつ、見守っていたらしい。


 なのでこの国にロスターや奴隷を仕入れする商人に化け、潜入したそうだ。因みにハウスさんは実存したらしく、接触した際に誘惑して虜にしたそうだ。その時を再現するかの様に着ている服をはだけさせ、色目を使ってフォーリアを上目遣いしてきたので、フォーリアは少し赤面しつつ顔を逸らした。


 また、実際にハウスさんに運ばれていた奴隷はこの国に来る前に解放し、大量のロスターは処分したようで、私が見た物は全て幻覚との事だ。


 「この国には大きな崖があるやろ?実はあの中は奴隷の収容施設になっててん。もう一人ウチらの仲間も別口から忍び込んで、二手で探す手筈やねん」


 一通り説明し終える頃にはナロの体力もある程度回復したようで、再び私達は歩き始めた。


 私達にはナロが潜伏の魔法をかけているみたいで、周りからは私達の姿や声は確認出来ないみたいだ。なのでこうして堂々と休んだり走ったり話をしたりする事ができる。


 「では何故そんな中、私の同行を許してくれたのですか?」


 「ああ、それはなぁ……」


 と私の質問に答えようとした瞬間、ナロは焦った様に正面を向く。そして、


 「ちょっとウチと手を繋いで気配を殺してくれへん?」


 とナロは言った。私は言われるがままにナロの手を握る。するとナロは魔力を高めてるのか集中し始め、それに合わせて一本だった尾が四本(・・)に増える。


 「こちらへ」


 ナロはわたしの手を引き壁際に向かう。


 「壁に寄り添ったまま息を殺して」


 口調が少し変わってしまうほどナロが焦っているのを感じ取り、フォーリアは指示に従う。


 手を繋ぎながら息を潜める事10分ほど過ぎただろうか、コツン……コツン……と足音が聞こえてくる。誰が来たのか確認しようとすると、


 「動かないで」


 小声でナロが警告する。どうやら足音の正体がナロの警戒対象らしい。


 近づいてくる足音にフォーリアも緊張を張り詰める。


 そうして足音の主が私達の前を通りかかった。


 |(ルキアート!?)


 この国の軍事の要、聖騎士、敵か味方なのかイマイチ分からないその男がそこに居た。


 ルキアートはゆっくりと私達の前を歩いて行く。途中、何かの気配を感じたのか立ち止まり、辺りを見渡すが、やがて歩き始めた。


 ルキアートが目の前を通過して更に10分程待った。そしてナロは私から手を離し、そのまま壁に寄りかかったまま座り込む。


 「はぁ…………ホンマに焦ったわぁ。どないこんなとこに聖騎士がおるんや?」


 座りながら深呼吸をし、ナロは落ち着きを取り戻す。それに合わせて尾も一本に戻っていた。


 「それにしてもあの状況でコチラの気配に気付き

かけたのは流石やねぇ」


 と苦笑いを浮かべる。


 「あっ、!せやせや、さっきの話の続きやけどな」


 とナロは私にとびきりの笑顔を見せ、


 「ウチ、仲間の為に必死に動く人大好きやねん」


 そう言ってナロは再び立ち上がり、ルキアートが来た道の方へ歩き始める。


▽▽▽


 しばらく歩き続けていると、


 「この先から強い魔力を感じるなあ」


 とナロは呟き、更に歩くと一つの部屋に辿り着く。そしてその部屋の前に立つと、


 「…………!ルナ様!」


 そこには囚われの身になっているルナがいた。


 当然今も潜伏の魔法が掛かっているので、ルナからはコチラの姿や声は気付けない。


 「はいはい、ちょっと待ってなぁ」


 そう言ってナロは指をパチンと鳴らす。そのタイミングで潜伏の魔法は解けたようで、急に目の前に現れた私達にルナは驚く。


 「えっ!フォーリア!?」


 「はい、助けに来ました」


 私はやっと会えた仲間に少し目を潤せ、そう言った。



 

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