第7話 聖魔事変〜前哨戦〜(5)
「………………………………は?」
ロイターの言葉にロゼは言葉を失っている。ロゼだけじゃなく、俺やリーシャ、フォーリアも訳が分からずその場に固まってしまった。
そんな俺らを見てロイターは書状を掲げ、
「書状の内容はこうです。「先の魔王軍幹部ユリウスの襲来の際、不思議な技を使う少女とエルフ、そしてそれに仕える執事の三人組みが我が軍に加入しました。魔王軍は撃退出来たのですが、やけにあっさり引いたのを不審に思い、もしや魔王軍の自演であり、この少女らは聖王国に潜入する為のスパイなのでは無いかと思いました。つきまして、我が息子を同伴させてることで彼女らを油断させますので、調べて頂きたく存じます」との事です。いやぁ、ハミネ町の領主殿は優秀ですね。我々の魔王軍関係者と思われる者は速やかに報告・連行・討伐せよという命に対して、生け捕りという難しい事をこなすとは」
とロイターはロゼを賞賛するかのように拍手をしながらそう言った。
「ありえない…………、何かの間違いだ…………」
「なら確かめますか?」
そう言ってロイターは手に持っていた書状をロゼの方へ投げつける。そうしてロゼの足下に落ちた書状をロゼは震えながら拾い上げ、そして目を通し、
「親父の字で間違いない…………」
と言ってショックのあまりか膝から崩れ落ちてしまった。
「さて、本来疑わしき者は拷問するのが慣わしですが、先程の書状には少し面白い事が書かれていました」
そう言って笑いながらロイターはリーシャを指さす。
「そこのローブを身に付けている者よ。そなたがこの書状に書いてあるエルフの娘であろう?そのローブを脱ぎたまえ」
とロイターはリーシャに指示する。
しかしリーシャは、先程から連続で起こったショッキングな出来事にまだ頭と体がついて来られてないようで、その場で震え動けないでいる。
そんな様子に、
「ミラージェ君」
とロイターは呼びかけ、それに合わせてミラージェさんは電気を身にまといながらこちらに歩いてくる。
それに合わせてフォーリアもリーシャの盾になるようにレイピアに手を添えリーシャの前に立つ。
そんなフォーリアの姿を見て、
「だ、大丈夫だから……」
と声を震わせながらもフォーリアに笑いかけ、リーシャはローブを脱いだ。それにより綺麗な緑色の髪と特徴的なエルフの耳が露になる。
「やはりか…………」
リーシャの姿を見て何か納得したかのようにロイターは呟く。
そして、
「フフフ…………、フフフ…………、ハハハハハハ!」
とロイターは大きな声で笑い始めた。
あまりの豹変ぶりに俺達だけでなく、ミラージェさん達も固まってしまう。
「いやぁ、愉快愉快。実に愉快でめでたい日なのでしょう!」
と光悦な表情と共に両手を上に掲げ、
「あの日殺し損ねたエルフの王族生き残りが見つかるなんて!!」
と衝撃の言葉を口にした。
▽▽▽
ロイターの発した言葉に、俺らは唖然とし、部屋の中では未だに笑い続けるロイターの笑い声だけが響いていた。
「えっ…………どういう事?」
とリーシャは顔を真っ青にして呟く。
それにロイターは、
「なーに、昔魔王と親身に付き合っているエルフの国の情報を知った我々は、魔王軍に組みする魔族として討伐しただけの話。その時にエルフの国の姫だけ見つけられず、魔王が自ら救援に来たので我々は退いたのだよ」
とロイターは話した。
つまり、俺達はリーシャの故郷は魔王の裏切りによって滅ぼされたと思っていたが、実際は聖王国が滅ぼしたという事なのか。
「いや…………、イヤァーーー!」
あまりに残酷な真実にリーシャはパニックになる。
それと同時にリーシャから凄まじい魔力が溢れ出した。
「ほほぅ!これが噂に聞くエルフの王族の魔力か!やはり凄まじい!!」
とロイターはその様子に興奮気味となり、
「ミラージェ君、そこのエルフを制圧しなさい!」
と命令した。
|(マズイ!このままじゃ本当にリーシャが殺される!)
そう確信した俺は魔力を集中させ、
「魔法変身!!」
と魔法少女へと変身する。
魔法少女に変身した俺を見て、
「ふむ、先程ミラージェ君の蹴りを食らった時に、魔力が全く感じられなかったのを不思議に思ったが、そうか、お前さんは魔力を隠す事が出来るのか」
と納得したようにロイターは頷いた。
「…………ミラージェ、悪いけどリーシャには手だしさせないよ」
俺はステッキをミラージェに向ける。
そしてその隣にレイピアを持ったフォーリアが並び、
「ルナ様、加勢します」
とミラージェを睨みつけながらそう言った。
そしてそんな俺らを見て、
「いいね〜、ウチもキミらと闘ってみたかったんだよね〜」
と笑みを浮かべてそう言った。