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第8話 聖魔事変〜交錯〜(1)

 「どうも、例の商品をお持ちしました」


 「うむ、ご苦労」


 一人の男が大きな馬車を引き連れ、関所で中層エリアへと繋ぐゲートの門番に書類を渡す。その書類に目を通した門番はその男の通行を許可し、ゲートを繋げる魔道具の起動を始める。


 その男はハウスと名乗っていたが、名乗った直後にコレは偽名だとも言っていた。とりあえず一緒に行動する上で、この名を使って欲しいとの事だ。


 ハウスの仕事はこの国の上流階級、貴族へ直接品物を届ける運び屋であり、この馬車の中身は様々な地域から取り寄せた多種多様の高級品である。


 ……………………………………………………………………………………

というのが表向きの顔だ。


 「………………………………………………………………」


 馬車に積まれた荷物を見てフォーリアは最初唖然とした。確かに所々には酒や衣服といった見るからに高そうな物も積んでいる。しかしそれは全体の一割程度だった。残りの4割は木の箱が積まれていた。一箱空いている箱があり中身を覗いてみると、そこには白い粉が入った透明な袋が敷き詰められていた。フォーリアはそれを見た事は無かったが、それが何かは知っている。ロスター…………、摂取した者に一時的に強い快楽を与えるが、中毒性がかなり高く、一度口にしただけでロスター無しでは生きて行けなくなると言われ、その危険性から各国で違法の薬物として扱われている。当然この国でもご法度の筈である。


 しかしフォーリアはこの大量のロスターに唖然とした訳では無い。


 問題は残りの五割の方だ。馬車の半分から奥には一つの大きな檻が置かれていた。そしてその中には、10人ほどの人や亜人が目と口を塞がれ、手足を拘束されて収監されていた。


 ハウスは告げる。曰く、ここに積まれているのは聖王国に反旗を翻し、そして敗れた者の一部であり、この国に奴隷として出荷された者たちのようだ。囚われた者は全員若い女性であり、彼女らにこの先どのような未来が来るかは想像がつく。


 聖王国に敗れた者の末路は死・奴隷・拷問のいづれかになるそうだ。大半の者は聖王国を中心に労働力としての奴隷として売られるが、一部では年老いた者は殺され、若い女性は性奴隷として上級階級に引き渡され、更に酷い場合人体実験という名の拷問にかけられる。それがこの世界での必然となっているのだ。


 恐らく囚われた仲間の二人は、これから奴隷を引き渡す施設にいるだろうとハウスは言う。聖王国への反逆者とはいえ、人を物のように扱うこの男に憤りを感じるが、二人を助ける絶好の機会である事は間違いないので、私はその奴隷達に紛れ込むことにした。


▽▽▽

 身体を拘束されて馬車に揺られながら、ふとフォーリアは考える。


 |(なぜ聖王国は私を解放した?)


 ロゼ殿はともかく、この国の王の眼前で聖騎士相手に闘いを挑み私達は負けた。なのに私だけ解放され、国外追放で済まされたのは違和感しかない。何かしらの理由があるはずであり、それがこの状況を打破するきっかけになるのではと考える。


 しかしその理由をフォーリアは思いつかず、口を塞がれてる為、ハウスにも尋ねることはできない。


 一人で答えの出ない考え事をしている内に、馬車が止まった。


 外でハウスが誰かと話しているが中からは聞き取れない。しばらくすると馬車の扉が開く音がし、次々と荷物が降ろされる気配がする。どうやらここで大量のロスターを卸しているようだ。そしてこの場で引き渡すのはロスターだけではないようで、全てを降ろし終えると、私達が入っている檻を開ける音がした。


 気配的には数人だろうか、馬車の中に入って来た人達が、次々と私達の腰にロープらしき物を結び付けていく。そして全員を一本のロープで結び終えると、


 「ゆっくりと降りなさい」


 と声がし、ロープの先に結ばれた者から順番に馬車から降りていく。


 馬車から降りた後も目と口は解放されず、そのまま先頭に誘導されるがままに歩いていく。


 歩いている途中、色々な所から呻き声が聞こえてくる。その空間は不気味としか言えない。


 すると突然先頭が歩くの止め、その反動で後方にいた私を含めた数人がその場でバランスを崩してしまう。


 目的の場所に着いたのかと思ったが、


 「おい、何を止まっている!」


 と男性の怒声が聞こえてくる。


 何かあったのかと耳を澄ませると、


 「この辺りでええんやろか?」


 とハウスの声が女性の様な口調(・・・・・・・)で聴こえてきた。


 「…………!?貴様!なにも…………」


 その豹変ぶりに先程怒声をあげた男は警戒をしたが、警戒したその瞬間にドタッと倒れる音がした。


 「曲者だ!」


 「即刻殺せ!」


 と周囲から殺気を感じるが、その殺気も直ぐ消えていき、やがて静かになった。


 やがて一つの足音がこちらに近づき、私の前で立ち止まると、私に付けられてる拘束具を次々と取り外していき、最後に目隠しを外されると、


 「自己紹介遅くなって申し訳ありません。ウチは魔王軍幹部、妖狐のナロでありんす」


 と目の前のケモ耳女性が言った。


 

 


 

 

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